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霧の魔
避難は順調
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島民の避難は進んでいる。
徒歩移動の疲労を考え、二日掛ける予定。
まずライザさんたちが住む町から出発。隣町で一泊する。
隣町の住人は今日中に港に到着する予定だ。すでにこちらに向かっている。
フウアさんは避難民の受け入れ準備を終えると、再び通信室に籠った。
この霧の情報を他島から集めるためだ。
僕も避難民の護衛に行く予定。
充電が終わったら、出発する。
コネコとピギは無事だろうか。
蛇よりもピギの方が強いし、何かあっても宇宙船内に逃げ込めば、大丈夫だと思うんだけど不安になる。
そんなことを考えているとコネコから音声チャットが届いた。
『聞こえるか?』
「良かった。無事だったんだね」
『ああ、問題はない。ピギも元気だぞ』
ん?おかしい。何で通信できているんだ?
霧には通信妨害の効果がある。
現にユラさんと連絡はとれていない。
デバイスのコープ機能は霧の中では使用不能で、掲示板すら見ることができなかった。
「どうやって通信しているの?」
『そんな難しいことじゃない。デバイス単体では不可能だが、通信装置に少し手を加えるだけでできるようになるぞ』
「ちょっと待って!」
通信室まで走った。
ロックせずに中に入る。
フウアさんは誰かと通信していた。
「フウアさん!」
「何ですか?今大事な話をしているんですけど」
「仲間が霧の中でも通信できる方法を見つけました!」
「何ですって!……申し訳ありません。続きはまた後で」
フウアさんは通信相手に謝罪し、こちらを優先してくれた。
口頭だが、どう改良すればいいのかコネコに説明してもらう。
本当に少し手を加えるだけだった。
通信室にいる技師がすぐに通信装置の改良を開始した。
僕が手伝う必要はなさそうだった。
「他に何か成果はないの?」
『欲しがり屋さんだな。もちろんあるぞ』
「さすがだね」
『霧を調べた結果だ。この霧は風の影響を受けない。どんな暴風も受け流してしまう』
言われてみればその通りだ。ヴィンディスは常に風が吹いているのに、霧はどこにも行かず、ずっとエンジ島に留まっていた。
『霧にはエアロダイトの活性化を阻害する成分が含まれているようだ。エアロダイトに付着すると休止状態になる』
「やっぱりそうか。対策は?」
『簡単だ。霧からエアロダイトを隔離して接触しないようにすればいい』
「霧がない屋内でも活性化しないよ」
『それだけでは不十分なのだ。目に見えずとも霧は室内にも入っている。スラスターを物理的に塞げ』
「分かった。ありがとう」
『また何か分かったら報告する。気を付けろ。霧から悪意を感じる。何が潜んでいるか分からんぞ』
僕の返答を待たず、コネコは通信を切った。
悪意ねぇ。この霧、誰かが故意に撒いた物だろうか?だとしたら何者なんだろう。
スラスターさえ塞げばファルシュを動かすことができる。
この情報は他の町にすぐに伝えられた。
スラスターを塞ぐため、飛行はできないけど、歩行は可能。
避難民の護衛ぐらいはできるはずだ。
ファルシュの改修を始めているが、技術者が足りていない。
僕も予定を変更し手伝っているが、港に配備してあるファルシュを全機改修するのは一日や二日じゃ不可能だ。
まだ一機しか完了していない。
その一機は避難民の護衛に行っている。
隣町からの避難民の第一陣が港に到着した。
ただし、ナートリへ避難するための船はまだ来ていない。
霧を避けるために普段の航路ではなく、大回りするルートを使用しているそうだ。
エンジ島の船はどれも小型。小型でも動かすためには当然人がいる。
しかし、どこも人手不足で、ここに配分できる人はいなかった。
ナートリからの救助船の到着を待つしかない。
もうすぐ日が暮れる。
ファルシュがいても、夜の移動は危険。
今日の避難行動はここで終了することになった。
野宿は危険なので、すでに出発した組はこのまま次の目的地まで移動、その護衛は治安維持隊が担当する。
僕らはここで一度ログアウトする。
ログイン可能時間を節約しないと。
夜が明けるまで現実で時間を潰した。
不測の事態が起きないかとても不安だった。
避難開始、二日目。
港は無事で、近い方の町の住人の多くが港に到着していた。
ナートリからの船も到着しており、順にナートリへ避難をする。
ただし船は一隻しかない。他の船は間が悪いことに遠方まで出払っているらしい。
この船一隻では全島民が避難するには何往復もしなきゃならなかった。
今日も僕がやることは避難民の護衛とファルシュの改修作業。
動かせる機体が増えたおかげで僕らの負担はかなり減った。
この調子なら明日には全ての島民が港に着くだろう。
残りのログイン可能時間限界まで働き続けた。
最初は危なかったが、この状況なら安心してログアウトできる。
明日は日曜日で学校が休み。朝からプレイできる。
どう転ぶかは分からないけど、明日に備えてもう寝よう。
徒歩移動の疲労を考え、二日掛ける予定。
まずライザさんたちが住む町から出発。隣町で一泊する。
隣町の住人は今日中に港に到着する予定だ。すでにこちらに向かっている。
フウアさんは避難民の受け入れ準備を終えると、再び通信室に籠った。
この霧の情報を他島から集めるためだ。
僕も避難民の護衛に行く予定。
充電が終わったら、出発する。
コネコとピギは無事だろうか。
蛇よりもピギの方が強いし、何かあっても宇宙船内に逃げ込めば、大丈夫だと思うんだけど不安になる。
そんなことを考えているとコネコから音声チャットが届いた。
『聞こえるか?』
「良かった。無事だったんだね」
『ああ、問題はない。ピギも元気だぞ』
ん?おかしい。何で通信できているんだ?
