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白の星の騎士
早過ぎる別れと災害級の化け物
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「ぴぎぃ!ぴぎぃ!」
鳴き声がする。どうやらあの子が起きたみたいだ。
格納庫は危険な物が多いから、居住スペースに置いておいた。
僕が姿を現すと哀しげな鳴き声から喜びの鳴き声を変わった。
餌のライフクリスタルはまだ大丈夫、単純に寂しかったんだろう。
産まれたばかりだから、当たり前だ。
名前を付けていなかった。
シンプル・イズ・ベスト。
鳴き声から取ってピギにしよう。
「君の名前はピギだ!」
「ピギィ♪」
気のせいかもしれないが、嬉しそうだ。
パテが乾いたので偽装のためにパテや金属片で外装に角とか突起を追加し、色も塗り替えた。
よく見ればばれるけど、すぐには気付かれないだろう。人の観察力なんてあまりあてにはならない。
誘拐事件の時、色を変えただけの車に気付かなかったし。
これでジルコニアの新しい外装を作るまでの時間稼ぎぐらいにはなる。
この行動は思わぬ結果をもたらした。
新たなトートが得られたのだ。
トート・ギング。
ジーイフのトートはトート・ジーイフだった。ということは末尾のギングというのがジルコニアとスピネルを作った文明の名前だろう。
練成のレベリングと鉄板のネオアイアンへの転化。
さらにピギのお世話。
今まで一人だったけど、ピギがいるおかげで寂しくない。
だけど、それは突然訪れた。
それが起こったのはこちらの時間で出発から9日目のことだった。
ログインしていつものようにピギの様子を確認すると、瓶の中でぐったりしていた。
慌てて瓶から出すと、手の平にピギは力なく倒れこんだ。
ライフクリスタルはまだ大丈夫、空腹ではない。だったら何で?
思いつく限りの処置をしたが、ピギは何をやっても元気にはならなかった。
そして、そのまま……
「そんな」
僕の手の上でピギは死んでいった。もう動かない。
涙があふれてくる。
こんなことになるなら名前を付けるんじゃなかった。
ピギの遺体はまた卵に戻った。
もう一度孵化させる気が起きない。
すぐ死ぬなら、またつらい思いをするだけだ。
休眠させるための処理をしよう。
準備を進めていると、再び孵った。
生まれるには早すぎる。
「ぴぎぃ♪ぴぎぃ♪」
前と同じように僕に懐いてくる。
この子もすぐに死んでしまうことを考えると苦しい。
でも、この子は何も悪くない。ちゃんと大事に育てよう。
心なしか以前より大きくなっている気が……。
デバイスの呼び出し音がなった。また何かが送られてきたみたいだ。
映像ファイル。タイトルは育て方その2、前回の続きだった。
長生きさせる方法が見つかるかもしれない。
「どうやら転生させることができたようだね。おめでとう」
映ったのは同じ研究室に同じ博士だ。ただし、前より若干荒れているような気がする。博士の髪もぼさぼさで顔色も悪い。
「赤は不老。寿命などで死ぬことはない。世代を経ず、同一個体が負荷、ストレスによって進化する。多種多様なストレスが掛かり、それに対応してきた赤は手が付けられない怪物と化してしまう。実際、災害と称される程の個体が誕生してしまったこともある」
ズールのことかな?でも、ズールは強かったけど、災害レベルかというと違うと思う。数さえいれば十分対応できるレベルだ。たぶんもっと強力な赤が現れたんだろう。
博士はそれを証明するようにその赤の画像を見せてくれた。その姿はまるで恐竜。恐竜の敵キャラでよく出てくるラプトルとかT-REXじゃなくて、ブラキオサウルスとかに近い。それが人間数十人をまとめて丸呑みにしている。
「ズールもいずれこうなっていたのかな」
意図せず、安堵のため息が出た。
推測だけど、ベース22を誰もクリアせず放置されていたら、ズールは近いレベルまで進化していたに違いない。
ストレスをもたらす外敵はいなかったけど、長い間整備されていなかったせいなのか、水の生成装置をはじめ色んな設備は限界に近かった。壊れていたら、水などが得られないことで負荷がズールに掛かり、さらに進化していたはず。
宇宙で活動できる力を獲得し、どこかの星に到達されたらその星は滅んでいただろう。それぐらいのポテンシャルをズールは秘めている。
赤の説明が終わり、青の説明に入った。
「それに対して、青は弱く寿命も長くない。特に最初の個体は長くても10日ほどで死んでしまうだろう」
それを聞いて安心した。僕の不手際で殺してしまっていたら、しばらくログインする気が起きなくなっていただろう。
「青は転生という手段で成長する。一度死に生まれ変わることによってより強くなっていくのだ。そして、転生後の成長度合は注がれた愛情に比例する。ちゃんと可愛がってあげなさい」
「言われなくてもそうするよ」
動画はこれで終わりだった。
懐いてくれてるけど、記憶は残っているのかは分からない。でも、ちゃんと育てていこう。
名前はピギのまま。これから何度も転生するのにその全てを別の名前にするのは難しすぎる。
