ちょとだけ不思議で、ちょとだけ夢のある、ちょとだけ昔の冒険物語

いぬっ

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≪蒸気船編≫

10.伝染病の村

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 栗橋くりはし茶店ちゃみせで、大福だいふくもちは買ってもらって食べたけど……それはとても美味おいしかったのよ! でもね、茶店といったら、お団子だんごよね! 栗橋では船の時間があったからあきらめたけど……

「ねー! 裕翔ゆうと、次で下りましょう!」

「どうしてさ?」

「きっと、私達わたしたちってる人がいるわ!」

「なにそれ? マリンを待ってるのは、日光にっこうへ向かっている家族だろ? 船にまだ乗ったばかりで、まだそんなに進んでいないんだから、先を急ごうよ」

大丈夫だいじょうぶよ!」

 マリンは、裕翔の手を引いて下船げせんする。

……

 何かマリンは、楽しそうだ! 裕翔の手をつないではなさない。

……

 少し歩くと、小さな茶店ちゃみせがあった。

「茶店だわ~! 日本に来たらって見たかったのよね~! おなかいたし、何か食べない?」

「そうだな!」

……

 あとで聞いた話だがマリンいわく、アメリカで日本の事を調べていたとき、江戸えど時代の初めのころのお話しだったか……水戸みと殿様とのさまが、日本全国を世直よなおししながらたびする物語ものがたりちょうドはまりしたらしい。特にその話の中で、八兵衛はちべいと言う者が必ず寄って食べる茶店のお団子にはあこがれがあって、日本に行ったら必ず茶店で団子を食べると決めていたらしく、今回はそれを実行するために船を下りたらしい……まんまと、やられたよ……
 たしかに、水戸光圀公みとみつくにこうが、編纂へんさんした『大日本史だいにほんし』があるが、そんな内容だったかな? マリンはいったい、何の本を読んだんだろーか?

