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滅びし水晶の惑星

アルゲントゥム

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 カプセルの回収はユラさんにお願いしている。

「回収お願い」
『任せておいて』

 ベース22から紅霞が出撃していった。
宇宙という不慣れな環境でも、動きに無駄はなく、一直線に打ち上げカプセルに向かっていく。
ユラさんは宇宙での機動を物にしているみたいだ。
 僕は最低限の訓練していないけど、ユラさんのデータを基に宇宙用の姿勢制御プログラムを構築する予定だから平気だ。


 ユラさんはカプセルを回収に成功した。
カプセルは開けずに作業ロボに仕掛けられていた爆弾を解体したマイグラントの危険物作業室に運んだ。
早速一つ一つ解析していこう。

「枝と葉っぱの方はお願い。僕は土と空気をやるから」
「任せておけ」

 コネコにその二つを託し、土と空気の解析を始めた。


 僕が最初に手掛けたのは空気だ。
空気を構成する成分を詳細に解析を掛ける。
 ヴィンディスと大きな違いはない。
毒も含まれていなかった。これならボンベ無しでも大丈夫そうだ。


  土は光が当たることで光り輝いていた。
水晶の植物が砕け散った物なのかもしれない。

「なんだろう?花粉か何かかな?」

 採取した土に水晶ではない小さな粒が混じっていた。
この粒は空気にも微量含まれていた。
 解析の結果、キノコの胞子だということが分かった。
サンプルが少なすぎて、それぐらいのことしか判明していない。
どんな種類のキノコの胞子から不明だ。


 解析が終わった物は危険の有無に関わらずに処分する。
特に胞子には異様な寒気を感じる。
 防護服に胞子が付着した可能性があるから、これも念入りに浄化する。
作業室自体も薬品を撒いて、菌類を殺菌しておいた。
気にしすぎかも。


「そっちはどうだった?」
「人工物ではないな。これは自然の物だ」
「本当?」

 そうは見えない。

「間違いない。これは人の手で作られた物ではないぞ」
「そういう植物だってこと?」
「おそらくな」

 あの星の生態系は謎すぎる。
植物は発見しているけど、動物との遭遇はまだだ。
いるのかさえ分からない。


 解析はしたが、あの星について分からないことだらけだった。
降下はもうしばらく見守った方が良いかもしれない。
 植物以外の生物は未だに見つかっていない。
もしかしたら、人間はおろか動物がいない惑星なのかもしれない。


 無人調査機の調査は継続している。
新発見はない。延々と水晶の森が続いているだけだった。
降下場所を誤ったのかもしれない。この森は広すぎる。


 水晶の森しか映し出されないから、ユラさんたちはすでに飽きて訓練に戻っている。
僕も他の作業と並行しながら、映像を見ていた。
 モニターを眺めていると、異変に気付いた。
映像が揺れている。
調査機の周囲で大きな振動が起きているようだ。地震かも。


 調査機から送信されるデータを注意深くチェックしていると、いきなりそれが途絶えた。
最期に送信された映像に映し出されていたのは、水晶の杭だった。
表面はザラザラで、まるで鱗のような物が生えている。


 調査機は辛うじて生きているが、いつ止まるか分からない。
カメラは停止しているが、まだ作動している装置もある。
ギリギリまでデータを送信してもらった。


 今回の調査結果を受けて、再度会議を開いた。
あの星に行くかどうか多数決を取ると、前回とは違う結果になった。
 今度はユラさんとヴィニアちゃんは反対派に。ピギは中立。
コネコは依然賛成派だった。


「それじゃあイドに行きましょう」
「ちょっと待って。僕は降下した方がいいと思う」
「どうして?」
「ここをよく見て」

 最期に撮影された映像の一部を指さす。
小さな影だけど、確かにそれは映っていた。


「これが何なの?」
「拡大するね」

 映像を拡大すると、そこには金属で出来た足が映っていた。


「ロボットの足だな。この星の機動兵器か?」
「違う。これはアルゲントゥムだよ」
「……確かにそうだな。よく分かったな」
「何度も観たからね」

 VRマシンを購入する前、公式が配信したPVを何十回と鑑賞したのだ。
全ての星のロボットは頭に刻み込まれている。


 このアルゲントゥムは一般兵に支給されている物だ。名はAGラッパ。
突出した能力はないけど、この機体は大会で活躍できるほどの良機体なのだ。
アベル&カインに行けなくなったことで、入手を諦めていたが、思いがけない所で遭遇した。


 あの機体を解析すれば、技術力アップに繋がる。
アベル&カインの高度なテクノロジーが手に入るチャンスだ。
これを逃す手はない。絶対に手に入れておくべきだ。
 僕が賛成に回ったことで二対二になった。
アルゲントゥムを手に入れることのメリットを説明すると、反対派の二人も賛成してくれた。
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