今回の転生で変わったことは大きさぐらい。他に変化は見られなかった。最初の転生だしね。
鳴き声がする。どうやらあの子が起きたみたいだ。
格納庫は危険な物が多いから、居住スペースに置いておいた。
僕が姿を現すと哀しげな鳴き声から喜びの鳴き声を変わった。
餌のライフクリスタルはまだ大丈夫、単純に寂しかったんだろう。
産まれたばかりだから、当たり前だ。
名前を付けていなかった。
シンプル・イズ・ベスト。
鳴き声から取ってピギにしよう。
「君の名前はピギだ!」
「ピギィ♪」
気のせいかもしれないが、嬉しそうだ。
パテが乾いたので偽装のためにパテや金属片で外装に角とか突起を追加し、色も塗り替えた。
よく見ればばれるけど、すぐには気付かれないだろう。人の観察力なんてあまりあてにはならない。
誘拐事件の時、色を変えただけの車に気付かなかったし。
これでジルコニアの新しい外装を作るまでの時間稼ぎぐらいにはなる。
この行動は思わぬ結果をもたらした。
新たなトートが得られたのだ。
トート・ギング。
ジーイフのトートはトート・ジーイフだった。ということは末尾のギングというのがジルコニアとスピネルを作った文明の名前だろう。
練成のレベリングと鉄板のネオアイアンへの転化。
さらにピギのお世話。
今まで一人だったけど、ピギがいるおかげで寂しくない。
だけど、それは突然訪れた。
それが起こったのはこちらの時間で出発から9日目のことだった。
ログインしていつものようにピギの様子を確認すると、瓶の中でぐったりしていた。
慌てて瓶から出すと、手の平にピギは力なく倒れこんだ。
ライフクリスタルはまだ大丈夫、空腹ではない。だったら何で?
思いつく限りの処置をしたが、ピギは何をやっても元気にはならなかった。
そして、そのまま……
「そんな」
僕の手の上でピギは死んでいった。もう動かない。
涙があふれてくる。
こんなことになるなら名前を付けるんじゃなかった。
ピギの遺体はまた卵に戻った。
もう一度孵化させる気が起きない。
すぐ死ぬなら、またつらい思いをするだけだ。
休眠させるための処理をしよう。
準備を進めていると、再び孵った。
生まれるには早すぎる。
「ぴぎぃ♪ぴぎぃ♪」
前と同じように僕に懐いてくる。
この子もすぐに死んでしまうことを考えると苦しい。
でも、この子は何も悪くない。ちゃんと大事に育てよう。
心なしか以前より大きくなっている気が……。
デバイスの呼び出し音がなった。また何かが送られてきたみたいだ。
映像ファイル。タイトルは育て方その2、前回の続きだった。
長生きさせる方法が見つかるかもしれない。
「どうやら転生させることができたようだね。おめでとう」
映ったのは同じ研究室に同じ博士だ。ただし、前より若干荒れているような気がする。博士の髪もぼさぼさで顔色も悪い。
「赤は不老。寿命などで死ぬことはない。世代を経ず、同一個体が負荷、ストレスによって進化する。多種多様なストレスが掛かり、それに対応してきた赤は手が付けられない怪物と化してしまう。実際、災害と称される程の個体が誕生してしまったこともある」
ズールのことかな?でも、ズールは強かったけど、災害レベルかというと違うと思う。数さえいれば十分対応できるレベルだ。たぶんもっと強力な赤が現れたんだろう。
博士はそれを証明するようにその赤の画像を見せてくれた。その姿はまるで恐竜。恐竜の敵キャラでよく出てくるラプトルとかT-REXじゃなくて、ブラキオサウルスとかに近い。それが人間数十人をまとめて丸呑みにしている。
「ズールもいずれこうなっていたのかな」
意図せず、安堵のため息が出た。
推測だけど、ベース22を誰もクリアせず放置されていたら、ズールは近いレベルまで進化していたに違いない。
ストレスをもたらす外敵はいなかったけど、長い間整備されていなかったせいなのか、水の生成装置をはじめ色んな設備は限界に近かった。壊れていたら、水などが得られないことで負荷がズールに掛かり、さらに進化していたはず。
宇宙で活動できる力を獲得し、どこかの星に到達されたらその星は滅んでいただろう。それぐらいのポテンシャルをズールは秘めている。
赤の説明が終わり、青の説明に入った。
「それに対して、青は弱く寿命も長くない。特に最初の個体は長くても10日ほどで死んでしまうだろう」
それを聞いて安心した。僕の不手際で殺してしまっていたら、しばらくログインする気が起きなくなっていただろう。
「青は転生という手段で成長する。一度死に生まれ変わることによってより強くなっていくのだ。そして、転生後の成長度合は注がれた愛情に比例する。ちゃんと可愛がってあげなさい」
「言われなくてもそうするよ」
動画はこれで終わりだった。
懐いてくれてるけど、記憶は残っているのかは分からない。でも、ちゃんと育てていこう。
名前はピギのまま。これから何度も転生するのにその全てを別の名前にするのは難しすぎる。
今回の転生で変わったことは大きさぐらい。他に変化は見られなかった。最初の転生だしね。
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