ちょとだけ不思議で、ちょとだけ夢のある、ちょとだけ昔の冒険物語

いぬっ

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≪結城編≫

1.結城の姫

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 マリンは久し振りに、手帳を取り出して見ている……

「どうしたんだ?」
「ちょと思い出したのよね、結城ゆうきって小山おやまから近いわよね?」

「まさか、また寄り道するのか?」

「良いじゃない、近いんだし……だめ~、ちょっとだけ……せっかく近くまで来たんだし~駄目だめかな~良いでしょ~ゆうと~! ね~、ね~!」

『しかたないな~! マリンは言い出したら聞かないからね、良いよ!』
「ありがとう! ミーシャ!」

「ミーシャ、勝手に話を進めるんじゃない……それでマリン、結城には何があるんだ?」

埋蔵金まいぞうきんよ!」

……

源頼朝みなもとのよりともがね、奥州おうしゅう藤原氏ふじわらし征伐せいばつに行ったときに、一緒にいくさに行ったのが結城氏の祖、結城朝光ゆうきともみつでね、奥州討伐おうしゅうとうばつ武功ぶこうを挙げて、褒美ほうび奥州藤原氏おうしゅうふじわらしが保有していた、金銀財宝を全て持ち帰って来たらしいのよ、そのお宝をね、結城家の最後の御殿様が隠したのが結城の埋蔵金なのよ!」

『マリン! 楽しそうだね!』
「そう簡単には見つけられないんだろ~」

『面白そうだな! 小犬も宝探し、まぜてくれ!』
『楽しそう! うーもまぜて~!』

義経よしつね様のかたきじゃからな~! そのお宝を頂くのじゃ!』
「物騒だな~しずか、かたきだなんて!」

『だって~、あの時は義経さまを追い掛けて、栗橋くりはしまで来ていたのじゃが、義経様の訃報ふほうを聞いてあまりのショックで体調を崩して死んでしまったからな~! 可哀想かわいそうな私なのじゃ!』

「う……シビアな話ね……可哀想!」
 マリンはその話を聞いて『うる、うる』している。

『しかしなのじゃ! その結城だとて、『祇園精舎ぎおんしょうじゃの鐘の声 諸行無常しょぎょうむじょうの響きあり 娑羅双樹しゃらそうじゅの花の色 盛者必衰じょうしゃひっすいことわりをあらはす』なのじゃ~! せっかくだからお宝は頂くのじゃ~!』

「も~しずかったら、感動したのがだいなしだわ~!」

……

 小山から結城へは半時はんときほど歩いて到着した。

「着いたわ!」
「近かったな! それでここは?」

金光寺きんこうじよ!」
「???……なぜ、お寺?」

「私の調査によると、ここの山門さんもんにヒントがあるのよ!」
『マリン、何か文字が書いてあるよ! なんて読むのかな?』……ミーシャは柱にきざまれている文字を発見する。

すごくく難しい文字ね!」

……

 山門には、以下の3しゅ和歌わかが刻まれていて、埋蔵金の在処ありかしめしていると伝えられている……

『きのカラムシかふゆうもんにさくはなも みどりのこす万代のたね』
『こふやうにふれてからまるうつ若葉 つゆのなごりはすへの世までも』
『あやめさく水にうつろうかきつばた いろはかはらぬ花のかんばし』

……

裕翔ゆうとは読める?」
「読めるが、意味までは無理かな……だけど、結城家の繁栄はんえい後世こうせいまで続く様に願いが込められてるらしいぞ……」
「そうかな~? お宝の在処を示す暗号文あんごうぶんのはずよ?」
「確かに、徳川家康とくがわいえやすや徳川吉宗よしむねが暗号文の解読に挑戦して、お宝を探したらしいけど見つからなかったと言う、記録はあるな……」
「暗号文が解けなくても良いわ! 私には陰陽道おんみょうどうと魔法があるからね!」

……

『お腹すいた~!』
『なにか食べた~い!』

「そうね、お腹すいたね! 食事にしようか?」
『ここ結城では、ゆで饅頭まんじゅうが名物らしいのじゃ! どうじゃ食べてみぬか?』

「そうね、美味しそう!」

……

 ゆで饅頭は、この辺りで疫病が流行したとき、疫病祓えきびょうばらいのため、結城の殿様が神輿みこしを神社に奉納した際に、民衆に振る舞ったのが始まりといわれ、 神社の夏の大祭の日には、各家庭でゆでまんじゅうを作ってお供えし、無病息災むじょうそくさい五穀豊穣ごこくほうじょうを願うようになったのが始まりだとされる……

