ちょとだけ不思議で、ちょとだけ夢のある、ちょとだけ昔の冒険物語

いぬっ

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≪結城編≫

3.四六のガマ

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 心地ここち良い微風そよかぜが吹いて、花のかおりが風に乗ってただよって来る……

 地平線ちへいせんまで続くお花畑を、虫麻呂むしまろは2人の美女と一緒に楽しそうに歩いていた……手児奈てこなとマリンに手をつながれて……

『まるで夢の様でごじゃるよ~~~マリン殿~! 手児奈も可愛いでごじゃるよ~』

「虫麻呂~~~ 愛してる!」
『虫麻呂さま~~~ 好き!』

 虫麻呂は2人の美女からほっぺにキスされデレデレしている。

『おほほほほ~! 楽しいでごじゃる~! 夢心地ゆめごこちでごじゃるよ~!』

 虫麻呂はマリンの手を引き寄せると、腰に手を回し耳元みみもとで甘い歌をささやく……

『面影は 身をも離れず 山桜 心の限り とめて来しかど夜の間の風も、うしろめたくなむ』

 虫麻呂は調子に乗って、手児奈てこなの耳元でもささやく……

『物思ふに 立ち舞ふべくも あらぬ身の 袖うちふりし 心知りきや』

『虫麻呂さま~ 素敵なお歌!』

「虫麻呂~」
『虫麻呂さま~』

 お花畑に可愛らしく甘い歌がささやかれていた……

……

『虫麻呂さま~! 虫麻呂さま~!』

「虫麻呂~! 虫麻呂~💢」

 突然、誰かに名前を呼ばれ、少しほほに痛みを感じて目を覚ます……

『大丈夫ですか? 虫麻呂さま~ お気を確かに~』

「なに気絶してんのよ~! 早くお宝の場所、教えなさいよ💢」

 マリンは虫麻呂のほほつねったり、たたいたりしていた。

『や、やめてくだされ~マリン殿~! 痛いでごじゃるよ~』

『虫麻呂~! おまえ、なにかいやらしい夢でも見てたんだろ~?』

『……そんな事は無いでごじゃるよ小犬こいぬ殿……』

 小犬の鋭い突っ込みに虫麻呂は動揺する……
まさか、マリン殿と手児奈からキスされる夢を見てたなんて言えないでごじゃる……

「早く教えなさいよ!」

『……そ、そうでごじゃるな、たしかあの時は……筑波山つくばさん頂上ちょうじょうにある、ガマいわの辺りで歌をんでいたでごじゃたよ……』

……昔の筑波山で

『今日の日にいかにかしかむ筑波嶺に昔の人の来けむその日も』

『筑波嶺に我が行けりせば霍公鳥ほととぎす山彦とよめ鳴かましやそれ』

『男神に雲立ち上りしぐれ降り濡れ通るとも我れ帰らめや』

『筑波山はいつ来ても、美しいでごじゃるな! 山の頂上からはふもと田園風景でんえんふうけいがとても美しく見えるでごじゃる……』

 虫麻呂は筑波の頂上付近を歌をみながら、ウロウロと歩きまわっていると、人の気配を感じて咄嗟とっさに近くの茂みに身を隠す……

『誰か居るでごじゃるな……』

 数人の武士ぶしがガマ岩の下を掘って何かを隠そうとしている……虫麻呂は気付かれないように、こっそりと様子を伺った……

『何を隠しているのでごじゃるのかな~』

……

『確りと隠すんだぞ~!』

『へい! でもなんでこんな場所に、お宝を隠すんですかい?』

 武士ぶし達は、人足にんそくを数人やとい、穴を掘らしている……

姫様ひめさま達のたっての願いなのだ!』

『……この辺りには妖怪ようかいが出るって噂がありますから気おつけてくだせ~』

『そんな物は大丈夫だ、拙者せっしゃが退治してやるからな! は、は、ははは~……無駄口むだぐちたたいてないでしっかり働くんだ!』

『へい!』……

『お宝でごじゃるか……面白そうでごじゃる……』

 虫麻呂は人足達と一緒になってお宝を隠し始める。

『これは、砂金さきんでごじゃるか……その他にも財宝ざいほうがいっぱいでごじゃる~!』

 虫麻呂は隠蔽いんぺい認識阻害にんしきそがいの能力を使っているので、怪しまれず一人の人足として紛れ込む事が出来ている……

『それにしても、凄い量のお宝でごじゃるな~! 何処の姫様なのでごじゃるか?』

 虫麻呂は普通に武士に話しかける……

結城ゆうきの姫様だ!』

『そうなのでごじゃるか、さぞかし見目麗みめうるわしい姫様なのでごじゃるのかな?』

『そうだ、我らの姫様はとてもお美しい姫様なのだ! それに、朝日あさひ様も広春こはる様もとてもお優しい双子ふたごの姫様なのだぞ!……明日の夕刻ゆうこくから、宝探しゲームを行う手はずだから、邪魔じゃまするでは無いぞ!』