……

「いらっしゃいませ!」

……

「このグリーンティーとお団子だんご美味おいしいわね」
 マリンは、美味しいお茶と、みたらし団子を食べてご満悦まんえつだ。

「このあたりはお茶が取れるみたいだね、茶畑が沢山たくさんあって綺麗きれいな場所だ……」

「この、つぶあん団子も、こしあん団子も美味しい! お茶と合うわよ!」マリンは食べるのに夢中むちゅうで、また裕翔の話しを聞いてなかった。

「裕翔も早く食べてみてよ!」

あわてて食べると、のどまらせるぞ!」

「大丈夫よ! お茶を飲みながら食べるから」

「慌てるなって!」

「だって、美味しいんだもん、う! げほ、げほ、ゴホゴホ……□$○$#◇けて~!」」

「大丈夫か……」

 裕翔は、団子をのどまらせてむせるマリンの背中せなかさすってあげる……

「ありがとう」

……

「この辺りはお茶が有名ゆうめいなのですか?」茶店の娘さんにたずねた。

「はい! このあたりは猿島茶が有名ゆうめいで、アメリカにも、輸出ゆしゅつしているんですよ!」

「それは、すごい! マリンはアメリカで飲んでなかったのか?」

「モンキーアイランドティーは知らなかったな、いつもは、コーヒーとか、紅茶こうちゃやミルク、ココアなんかを飲んでたけど!」

「なんだって?」マリンは茶店のお品書しながきをみて、猿島茶モンキーアイランドティーの漢字を直訳したらしい……たまにやるよな……

「グリーンティーの事よ!」

「あ~! 猿島茶さしまちゃの事ね! それよりも、コーヒーやココアとかは、ぎゃくにうらやましいな、飲んで見たいよ」

「わかったわ、こんどご馳走ちそうしてあげるね!」

「有り難う、楽しみにしてるよ!」

『ニャー!』

「ミーシャも何か飲みたいのかな?」

多分たぶん、ミルクね、いつもあげてたからね!」

『ニャー! ニャー! ニャー!』

よろこんでるな!」

「ミルクは今は無いから、後でねミーシャ!」

『ニャ~!』……

 突然、茶店ちゃみせおくからお祖母ばあさんが出た来て話しはじめる……

「この先、もう少し行くと日光街道にっこうかいどうに出る。じゃがな、その先の村には行かん事じゃ! 流行はややまいじゃ!」そう言うと、また奥に引っ込んでしまった。

「お客さん、祖母そぼの言うとおり、この先の村には行かないで下さいね。病気が流行はやっている見たいなので」

「病気だって、きっと助けを求めてる人がいるわよ、私ならなおせるわ!」

「気にはなるが……行くのか?」

「教えて頂き有難う御座います。御代おだいはここに置きますね」……2人は茶店をあとにする。

「わー! 茶畑ちゃばたけ綺麗きれいね」美しい風景ふうけいが、マリンの前に広がっていた。

「船を下りてからずっと茶畑だったよ」

「え! お腹空なかすいてたから、見えてなかったわ……」

「そうだったの?」

……

「少し歩いて、日光街道にっこうかいどうまで行ったら戻ろうか?」

「大丈夫よ! 村まで行きましょうよ」

流行はやりやまいだって言ってたから、近付ちかずいたら駄目だめだよ」

「私が魔法をかけてあげるわ! でももし病気に掛かっちゃたら治癒魔法ちゆまほうなおしてあげるわよ!」そう言うとマリンは、青く輝く魔法陣と、白色に輝く魔法陣を出現させ防御魔法ぼうぎょまほうほどこす。

「しずかのおかげね! 魔方陣のサイズが大きくなって強力になってるわ!」2個の魔方陣が交差しながら裕翔とマリン、ミーシャの回りを旋回して消えた。

「これで防御魔法は完璧かんぺきよ! 病気にはならないわよ! ミーシャは、人の病気はかからないと思うけどね!」

『ニャー』

……しばらく歩くと、人通りの多い道に出た。

「右は古河こが、左は小山おやまだって! どうする?」

「村はどっちかしら?」

「やはり、村に行くのか……」
 裕翔は気がおもそうだ……

 マリンは、通行人つうこうにんのおじいさんに村の事を聞いてみる……

「あの~すいません! この辺りに、立ち入り禁止の村があると聞いたのですが分かりますか?」

 そのおじいさんは、手ぬぐいを頭からかぶり、曲がった腰でくわかついで、農作業の帰りでつかれているのか、重い足取あしどりで歩いていた。

「あー、警官が村に近寄にかよらない様に警備していた村があったべよ! ここから古河の方へ行った所だったなよ」

「おじいさん、ありがとう!」マリンは、おじいさんの手を取りおれいを言った。

「あんた、 べっぴんさんだな! この辺じゃ珍しいな、外人さんだね! 悪いことは言わないから、あの村へは行かんほうが良いよ! たぶん、伝染病でんせんびょうだべよ、あれー、何か? あんたと話してたら、体が軽くなったべよー、 あんがとなー!」そう言うと、嬉しそうに歩いて行った。

