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≪結城編≫
2.歌人
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平安時代、この辺り、筑波山の近くには大きな湖があった。小貝川が塞き止められて出来た湖は、万葉の歌にも詠まれ鳥羽の淡海と呼ばれていた……しかし時とともに、湖は川の流れの変化に伴って、徐々に湿地帯となり、江戸時代の干拓により農地へとかわり、消えていった……
……
『凄~~~い! お魚が沢山捕れてる!』
梁には、小貝川で元気に育ち、大きくなった沢山の鮎が飛び跳ねていた……
『この辺りの簗場では鮎をとっていて、塩焼きにすると、とっても美味しい魚なんですよ!』
朝日と広春が自慢している。
……簗は川を塞き止めて、竹や木で魚が通り抜けられない程の隙間のある、すのこ状の台を組んだ魚用の罠で、川に設置した簗を簗場と呼んでいる。簗の上で飛び跳ねている魚を手づかみで取るのがとても楽しい……
『きゃ~! 川の水が冷た~い!』
『この子達、生きが良いわね! 凄く跳ねる! キャ!』
『ヌルヌルして、つかめないよ~!』
青く透き通るような雲一つ無い空に、可愛らしい声が響き、川面にはキラキラと光る水滴とあどけない幼女達の笑顔が映っていた……それと、ふんどし姿の丁髷4人の姿もあった……
「みんな頑張れ~……しずか達は川に入って大丈夫なのか? 式神なんだろ~、水にとけるぞ!」
案の定、全員少しずつ水に溶けて、川に流されて行った……
『もう一回! マリン早く式神を用意して~!』
『私も、もう一回やる~~~!』
『拙者達もお願いするでござる』
式神に憑依するとすぐに川へ……やっぱり水に溶けて、川に流されて行った……
「紙じゃ無くて葉っぱにすれば良いんじゃないのか?」
『流石は裕翔! 良く思い付いた! マリン、頼む、葉っぱの式神にしてほしいのじゃ!』
『私達も~!』
……
「完璧ね! 全員葉っぱの式神にしたわよ!」
『葉っぱも悪くは無いな~、少し緑色にはなっているが、仕方あるまい……これ、マリンも魚を捕まえてみぬか? 楽しいぞ!』
「みんなを式神に憑依させてるから、いまは無理かな……それに川の水、冷たそうね? お腹こわしちゃいそうじゃない?」
『マリンが体調くずしたら、式神も解除されちゃうから、魚捕りは私達に任せて! 大きなの捕まえてあげるね!』朝日と広春達は、数百年ぶりに実体化できた事に喜んで、家来達と一緒に協力して魚を捕まえ始めた。
『姫様! こっちに大きな魚がいますよ~』
『まちまさい、私が捕まえる~』
『こちらにも大きいのがいます』
『そっちは広春が捕まえるわ!』
『きゃ~、ヌルヌルして捕まらな~い』
『広春は下手くそね、こうするのよ! わ!』
ヌルヌルの魚は朝日の手から滑って、背中に……『いゃ~ん! 冷た~い! そんなところに入らないで~~~!』
『姫様! 大丈夫ですか!』
『姫様! お労しや』
『いや~ん! 広春! 助けて~』
『ち、ちょとまって、いま助けるわよ! ……でもなんか、楽しい~!』
『💢広春! 早く助けなさいよ~~~』
……
「沢山捕れたね! 美味しそう! 裕翔、お魚焼いて欲しいな!」
『僕も食べたいよ~! 鮎はとても美味しい魚なんだよ!』
「そうなのミーシャ!」
『うん! 僕も大きな鮎を捕まえたから、裕翔これ焼いて~!』
「俺が焼く係なのか?」
『拙者達も手伝います。裕翔殿!』