『宝探しゲーム? ……わかったでごじゃるよ!』

 虫麻呂は両手に砂金袋さきんぶくろを握ったままその場を離れた……

『双子の姫様でごじゃるか、明日が楽しみでごじゃるな……』

……

 すずめさえずりが聞こえる早朝そうちょう、虫麻呂は筑波の山頂で日の出を眺めていた……

『来るのが早すぎたでごじゃる……』

 虫麻呂は筑波の頂上付近を歌を詠みながら歩いて、ガマ岩まで来ると……

『ゲコ、ゲコ』

 巨大なガマガエルに遭遇そうぐうした……

『うひゃ~! 恐いでごじゃる~~~!』

 虫麻呂は一目散いちもくさんに逃げた……

『あれが噂の妖怪でごじゃるか~! お宝を全部飲み込んでたでごじゃるよ~! さわらぬ神にたたり無しでごじゃるよ……麻呂まろは何も見てないでごじゃる……』

 虫麻呂は昨日きのう隠しておいた砂金袋を両手りょうてに持って下山げざんした……

『え~~~!』
『虫麻呂さん、あなた見て見ぬふりしたの?』

『そうでごじゃるよ、恐いでごじゃるよ……』
「それに虫麻呂、どさくさに紛れてお宝盗んでるわよね?」

『なんの事でごじゃる? マリン殿?』

『とぼけるんじゃ無いわよ~!』
 朝日あさひ広春こはるに虫麻呂はほほつねられた。

『ごめんでごじゃるよ~~~』

……

「でも、これって凄い情報じゃない! お宝が筑波山に確実にあるって事よね!」

『でもマリン、妖怪が飲み込んでいるんだよね、僕、心配だよ……』

「平気よミーシャ! 心配はいらないわ! 妖怪と言ってもカエルでしょう! 私が退治してあげるわ!」

『か、かえる~! どんなカエルだった? 教えてくれ~~~!』

 小犬は少し興奮気味こうふんぎみに、虫麻呂にカエルの事を聞きたくて、駆け寄って来た……

『ふむふむ、なるほど~!』
『そんな感じでごじゃったよ……』

『すっごく欲しいな! そのカエル!』
 小犬の目はキラキラと輝いた……

「小犬ちゃん……カエルは止めときなさい……」

『何を言う、カエルはとっても可愛いんだぞ!』

「いや~~~! やめて~! 想像そうぞうしたら鳥肌とりはだが……」

 マリンは沢山のカエルを想像してしまい、悲鳴をあげる……

『マリンも本物を見れば好きになるって! 大っきいカエルだぞ!』
「そんな事は絶対にありません……絶対に好きにはなりません! 『イャ!』」

……

『前足が4本、後ろ足が6本! レアなカエルなんたぞ!』

「止めて……小犬ちゃん……」

 四六しろくのガマが、マリンは頭の上に乗っけられていて、我慢がまんして耐えてはいるが、今にも泣き出しそうになっている……

『これ! めぬか小犬! マリンが可愛そうじゃ!』

『え~、こんなにも可愛いカエルなのに~!』
「うえ~ん、やめて~~~」

……