霧には通信妨害の効果がある。
現にユラさんと連絡はとれていない。
デバイスのコープ機能は霧の中では使用不能で、掲示板すら見ることができなかった。
「どうやって通信しているの?」
『そんな難しいことじゃない。デバイス単体では不可能だが、通信装置に少し手を加えるだけでできるようになるぞ』
「ちょっと待って!」
通信室まで走った。
ロックせずに中に入る。
フウアさんは誰かと通信していた。
「フウアさん!」
「何ですか?今大事な話をしているんですけど」
「仲間が霧の中でも通信できる方法を見つけました!」
「何ですって!……申し訳ありません。続きはまた後で」
フウアさんは通信相手に謝罪し、こちらを優先してくれた。
口頭だが、どう改良すればいいのかコネコに説明してもらう。
本当に少し手を加えるだけだった。
通信室にいる技師がすぐに通信装置の改良を開始した。
僕が手伝う必要はなさそうだった。
「他に何か成果はないの?」
『欲しがり屋さんだな。もちろんあるぞ』
「さすがだね」
『霧を調べた結果だ。この霧は風の影響を受けない。どんな暴風も受け流してしまう』
言われてみればその通りだ。ヴィンディスは常に風が吹いているのに、霧はどこにも行かず、ずっとエンジ島に留まっていた。
『霧にはエアロダイトの活性化を阻害する成分が含まれているようだ。エアロダイトに付着すると休止状態になる』
「やっぱりそうか。対策は?」
『簡単だ。霧からエアロダイトを隔離して接触しないようにすればいい』
「霧がない屋内でも活性化しないよ」
『それだけでは不十分なのだ。目に見えずとも霧は室内にも入っている。スラスターを物理的に塞げ』
「分かった。ありがとう」
『また何か分かったら報告する。気を付けろ。霧から悪意を感じる。何が潜んでいるか分からんぞ』
僕の返答を待たず、コネコは通信を切った。
悪意ねぇ。この霧、誰かが故意に撒いた物だろうか?だとしたら何者なんだろう。
スラスターさえ塞げばファルシュを動かすことができる。
この情報は他の町にすぐに伝えられた。
スラスターを塞ぐため、飛行はできないけど、歩行は可能。
避難民の護衛ぐらいはできるはずだ。
ファルシュの改修を始めているが、技術者が足りていない。
僕も予定を変更し手伝っているが、港に配備してあるファルシュを全機改修するのは一日や二日じゃ不可能だ。
まだ一機しか完了していない。
その一機は避難民の護衛に行っている。
隣町からの避難民の第一陣が港に到着した。
ただし、ナートリへ避難するための船はまだ来ていない。
霧を避けるために普段の航路ではなく、大回りするルートを使用しているそうだ。
エンジ島の船はどれも小型。小型でも動かすためには当然人がいる。
しかし、どこも人手不足で、ここに配分できる人はいなかった。
ナートリからの救助船の到着を待つしかない。
もうすぐ日が暮れる。
ファルシュがいても、夜の移動は危険。
今日の避難行動はここで終了することになった。
野宿は危険なので、すでに出発した組はこのまま次の目的地まで移動、その護衛は治安維持隊が担当する。
僕らはここで一度ログアウトする。
ログイン可能時間を節約しないと。
夜が明けるまで現実で時間を潰した。
不測の事態が起きないかとても不安だった。
避難開始、二日目。
港は無事で、近い方の町の住人の多くが港に到着していた。
ナートリからの船も到着しており、順にナートリへ避難をする。
ただし船は一隻しかない。他の船は間が悪いことに遠方まで出払っているらしい。
この船一隻では全島民が避難するには何往復もしなきゃならなかった。
今日も僕がやることは避難民の護衛とファルシュの改修作業。
動かせる機体が増えたおかげで僕らの負担はかなり減った。
この調子なら明日には全ての島民が港に着くだろう。
残りのログイン可能時間限界まで働き続けた。
最初は危なかったが、この状況なら安心してログアウトできる。
明日は日曜日で学校が休み。朝からプレイできる。
どう転ぶかは分からないけど、明日に備えてもう寝よう。
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