「何んかしたのか?」

「体がつらそうだたから治癒魔法ちゆまほうで治したのよ!」

「そう言うことか! 曲がってた腰を急に伸ばして歩いて行ったからな、驚いたよ!」

……おじいさんの体には、こっそりと御札おふだが貼り付けてあった……

……

 おじいさんに教えてもらった村は、そこから少し歩いた場所にあった……

「ここね! 警官がいる……」マリンは、警官に話しかけてみる。

「村に入れるかしら?」

「だめ! だめ! 近寄るな! この村は伝染病で入る事は出来ない! 駄目だ! 帰れ!」適当てきとうにあしらわれ、追い払われて不機嫌ふきげんそうなマリン……

失礼しつれいしちゃうわ! なんて横柄おうへい態度たいどなのかしら!」

「仕方ないよ! 警官も大変なんだから」

「それよりもどうやって村に入るの?」

「そうだな?」

 そう言うと、裕翔は警官と話し始めた。

……

 しばらくすると、少しはなれた場所で、その様子を見ていたマリンは、裕翔に呼ばれる……

「村に入れるってさ!」

「え! そうなの?」

 不思議そうに、敬礼けいれいする警官の横を裕翔に手を引かれて付いていくマリン。

……

「ねー、何を話したの?」

陸軍りくぐんの調査で村に入れて欲しいって言ったら、簡単に入れてもらえた」

「それだったら、最初から裕翔が話を付けてくれれば私が怒られなくてもすんだんじゃないの?」

「そうかもな……」

「もう!」

 少し不機嫌そうなマリン、ほっぺたを『ぷー』って膨らませている。

「村の人達を助けるんだろ! 怒らない、怒らない」

……

 村に入ると異様いよう雰囲気ふんいきが感じ取れた。家々の戸は閉ざされ、人の姿はなく、閑散かんさんとしている。

外出禁止命令がいしゅつきんしめいれいが出されているからな、家の中に居るとは思うけど」

「まっ、いいわ! 先ずは村の回りに結界を張るわよ!」

 マリンは、御札おふだを村の周囲しゅうい木々きぎに貼って行く。

結構けっこう広いわね!」

……

「こっちは貼り終わったよ」

「私も終わったわ! ミーシャもありがとう!」

 マリンは、水色に輝く魔方陣を展開させて御札に力を与える。

「浄化の結界よ! どうかしら?」

「ハイブリッドの結界は張らないのか?」

「今回は御札だけにするわ、魔法陣は時間がかるからね! それに、妖怪相手じゃないし、浄化するだけだから、いらないかな!」

「そうか、もう効き始めてるのか?……まだ何も感
じられないが?」

「直ぐには無理ね! 暫くすると効果が分かると思うわ!」

「そうなのか? それじゃ、村の人達の様子を見に行こうか!」

「そうね」

……

 村に入ると、井戸の近くに男の子が倒れていた。

「大変! この子、熱があるわ!」

 マリンは、緑に輝く魔法陣と白色に輝く魔法陣を出現させ、治癒魔法を使って男の子の病気の治療を行う。

「なんか、 魔法の効果が弱いみたい? 直ぐに熱が下がらないわね?」

「でも、少し顔色が良くなったぞ!」

 今度は白色に輝く魔法陣の力を御札に流し込み、男の子に貼り付け、少し力を与えた。

「ねー! しっかりして! 大丈夫?」

…… 男の子の意識いしきが戻る。

「まだ、状況がめてないみたいね? ここで熱を出して倒れていたのよ!」

「お姉さんが助けてくれたの?」

「そうよ! 気分はどう?」

「まだ、余り良くない……」

「そっか……今、君に貼り付けた御札の力が少しずつ効いてくるから徐々に良くなって来ると思うわ! 頑張って!」

「うん……」男の子は少し辛そうに応えた。

「でも、おかしいわね? 御札の力も弱くなってる?」何時もと違って、なんとなくだけど、力が弱まっているように感じた……

……

「ねー君、お家は何処どこ? それと、お名前は?」すると男の子は、弱々しく、ゆっくりと指を指す。

「ぼくの名前は、水面みなも

「あのお家ね! みなも君の家へ行って休ませましょう!」

「そうだな!」

 裕翔は男の子を軽々かるがると抱き抱えて家へ向かう。

「あのーすみませんが、井戸の冷たい水をんでもらえませんか?  妹と、おばあちゃんが熱が下がらないので冷やしてあげたいんです」

「そうか、わかった、マリン宜しく頼む」

「……何で私が、重たい水を運ぶのよ」

「お姉さん、ごめんなさい」

「あ! 違うのよ、これはね、そこのバカ裕翔に言っただけだからね、気にしないでね!」

「なんだよ! マリンは俺にきびしくないか? だけど、式神しきがみに運ばせれば良いんじゃないか?」

「そ、そうだったわ!」早速さっそく、マリンは近くにある葉っぱで人形ひとがたを作ると、『ふっ!』と息をかけて『急急如律令きゆうきゆうにょりつりょう』と唱える……しかし……

「あれ?」

 人形ひとがたはモゾモゾと動く気配けはいを見せるが、それ以上は動かなかった……

「おかしいわね?」

 原因が分からず、仕方なく重たい井戸の水を頑張って運ぶマリンだった。

……

「うー、腕がパンパンだわ!」

 マリンは自分に回復魔法を使うため、緑に輝く魔法陣を出現させて、その力を御札へ……

「あれ? おかしいわ? 魔法陣がちっちゃい?……それに、御札へ力が移動出来なくなってる?……」

……

 マリンが回復魔法を使えずに困っていると……

「後でしずかに聞いてみよう! 何か分かるかもしれない」

 裕翔は、マリンの頭を撫でて上げる。少し嬉しそうにするマリンだが!

「また子どもあつかいして! そんな事じゃ、喜ばないんだからね!」顔を赤らめながらも、少し強気だ!

「そろそろ、結界の効果が出てくると思うけど?」

……

稲穂いなほ! 大丈夫か?」

「あ! お兄ちゃん! 体が熱い……」

「 今、冷たい水で冷やしてあげるからな ! 頑張れ!」

「うん……」

 女の子は呼吸も浅く、高熱でかなり辛そうにしている。

「マリン、効いてないみたいみたいだぞ?」

「おかしいわね? そんなはず無いんだけど?」

……

 稲穂いなほちゃんの容体ようだい悪化あっかし、熱が下がらない……

「苦しい……お兄ちゃん、たすけて……」

……
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