『面白いでごじゃるよ! 2人とも!』

 虫麻呂は笑い転げていた……

『虫麻呂様、駄目ですよ、笑っては……』
「虫麻呂~~~💢 あなたね~~~💢」

 マリンはそんな虫麻呂のおでこに、御札おふだを貼り付けた……

『いや~! 浄化じょうかされる~~~』

 虫麻呂は少しずつ消えかかりながら、駆けずり回る……

『消える~~~! 助けてでごじゃる~~~!』

……

「マリン、やり過ぎだぞ!」
「だって~、虫麻呂が……」

『ごめんなさいマリンさん! どうか虫麻呂様から御札おふだがして下さいませんか、このままでは虫麻呂様が消えてしまいます』

『そうだぞマリン! 少しやりすぎなのではないか?』

 しずかと手児奈の頼みで、マリンは虫麻呂から渋々しぶしぶ御札おふだを外す……

『はー、はー、はー、危なかったでごじゃるよ~! 浄化じょうかされるところであったでごじゃるよ……ひどいでごじゃるよ……』

『虫麻呂様! 駄目ですよ! 誤って下さい!』

『ごめんなさいでごじゃるよ……』
「大丈夫よ! 消えても、裕翔ゆうとが復活させてくれるわよ!」

「そんな事、やったこと無いぞ……」

『そうじゃな、裕翔の能力なら可能性はありそうじゃ!』

「しずかまで、そんな無責任な……浄化された神を再生できるのか?」……裕翔は腕組みをして考え込んだ……

『裕翔よ! わしが浄化されたら頼んじゃぞ!』

「……」

……

「やめなさい、小犬ちゃん💢 私の頭の上にカエルを乗せるのは……」

『楽し~~~!』

 筑波山へ近づくにつれ、カエルのサイズが段々と大きくなって行く……

「もう止めて~! カエル大きくて、首が痛くなっちゃう!」

 マリンの頭の上には大きなヒキガエルが乗っかっている……

「どこで捕まえてくるのよ~、こんな大きなカエル~」

『ゲコ、ゲコ♪』

「こら~~~! 罰当者ばちあたりものが~~~! おカエル様になんて事をする~💢」

 突然、地元の農民にしかられる……

『なんだ?』
「おカエル様になんてことを……おカエル様はこの辺りの守り神まもりがみなんじゃぞ!」

『守り神? なんだそれは?』

 農民は語り始める……

「今から1200年も昔の事じゃ! 私達のご先祖様は、ここ筑波の豊かな土地で稲作を行い幸せに暮らしておった……しかしある年の夏のことじゃ、雨が一滴も降らない日が何日も何日も続いて、その影響により干魃かんばつが起こり、大飢饉だいききんが発生、疫病えきびょう流行はやり多くの人の命を奪ったのじゃ……」

  天平てんぴょう大飢饉だいききん……お年寄りから子供までが、飢餓きがにより栄養失調になり、天然痘てんねんとうなどの感染症にかかり、病に倒れた。そのころ幼かった手児奈も高熱をだして寝込み、死の淵をさまよっていた……