裕翔達は河原にある少し大きめな石を取り除きながら、石を並べて丸く枠を作り、その中央で火を起こす。石を取り除いた場所は砂地で串にさした鮎を、砂地に刺して焼き始める……
「いいにおい! お腹すいた~!」
『美味しそうね!』
『少し待って下され、もう少しで焼けるで御座る』
『楽しみ!』
『はやく! はやく!』
沢山の鮎を捕まえ、疲れと空腹からか全員、鮎の焼ける匂いに誘われ、ゆだれをたらしていた。
「も~う! 我慢できないよ~~~!」
……
待ちに待った美味しそうに焼き上がった鮎を頬張る……
『美味しい~!』
『自分で捕まえた魚の味は格別じゃな~!』
『姫様は特に頑張ってくれましたから大きい鮎をどうぞ!』
『ありがとう~』
『ありがとう~』
『あ! それは僕が取った魚~!』
『失礼したで御座る。猫殿がとられた鮎でこざいましたか……』
「大丈夫よ! ミーシャには私が捕まえたのをあげるね!」
『ありがとうマリン! それなら良いよ! 僕の取った鮎はあげるよ!』……ミーシャは、マリンの捕まえた魚を貰えて喜んでいた。
「みんなに行き渡ったかな?」
『麻呂にも貰えぬか?』
突然、平安の衣装を身に纏った平安貴族風の人物が裕翔の前に現れて、焼き魚を食べたそうに指をくわえて見ている……
「え? だれ?」
……
『勝鹿の真間の井を見れば立ち平し水汲ましけむ手児名し思ほゆ』
「……なに言ってるの? この人?……」
『マリン、それは短歌じゃな!』
「たんか?」……短歌は万葉の時代から詠まれ、五・七・五・七・七の三十一音、五句で構成される、和歌の一種……
「あ! もしかして、お宝の隠し場所のヒントなのかな?」
「この短歌は、お宝とは関係ないと思うぞ……」
「そうなの?」
『私にも下さい。お腹が空きすぎていて……』
『あ! もう一人いるよ! 可愛い子だね! 僕の鮎、食べてもいいよ!』
『ありがとう! 猫さん!』
「それで~、あなたは誰?」
『私は手児奈と申します』
「こっちの人は?」
『この方は、高橋虫麻呂さまで、京の都からきた偉い方で、歌人でもある凄い方なのです!』
『葛飾の真間の手児名をまことかも我れに寄すとふ真間の手児名を』
『また何か言ってるよマリン……』
「お腹空いてるのよね……はい、貴方もどうぞ! 大きな魚あげるね!」
『ありがとうでごじゃる……』
……二人とも、とてもお腹が空いていたのか鮎を4匹平らげる
『美味しいでごじゃる……生きかえったでごじゃる……』
『美味しかったです……みなさんありがとうございます……』
「でも? 貴方たちは誰なの?……」
『私は1200年前の人間です。昔この辺りは大きな湖があり、広大な田園が広がり、とても肥沃で豊かな地域でした。私はそんな地方の一部族の長女として幸せに暮らしていました。それから200年後、虫麻呂さまは京の都から派遣されてこの地へやって来られたのです。そして古くからの言伝えで私の事を知り、いくつもの和歌を読まれたのです。その歌は言霊となり更に数百年後、虫麻呂様を神として顕現させたのです。そして私も虫麻呂様の強い思いにより、さらに数年後に召喚されました……私が何なのか分かりませんが……』
『虫麻呂~! 久し振り~! 元気だったか~!』
突然小犬が出て来て、虫麻呂の肩や頭をぽんぽん叩き始めた……
「え~! 大丈夫なの小犬ちゃん? この方は偉い方なんじゃ……?」
『大丈夫だぞ! この虫麻呂は怒らないからな~』
「小犬ちゃん、だけど……」
虫麻呂は、小犬のいたずらで蛙を頭の上に乗っけられていた……