……

『美味しいのじゃ!』
『おいしい!』

『おいしい! 私、もう1つおかわり~!』
『ずるいぞ~! わしもじゃ~!』

「わかった、わかった、皆んな落ち着け、注文するから!」

 お茶をすすりながら、饅頭を頬張ほおばる……

……

「それでね裕翔! お宝の事なんだけどね……」
「そうだな、謎解きは難しそうだな……」

『そうよ! 難しいわよ、かなりね!』
『そうよ! 難しいわよ!』

「俺だったらヒントなんて残さずに隠すけどな!」

『そうよ! ヒントなんて無いわよ!』
『そうよ! 無いわよ!』

「どうして分かるのよ?」

『それは、私達が隠したからなのよ!』
「え? え~~~! 貴方たちはだれ?」
 いつの間にか、2人の幼女が話に入り込んでいた……

『私? 私は結城朝日あさひ、結城家の姫よ!』
『私は結城広春こはる、私も結城家の姫よ!』
 下総結城氏しもうさゆうきし第18代当主、結城秀朝ゆうきひでやすの娘で、天真爛漫てんしんらんまんな性格の姫達である……双子の姫である……

……

「な~マリン! お宝の事、この姫達に聞けば分かるんじゃないのか?」

「そうよね、当人達よね!」

『だれですか? 貴方たちは? お宝の事を聞きたいのですか? そうですね~、あの時はまだ私達が幼かった頃の事です! お父様が私達に夢中で、私達の気を引こうとして、結城家のお宝を全部くれるって言うのです!』
 朝日は勝手に喋り始めた……

「ばか親だな!」

『そんな事はありません! 多分その頃、お祖父様じいさまとお父様とうさまは徳川家康に結城家のお宝を狙われていて、嫌がらせを受けていた頃でね、自暴自棄じぼうじきになり、私達にお宝を『全部あげる~!』って言っちゃんだと思うの! それでね、私達はお祖父様とお父様の苦労をねぎらってあげようと思って、楽しく宝探しゲームで遊ぶ事を思い付いたの! それで、家来けらいに頼んでお父様から貰ったお宝を筑波山つくばさんに全部隠して、お祖父様と朝日のチーム、お父様と広春こはるチームに分かれて、どちらが先に探すことが出来るか競争したの!』

『……1週間探し回りましたが、何処に隠されたのか分からなくなってしまいました。 あは、は、は、は、……無くなっちたのよ……』

「うわ~……馬鹿な親子……」

『でも良かったのよ!……その後直ぐに、結城家は国替えを命じられて、福井へ行くことになったから……家康に、お宝を取られなくて良かったと思うわ!』

「だけど無くしちゃたのよね……」
『うむ~~~! そうなのよね?』

「その隠した家来に聞けば良いんじゃないか?」
『そうなのですが、その家来も、また家来に命令しただけなので、分からないと言うのですのよ!』

「その家来の家来が怪しい……」
『いいえ、その家来も家来の家来も忠義者ちゅうぎもので信用出来る子なのですよ! ちょとだけ、そそっかしいだけですの!』

「仲が良いの?」
『一緒に育った幼馴染おさななじみなのですのよ!』

「それは、信用出来るわね!」
『かなり責任を感じているから責めないでやってほしいのです!』

「もしかして、その子も居るの?」
『はい! ここに居ますわ!』
 双子の姫達の後ろから、姿をあらわす……

「うわ~~~! 丁髷ちょんまげだ~~~! 可愛い! ほっぺ、スリスリさせて~~~!」
 マリンはすかさず、幼くて可愛らしい、お侍さんを式神に憑依ひょういさせて、抱きついた!
『むぎゅ~~~!』
『こら~! 無礼者ぶれいもの~~~! ???体が実体化じったいかしてる?』