「そこで、筑波の人々は京都から偉いお坊様を招いて、雨乞あまごいと邪気祓じゃきばらいを行う事にしたのじゃ! お坊様はとてもとくのある素晴らしい方で、ご祈祷きとうにより、二人の神を降臨こうりんさせだのじゃ……それはそれはとてもまばゆいほどの後光ごこうを放って、天から降臨された美しくうるわしき女神達は私達の願いをお聞きくださり、すぐに雨を降らせてくれたそうじゃ……その恵みの雨は、乾燥しきった農地を湿らせ、農地に再び命を吹き込んだのじゃた……しかし、3日目になっても雨は止まず、少し長めに降り続く雨に、農民達が少し不安を感じた頃、何やら慌てている女神様を、お坊様が見かけたそうでな、何かの不具合がどうだのこうだの言っていて、どうやら雨がやまなくなっちゃたらしとのことじゃった……少し不安を感じたお坊様は、女神様を問いただしたそうじゃ……それによると一人の女神様がひまをもてあましていて、水の流れの中に、あまりにも愛らしく可愛いカエルを見つけ、捕まえようとした所、誤って水を止めるスイッチにカエルを詰まらせてしまったらしく、水が止められなくなってしまったのだそうで、もう一人の女神様がそれを見て慌てて、カエルを取り出そうとしたところ、更にカエルが詰まってしまい、2人して慌てふためいていたそうじゃ! しかし、運良くスイッチに詰まっておったカエルが流れて行ったお陰で、ようやく、雨を止める事が出来たそうじゃが、その間に数万匹のカエルが筑波の地にばらまかれてしまったらしい……そして不思議な事に、その頃から流行病はやりやまいが突然終息しゅうそくして、また何時ものようにみんな幸せに暮らし始めたそうでな、これは、女神様のご加護じゃと言うことで、女神様がバラ撒いてしまったカエル達を大切にしようと言う事になり、この辺りの守り神としておやしろを建てて、大切にお守りしているのじゃ! どうだ、分かったか! 失礼な事をしてはならぬぞ!」

「……関係あるのかな? ……ただのカエルでしょ?」
「お前達は……話をちゃんと聞いておったのか?」

 農民は少し呆れ顔をした……

「それよりも、2人の女神様が気になるな~?……もしかして、小犬ちゃん達じゃない?」

『……1200年前か~~~? 突然召喚しょうかんされて、雨を降らせた事があったかな~?』

「うーちゃんはどう?」

『覚えてますよ! まだあの頃は新米しんまいの神でしたね! ちょうど回り当番で突然呼出されて、慌てた事がありましたね……でもそんなにも昔の筑波の地だったなんて、それも過去に召喚されたなんて分かりませんでした。あの時は本当に大変でしたよ~! ね! 小犬ちゃん!』

「当番制なの?」
『新人の頃は当直勤務もあって大変なんですよ!』
「色々と大変なのね!」

『あ、は、は、そうだったかな?……と言うことで、このカエル達は、ただのカエルなんだぞ!』

「小犬ちゃんは本当にカエル好きなのね! ……でも何処から連れて来たのよ?」

『ん~~~ん……確か~~~、外国の大きな湖だったかな? 雨を降らせるための水源が必要だったから、カエルが居るとは知らずに、水と一緒に転送しちゃたんだな……そうか~あの時のカエルだったのか~! こんなにも大きくなって~……可愛いんだぞ!』

「なに呑気のんきなこと言ってるのよ」

『これはこれは、女神様でしたか、知らぬ事とはいえ、大変失礼な事を言ってしまって申し訳御座いませんでした~!』

 農民は土下座どげざをして誤っている。

『いやいや、そこまで謝らなくてもいいぞ! 私は怒ってはいないぞ!』

「ありがとうごぜ~ますだ~女神様!」
『カエルは大切にな!』

「分かりました」
「なんか気の毒だわ~」

『ゲコ、ゲコ♪』
 マリンの頭の上でカエルが鳴いていた……

「……あの~、大変申し訳無いのですが……」
 農民は何だか申し訳なさそうに話し掛けて来た……

『なんだ? 願い事か? 貢ぎ物みつぎものによっては考えてもいいぞ!』

「女神様のお力をお貸しくだせ~! 妖怪退治をお願いしたいのですだ~!」

……
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