「うわ! 大きな蛙! 帽子(烏帽子)からはみ出してる……」
『ゲコ♪』
『この辺りには昔、大きな湖があって大きい蛙が沢山いたんだぞ! 凄いだろ~! ガマガエルって言うんだぞ!』
『ゲコ♪』
「……」
「あ! そうだ小犬ちゃん、この子のこと知らないかな……」
『知ってるぞ! 手児奈だろ~! 虫麻呂が何百年も手児奈、手児奈ってウザいくらい和歌を読んでいたから、小犬とうーが神通力を使って召喚させたんだぞ! どうだ虫麻呂、感謝しろ……手児奈は虫麻呂の眷属だぞ!』
『そうだったんですか……私が虫麻呂様の眷属なのですか、嬉しいです!』
『そうか、良かったな! 私に感謝するが良い!』
『何言ってるんですか、出雲での小犬ちゃんの悪戯が原因だったんですよ!』
「うーちゃん、何があったの? その話聞かせて!」
『うー、やめろ~! その話は……』
『そうですね~、あの時は……』
……少し昔の出雲で
どうやら虫麻呂は、しばらく筑波山から遠く離れて、出雲の地へ来ていたので、ホームシックになっちゃて手児奈の和歌ばかり読んで、うじうじしていた所を小犬ちゃんが見掛けて、また何時もの悪い癖で悪戯を仕掛けちゃたのよ、それを大国主命様に見つかり大目玉を食らったの、そして虫麻呂に何かお詫びをする様にと言われ、仕方なく何か1つだけ願い事をかなえる事になったの! それでね、手児奈を虫麻呂の眷属として召喚することになったのよ……』
「うーちゃんも大変ね~! 巻き込まれてるじゃん!」
『あは、は、は、そうですね~! でも、虫麻呂さんも喜んでいるみたいなので、良かったです』
『うーは優しいな~、だいたい虫麻呂がうじうじしてるのが悪いんだぞ!』
『……そうでごじゃるな』
『それで皆さんはこの地に何か御用があって来られたのですか?』
「それは……結城のお宝を探そうと思ってね、でも場所が分からないらしいのよ……」
『そうなんですか……結城? ごめんなさい、私には分からないわ……』
『麻呂は、見てたでごじゃる……』
『え!?』
「それ、本当!」
『本当でごじゃるよ……そこの双子の娘が結城の姫、朝日殿と広春殿でごじゃるよな?』
『え~、なんで私たちの事、知ってるのよ?』
『麻呂はこの辺りを守護する神でごじゃるよ! それに全部見てたでごじゃるよ!』
「虫麻呂さ~ん! もしかしてお宝の場所が分かるの~! 教えてほしいな~!」
『異国の者は、金の髪に青い瞳……なんと美しい娘でごじゃるか……』
「お宝の事、教えてよ~」
マリンは虫麻呂に、金色の髪をふわっとなびかせ、色仕掛で情報を聞き出そうとしている……
「マリン、何してるんだ?」
「裕翔! このチャンスをものにするわよ!」
虫麻呂は、マリンの美しさと、ほのかに香る香水の香りで惑わされていた……
『虫麻呂様💢 なにデレデレしているんですか、私というものがあるのに💢 この浮気者~~~』
虫麻呂は手児奈にほっぺを抓られている……
『痛い、いたたたた~、ごめんでごじゃるよ~』
『でも、マリンさんは、本当に美しいですね、嫉妬してしまいます。うらやましいわ』
「そ、そうかな? ありがとう! でも、手児奈ちゃんだってとっても可愛いわよ!」
『そうですか! マリンさんに言われると嬉しいです! ……それから~、マリンさんから香るいい匂いなのですが、私も欲しいです!』
「良いわよ! 同じ香水で良ければ今持ってるから付けてあけるね!」
マリンから香水を付けてもらい頬を染めて照れている手児奈のその横で、虫麻呂は、美女2人にかこまれ、興奮のあまりに、顔を真赤にしながら倒れた……
