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絆と禁忌
元気に
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降下艇内は静かだ。
僕とアローさんの話し声、降下艇の機器の駆動音しか聞こえてない。
つい先ほどまで、にゃんこ同盟とわんわん組合が騒いでいたのが嘘みたいだ。
二つのクランのメンバーは最初は和気あいあいと無人調査機の調整をしていた。
しかし、あることがきっかけで喧嘩を始めてしまったのだ。
喧嘩の理由は物凄くくだらない。
僕らのチーム名をわんにゃん調査隊にするか、にゃんわん調査団にするのかで揉めたのだ。
今、静かなのは決着が付いたからではない。
あまりにも騒ぎすぎたせいで、アローさんがキレて、全員を殴り倒したのだ。
アローさんは10人を瞬く間に制圧したが、これでも全力ではない。
アローさんがSVコンバットで準優勝したのは無手部門ではなく、武器部門。
彼女の真の実力は武器を持った時に発揮されるのだ。
準優勝だったのも、相手が年上かつ男性、さらに相性が悪い武器だったかららしい。
パッション君は無手での組手ならば、アローさんに食らいつくができるけど、武器ありの場合、一蹴されるそうだ。
【主人がすまない】
「君が謝ることないよ」
気絶しているポチさんに代わり、サンから謝罪を受けた。
スケイルとサンの本体は荷台にあるけど、その意識は仮の肉体の方にある。
にゃんこ同盟もそうだったけど、機獣たちの方がよっぽどしっかりしていた。
「あー、ちょっとまずいかも」
「どうしたの?」
「気付かれたみたい」
数は10。
識別信号は国軍の物だ。
国軍の基地の近くを飛んだのはさすがにまずかったみたいだ。
追跡しているのは飛行可能な鳥型などの機獣だ。
降下艇の速度に付いてきている。
「起こすか、縛り付けてきて。今のままじゃ危ない」
加速したいけど、気絶した人がいたら、頭を打つ危険がある。
死に戻りでもされたら、計画が狂ってしまう。
アローさんだけではなく、スケイルとサンも対処に向かってくれた。
それから数秒後、荷台から10回、悲鳴が聞こえてきた。
どうやら、起こすことにしたらしい。
悲鳴が聞こえるということは文字通り叩き起こしたんだと思う。
「おまたせ。全員起こしてきたわ」
「本気で撒くよ。舌噛まないでね。推力最大!」
降下艇の推力を最大まで引き上げる。
たとえ、空を飛べたとしても、ヴィンディスの飛行技術とは土台が違う。
あっという間に機獣をレーダー探知範囲外まで引き離した。
荷台の方は見ないことにする。
加速中、凄い悲鳴が聞こえてきたから、恐ろしいことになっているに違いない。
トラブルはあったが、霊峰の姿が見えてきた。
霊峰と呼ばれてもおかしくないほどの雄大さを感じる。
霊峰なので、神聖視されてはいるけど、入山は規制されておらず、手続きも必要はない。
入ったら死ぬよと言われているだけだ。
風が山に近づくほどに強まっていく。
飛行可能な機獣も近づけないのも納得できる。
だけど、ヴィンディスより弱い。
これなら遺跡まで問題なく到達できるだろう。
「この辺りのはずなんだけど」
衛星写真によると、塔があるのはこの周辺だ。
見逃さないように、目を皿にして、塔を探す。
「あった!あそこを見て」
アローさんが指差す先には、一本の塔が聳え立っていた。
モンスターがいないのを確認してから、塔の近くに着陸する。
「着いたよ、って聞いてないか」
荷台に行くと、とにかく揺れまくったせいで両クラン員は仲良く死屍累々になっていた。
ちょっとだけ休憩させてあげよう。
その間、僕はジルコニアで塔の様子を確認するために、外に出た。
塔の周囲をぐるっと一周してみたけど、入り口は見当たらない。
埋没しているんだろうか?
