コスモス・リバイブ・オンライン

風吹く星よ

スパークコート

　この部隊は他の蛇討伐隊とは違う意味合いを持っている。
それは新コートのテストだ。
　三大クランが開発したコートは完成度が高く、使いやすい物が多い。
だけど、量産を前提としたせいで、妥協した点もあって性能に満足できていないプレイヤーも少人数だけど存在した。私とか元スパーク中隊の仲間とか。


　そこで生産特化のプレイヤーなどと連携して、エース用の高性能コートを開発することになった。
コート開発のノウハウはスワロさんたちが確立していたため、最初のコートよりも開発には時間が掛からなかった。
まだテスト段階だけど、実戦でも使用できるほどの高い完成度を誇っている。


　祝賀会の途中だったけど、通信が入った。
誰かしら？

『良かった。繋がった』
「スワロさん。どうかしたんですか？」
『まさか、今の状況を知らないんですか？』

　彼からクインシフで起きていることを聞かされた。
空魔の襲来。それはヴィンディスを揺るがす大事件だ。

　
　彼から頼まれたのは救援。
相手するのは空魔ではなく、イヴィルフライヤー。数は万を超えているらしい。
　依頼料は先払いで、他の蛇討伐部隊にも依頼を出しているそうだ。

　
　祝勝会会場に戻り、みんなに参加するかどうか一応聞いてみたけど、誰一人不参加者が出なかった。
私もそうだけど、みんな戦闘狂だったりする。
　私たちが使っている船は足が速い高速艇だけど、それでも戦場に到着するのはギリギリになる。
急いで荷物を纏め、戦場に向けて出発した。


　船を走らせること数日。
情報ではもう戦闘は始まっているらしい。

「もう待ってられない！行きましょう！」
「よっしゃー！やったるぜ！」

　船よりもフレスヴェルグの方が速い。
消耗した状態で戦闘に入るが、フレスヴェルグなら大丈夫。
エアロダイト二個積みだから稼働時間はそこらのファルシュよりも長い。


　戦場に到着したが、一目で状況が悪いのが分かった。

「みんな、行くわよ」
『ラジャー！』
　
　事前の打ち合わせ通り、散開する。
固まるよりも散らばって行動した方が、多くのイヴィルフライヤーを倒すことができる。
　スパーク中隊の面々はソロ志向強い。
チームプレイが出来ないわけじゃないけど、そうするよりもバラバラで戦った方が戦果を挙げられる。


　全員が実力者で高性能機であるフレスヴェルグに搭乗している。
それに私たちはただのフレスヴェルグ部隊ではない。
装着しているコートはどれも妥協せずに性能を追求した一級品だ。


『斬り刻んでやる！』

　私たちの中で私に次いで撃破スコアが良いのは彼。
彼も元スパーク中隊で、切り込み隊長だ。
　彼のフレスヴェルグに着用されているのはヘクトソードコート。
通常のウィングブレードだけではなく、肘や膝、肩などの機体の各所に剣を増設したコート。
特殊な操作が必要なため、一般人向けじゃない。


　作った方もアホだけど、乗っているのもアホ。
剣が多い方がかっこいいとかいうアホな理由で誕生した。
　アホな機体だけど、その近接戦闘力は高い。
イヴィルフライヤーに肉薄し、三枚おろしにしている。


　他にも一般向けじゃないピーキーな機体が揃っていた。
私も人のことは言えない。
私が使っているコートもそこそこピーキーな物なのだから。


　このコートの開発に風断ちの巳の報酬のほとんどをつぎ込んだ。
ベースはスワロさんが開発した突撃戦コート。
あのコートは性能は全コートでトップクラスだけど、扱いづらさもトップクラスだったため、誰も使ってはいなかった。セーフティーアーマーが必須になる点も受けが悪い理由の一つだ。


　そんな突撃戦コートを私に合わせて調整。
さらに武装はルドフィー技研にお願いした。
　そして誕生したのが私専用のコート。
スパークコートだ。


　突撃戦コートも扱いづらかったが、スパークコートもそれを引き継いでいる。
武装の管理もしなければならないから、こちらの方がパイロットに求める技術が多い。
デバイスを使っても、完全に性能を引き出すのは難しかった。


　そこで操縦をサポートのためにスワロさんが管理ＡＩを作ってくれた。
詳しく聞いたことはないけど、たぶん彼はその道のプロなんだと思う。
　彼が作ってくれたＡＩは学習機能もある。
名前を付けた方がいいと言われたので、グロースと名付けた。
職場で情操教育のために飼育されている鶏の名前だ。


　グロースはとんでもなく無愛想。
冗談を言っても、無視される。
　ＡＩだから仕方ないと思っていたけど、彼が使っている作業ロボはとても感情豊かだった。
スワロさん曰く、これが彼の個性らしい。
何でこんなに無愛想になっちゃったんだろう？教育を間違えたのかなぁ？