『虫麻呂さま~~~!』
「虫麻呂~~~! なに倒れてるのよ~~~!」
マリンと手児奈の声が、筑波の山に木霊した……
……つづく
……
『凄~~~い! お魚が沢山捕れてる!』
梁には、小貝川で元気に育ち、大きくなった沢山の鮎が飛び跳ねていた……
『この辺りの簗場では鮎をとっていて、塩焼きにすると、とっても美味しい魚なんですよ!』
朝日と広春が自慢している。
……簗は川を塞き止めて、竹や木で魚が通り抜けられない程の隙間のある、すのこ状の台を組んだ魚用の罠で、川に設置した簗を簗場と呼んでいる。簗の上で飛び跳ねている魚を手づかみで取るのがとても楽しい……
『きゃ~! 川の水が冷た~い!』
『この子達、生きが良いわね! 凄く跳ねる! キャ!』
『ヌルヌルして、つかめないよ~!』
青く透き通るような雲一つ無い空に、可愛らしい声が響き、川面にはキラキラと光る水滴とあどけない幼女達の笑顔が映っていた……それと、ふんどし姿の丁髷4人の姿もあった……
「みんな頑張れ~……しずか達は川に入って大丈夫なのか? 式神なんだろ~、水にとけるぞ!」
案の定、全員少しずつ水に溶けて、川に流されて行った……
『もう一回! マリン早く式神を用意して~!』
『私も、もう一回やる~~~!』
『拙者達もお願いするでござる』
式神に憑依するとすぐに川へ……やっぱり水に溶けて、川に流されて行った……
「紙じゃ無くて葉っぱにすれば良いんじゃないのか?」
『流石は裕翔! 良く思い付いた! マリン、頼む、葉っぱの式神にしてほしいのじゃ!』
『私達も~!』
……
「完璧ね! 全員葉っぱの式神にしたわよ!」
『葉っぱも悪くは無いな~、少し緑色にはなっているが、仕方あるまい……これ、マリンも魚を捕まえてみぬか? 楽しいぞ!』
「みんなを式神に憑依させてるから、いまは無理かな……それに川の水、冷たそうね? お腹こわしちゃいそうじゃない?」
『マリンが体調くずしたら、式神も解除されちゃうから、魚捕りは私達に任せて! 大きなの捕まえてあげるね!』朝日と広春達は、数百年ぶりに実体化できた事に喜んで、家来達と一緒に協力して魚を捕まえ始めた。
『姫様! こっちに大きな魚がいますよ~』
『まちまさい、私が捕まえる~』
『こちらにも大きいのがいます』
『そっちは広春が捕まえるわ!』
『きゃ~、ヌルヌルして捕まらな~い』
『広春は下手くそね、こうするのよ! わ!』
ヌルヌルの魚は朝日の手から滑って、背中に……『いゃ~ん! 冷た~い! そんなところに入らないで~~~!』
『姫様! 大丈夫ですか!』
『姫様! お労しや』
『いや~ん! 広春! 助けて~』
『ち、ちょとまって、いま助けるわよ! ……でもなんか、楽しい~!』
『💢広春! 早く助けなさいよ~~~』
……
「沢山捕れたね! 美味しそう! 裕翔、お魚焼いて欲しいな!」
『僕も食べたいよ~! 鮎はとても美味しい魚なんだよ!』
「そうなのミーシャ!」
『うん! 僕も大きな鮎を捕まえたから、裕翔これ焼いて~!』
「俺が焼く係なのか?」
『拙者達も手伝います。裕翔殿!』
裕翔達は河原にある少し大きめな石を取り除きながら、石を並べて丸く枠を作り、その中央で火を起こす。石を取り除いた場所は砂地で串にさした鮎を、砂地に刺して焼き始める……
「いいにおい! お腹すいた~!」
『美味しそうね!』
『少し待って下され、もう少しで焼けるで御座る』
『楽しみ!』
『はやく! はやく!』