……

「お名前は~?」
『マリン殿、かたじけない、自分の身体のようで、すっごく気分が良い! 私は多賀谷重経たがやしげつね
『僕は、水谷正村みずのや まさむら
『拙者は、山川朝信やまかわ とものぶ
『私は! 上野幸源うえのこうげん

「みんな~! 本当に隠し場所、忘れちゃたの?」

面目御座めんぼくござらん……』
「筑波山に隠したのは間違いないのよね?」

『はい! それは、間違い御座らん! 殿と姫様の勝負が引き分けになったので、お宝を回収しに行ったのですが、その場所には、何もなくなっていたのです……』

盗賊とうぞくかな?」
『それは無いです、忍者に監視させてましたから……』

「え! 忍者! どこ、どこに居るの!」
  マリンは、忍者と聞いてキョロキョロする……

『今はいません、昔の話です!』
「あ! そうか~残念! ……と言うか、この子達はなんなの? しずか~たすけて~……」
 マリンは少し不安になり、しずかに声をかけた。

『何かあったのか?』
「しずか~~~、なんかね~いっぱい出てきたのよ~! 幽霊かな~」

『何を怖がっているのじゃ? どうせ、マリンの事じゃから、すでに皆むにゅむにゅしたのじゃろ~?』

「鋭いな~しずかは……あれ? 他の2人は?」
『小犬とうーの2人は取込み中だから来ないって言っていおるぞ!』

「そうなの?」

『幽霊だと~💢 失礼な奴だな!』
 結城の双子の姫は、マリンの発言に怒っている……

『なんじゃ! 朝日あさひ広春こはるではないか! 結城の娘がいるという事は……また寄り道しておるな?』
「ばれたか、ちょとね結城の埋蔵金をね探そうと思って……は、は、ははは……」

『マリンは早く日光にっこうへ行かぬか! 裕翔が困っておるぞ……仕方ないの~!』

『しずか姉~様! どうしてここに居るの?』
『朝日、広春、久しいの、元気そうで何よりじゃ! ちょっとな、こ奴らと旅をしているのじゃ!』

『楽しそう!』
『楽しそう! 私達も行きた~い!』

『そうじゃな、まだ余裕はあるからな、良かろう!』
「ちょっと待った~~~! 余裕ってなに?」
『決まっておるじゃろ~! マリンの中のことじゃ!』
「私の許可もなしに、何人の幼女を連れ込んでるのよ!」
『人聞きの悪い事を言うでないぞマリン! でも大丈夫なのじゃ! まだまだ余裕はあるからの~!』

「うえ~……そうなの~! 私の体どうなってるのよ?」

『そんな事よりも、まず、城へ向かって!』
「そんな事ですって💢」

「落ち着けマリン!」
「そ、そうね……お城あるの?」

『在るに決まってるではないですか~! 立派な城よ!』
『城へ行って昔の資料を読み返してみるわ! なにか思い出せるかもしれないからね!』

……城へは金光寺から少し歩いて着いた。

『うわ~~~! 城が~~~! 誰がこんな事したのよ~💢』
 朝日と広春は慌てふためいて、わたわたと走り回っている……

『ここも、戊辰戦争ぼしんせんそうで焼けてしまったらしいの~』

『しずか姉さま~! どうしよ~う!』
『しかたなかろ~……諦めるしかなかろ~』

『姫様、おいたわしや……』

「2人とも、知らなかったの?」
『暫くお城へは来てなかったからね……燃えちゃたなんて、知らなかったのよ~』

「そうだ! お宝を探して、お城を直しましょうよ!」

『……いまさら探せるわけがなかろう……』
『うえ~ん!』
 姫は泣き出してしまった……

「大丈夫だぞ! マリンは魔法と陰陽道が使えるからな!」

「そうね! 少し自信があるわ!」
『本当に?』
『本当なの?』

「探知する魔法があるからね!」
『マリン! 好き!』
『マリン! ありがとう~!』
 朝日と広春はマリンに抱きついてきた……
 
「か、可愛いい!」
 マリンは2人の姫もすかさず式神に憑依させ、柔らかいほっぺをむにゅむにゅして堪能した……

「マリン、顔が……緩んでるぞ!」
「え!」
 マリンは両手で自分のほっぺをパチンと叩いて気合を入れた。

「裕翔! それじゃ筑波山へ行くわよ!」

……つづく
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