沢山の鮎を捕まえ、疲れと空腹からか全員、鮎の焼ける匂いに誘われ、ゆだれをたらしていた。
「も~う! 我慢できないよ~~~!」
……
待ちに待った美味しそうに焼き上がった鮎を頬張る……
『美味しい~!』
『自分で捕まえた魚の味は格別じゃな~!』
『姫様は特に頑張ってくれましたから大きい鮎をどうぞ!』
『ありがとう~』
『ありがとう~』
『あ! それは僕が取った魚~!』
『失礼したで御座る。猫殿がとられた鮎でこざいましたか……』
「大丈夫よ! ミーシャには私が捕まえたのをあげるね!」
『ありがとうマリン! それなら良いよ! 僕の取った鮎はあげるよ!』……ミーシャは、マリンの捕まえた魚を貰えて喜んでいた。
「みんなに行き渡ったかな?」
『麻呂にも貰えぬか?』
突然、平安の衣装を身に纏った平安貴族風の人物が裕翔の前に現れて、焼き魚を食べたそうに指をくわえて見ている……
「え? だれ?」
……
『勝鹿の真間の井を見れば立ち平し水汲ましけむ手児名し思ほゆ』
「……なに言ってるの? この人?……」
『マリン、それは短歌じゃな!』
「たんか?」……短歌は万葉の時代から詠まれ、五・七・五・七・七の三十一音、五句で構成される、和歌の一種……
「あ! もしかして、お宝の隠し場所のヒントなのかな?」
「この短歌は、お宝とは関係ないと思うぞ……」
「そうなの?」
『私にも下さい。お腹が空きすぎていて……』
『あ! もう一人いるよ! 可愛い子だね! 僕の鮎、食べてもいいよ!』
『ありがとう! 猫さん!』
「それで~、あなたは誰?」
『私は手児奈と申します』
「こっちの人は?」
『この方は、高橋虫麻呂さまで、京の都からきた偉い方で、歌人でもある凄い方なのです!』
『葛飾の真間の手児名をまことかも我れに寄すとふ真間の手児名を』
『また何か言ってるよマリン……』
「お腹空いてるのよね……はい、貴方もどうぞ! 大きな魚あげるね!」
『ありがとうでごじゃる……』
……二人とも、とてもお腹が空いていたのか鮎を4匹平らげる
『美味しいでごじゃる……生きかえったでごじゃる……』
『美味しかったです……みなさんありがとうございます……』
「でも? 貴方たちは誰なの?……」
『私は1200年前の人間です。昔この辺りは大きな湖があり、広大な田園が広がり、とても肥沃で豊かな地域でした。私はそんな地方の一部族の長女として幸せに暮らしていました。それから200年後、虫麻呂さまは京の都から派遣されてこの地へやって来られたのです。そして古くからの言伝えで私の事を知り、いくつもの和歌を読まれたのです。その歌は言霊となり更に数百年後、虫麻呂様を神として顕現させたのです。そして私も虫麻呂様の強い思いにより、さらに数年後に召喚されました……私が何なのか分かりませんが……』
『虫麻呂~! 久し振り~! 元気だったか~!』
突然小犬が出て来て、虫麻呂の肩や頭をぽんぽん叩き始めた……
「え~! 大丈夫なの小犬ちゃん? この方は偉い方なんじゃ……?」
『大丈夫だぞ! この虫麻呂は怒らないからな~』
「小犬ちゃん、だけど……」
虫麻呂は、小犬のいたずらで蛙を頭の上に乗っけられていた……
「うわ! 大きな蛙! 帽子(烏帽子)からはみ出してる……」
『ゲコ♪』
『この辺りには昔、大きな湖があって大きい蛙が沢山いたんだぞ! 凄いだろ~! ガマガエルって言うんだぞ!』
『ゲコ♪』
「……」
「あ! そうだ小犬ちゃん、この子のこと知らないかな……」
『知ってるぞ! 手児奈だろ~! 虫麻呂が何百年も手児奈、手児奈ってウザいくらい和歌を読んでいたから、小犬とうーが神通力を使って召喚させたんだぞ! どうだ虫麻呂、感謝しろ……手児奈は虫麻呂の眷属だぞ!』
『そうだったんですか……私が虫麻呂様の眷属なのですか、嬉しいです!』
『そうか、良かったな! 私に感謝するが良い!』
『何言ってるんですか、出雲での小犬ちゃんの悪戯が原因だったんですよ!』
「うーちゃん、何があったの? その話聞かせて!」
『うー、やめろ~! その話は……』
『そうですね~、あの時は……』
……少し昔の出雲で
どうやら虫麻呂は、しばらく筑波山から遠く離れて、出雲の地へ来ていたので、ホームシックになっちゃて手児奈の和歌ばかり読んで、うじうじしていた所を小犬ちゃんが見掛けて、また何時もの悪い癖で悪戯を仕掛けちゃたのよ、それを大国主命様に見つかり大目玉を食らったの、そして虫麻呂に何かお詫びをする様にと言われ、仕方なく何か1つだけ願い事をかなえる事になったの! それでね、手児奈を虫麻呂の眷属として召喚することになったのよ……』
「うーちゃんも大変ね~! 巻き込まれてるじゃん!」
『あは、は、は、そうですね~! でも、虫麻呂さんも喜んでいるみたいなので、良かったです』
『うーは優しいな~、だいたい虫麻呂がうじうじしてるのが悪いんだぞ!』
『……そうでごじゃるな』
『それで皆さんはこの地に何か御用があって来られたのですか?』
「それは……結城のお宝を探そうと思ってね、でも場所が分からないらしいのよ……」
『そうなんですか……結城? ごめんなさい、私には分からないわ……』
『麻呂は、見てたでごじゃる……』
『え!?』
「それ、本当!」
『本当でごじゃるよ……そこの双子の娘が結城の姫、朝日殿と広春殿でごじゃるよな?』
『え~、なんで私たちの事、知ってるのよ?』
『麻呂はこの辺りを守護する神でごじゃるよ! それに全部見てたでごじゃるよ!』
「虫麻呂さ~ん! もしかしてお宝の場所が分かるの~! 教えてほしいな~!」
『異国の者は、金の髪に青い瞳……なんと美しい娘でごじゃるか……』
「お宝の事、教えてよ~」
マリンは虫麻呂に、金色の髪をふわっとなびかせ、色仕掛で情報を聞き出そうとしている……
「マリン、何してるんだ?」
「裕翔! このチャンスをものにするわよ!」
虫麻呂は、マリンの美しさと、ほのかに香る香水の香りで惑わされていた……
『虫麻呂様💢 なにデレデレしているんですか、私というものがあるのに💢 この浮気者~~~』
虫麻呂は手児奈にほっぺを抓られている……
『痛い、いたたたた~、ごめんでごじゃるよ~』
『でも、マリンさんは、本当に美しいですね、嫉妬してしまいます。うらやましいわ』
「そ、そうかな? ありがとう! でも、手児奈ちゃんだってとっても可愛いわよ!」
『そうですか! マリンさんに言われると嬉しいです! ……それから~、マリンさんから香るいい匂いなのですが、私も欲しいです!』
「良いわよ! 同じ香水で良ければ今持ってるから付けてあけるね!」
マリンから香水を付けてもらい頬を染めて照れている手児奈のその横で、虫麻呂は、美女2人にかこまれ、興奮のあまりに、顔を真赤にしながら倒れた……
『虫麻呂さま~~~!』
「虫麻呂~~~! なに倒れてるのよ~~~!」
マリンと手児奈の声が、筑波の山に木霊した……
……つづく
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