「さあ、元気に発掘しよう!」
こうなることは予想済み。準備はしてある。
へたれている面子に準備しておいたシャベルを配る。
休憩の時間は終わりだ。
「もうちょっと休ませてほしいわん」
「そうだにゃー!横暴だにゃー」
ごちゃごちゃうるさいな。ポーション飲んだんだから、疲れなんて残ってないはずだ。
ちょっと脅してやろう。
近くに落ちていた石を拾い上げ、それを握力で握り潰す。
「それで?何か言いたいことがあるんですか?」
「ありませんわん!すぐに始めますわん!」
脅しが効いたようで、シャベルを手に発掘作業を開始してくれた。
やっぱり元気じゃないか。
スケイルとサンは周囲の索敵をしてもらっている。
特に活躍しているのはサンだ。
バトルハウンドには犬と同じく嗅覚が発達しており、その索敵能力は機獣の中でも上位に位置する。
さらにもう一つ、マーキング能力がある。
体液を撒くことで、自身の縄張りだと主張し、下位のモンスターの接近を阻害するのだ。
ウォードッグにも同じ能力があるが、上位種であるバトルハウンドの物はより強力らしい。
オーククラスでも単体での接近をためらうそうだ。
これでひとまず安全の確保はできた。
発掘に集中できる。
僕とアローさんの話し声、降下艇の機器の駆動音しか聞こえてない。
つい先ほどまで、にゃんこ同盟とわんわん組合が騒いでいたのが嘘みたいだ。
二つのクランのメンバーは最初は和気あいあいと無人調査機の調整をしていた。
しかし、あることがきっかけで喧嘩を始めてしまったのだ。
喧嘩の理由は物凄くくだらない。
僕らのチーム名をわんにゃん調査隊にするか、にゃんわん調査団にするのかで揉めたのだ。
今、静かなのは決着が付いたからではない。
あまりにも騒ぎすぎたせいで、アローさんがキレて、全員を殴り倒したのだ。
アローさんは10人を瞬く間に制圧したが、これでも全力ではない。
アローさんがSVコンバットで準優勝したのは無手部門ではなく、武器部門。
彼女の真の実力は武器を持った時に発揮されるのだ。
準優勝だったのも、相手が年上かつ男性、さらに相性が悪い武器だったかららしい。
パッション君は無手での組手ならば、アローさんに食らいつくができるけど、武器ありの場合、一蹴されるそうだ。
【主人がすまない】
「君が謝ることないよ」
気絶しているポチさんに代わり、サンから謝罪を受けた。
スケイルとサンの本体は荷台にあるけど、その意識は仮の肉体の方にある。
にゃんこ同盟もそうだったけど、機獣たちの方がよっぽどしっかりしていた。
「あー、ちょっとまずいかも」
「どうしたの?」
「気付かれたみたい」
数は10。
識別信号は国軍の物だ。
国軍の基地の近くを飛んだのはさすがにまずかったみたいだ。
追跡しているのは飛行可能な鳥型などの機獣だ。
降下艇の速度に付いてきている。
「起こすか、縛り付けてきて。今のままじゃ危ない」
加速したいけど、気絶した人がいたら、頭を打つ危険がある。
死に戻りでもされたら、計画が狂ってしまう。
アローさんだけではなく、スケイルとサンも対処に向かってくれた。
それから数秒後、荷台から10回、悲鳴が聞こえてきた。
どうやら、起こすことにしたらしい。
悲鳴が聞こえるということは文字通り叩き起こしたんだと思う。
「おまたせ。全員起こしてきたわ」
「本気で撒くよ。舌噛まないでね。推力最大!」
降下艇の推力を最大まで引き上げる。
たとえ、空を飛べたとしても、ヴィンディスの飛行技術とは土台が違う。
あっという間に機獣をレーダー探知範囲外まで引き離した。
荷台の方は見ないことにする。
加速中、凄い悲鳴が聞こえてきたから、恐ろしいことになっているに違いない。
トラブルはあったが、霊峰の姿が見えてきた。
霊峰と呼ばれてもおかしくないほどの雄大さを感じる。
霊峰なので、神聖視されてはいるけど、入山は規制されておらず、手続きも必要はない。
入ったら死ぬよと言われているだけだ。
風が山に近づくほどに強まっていく。
飛行可能な機獣も近づけないのも納得できる。
だけど、ヴィンディスより弱い。
これなら遺跡まで問題なく到達できるだろう。
「この辺りのはずなんだけど」
衛星写真によると、塔があるのはこの周辺だ。
見逃さないように、目を皿にして、塔を探す。
「あった!あそこを見て」
アローさんが指差す先には、一本の塔が聳え立っていた。
モンスターがいないのを確認してから、塔の近くに着陸する。
「着いたよ、って聞いてないか」
荷台に行くと、とにかく揺れまくったせいで両クラン員は仲良く死屍累々になっていた。
ちょっとだけ休憩させてあげよう。
その間、僕はジルコニアで塔の様子を確認するために、外に出た。
塔の周囲をぐるっと一周してみたけど、入り口は見当たらない。
埋没しているんだろうか?
「さあ、元気に発掘しよう!」
こうなることは予想済み。準備はしてある。
へたれている面子に準備しておいたシャベルを配る。
休憩の時間は終わりだ。
「もうちょっと休ませてほしいわん」
「そうだにゃー!横暴だにゃー」
ごちゃごちゃうるさいな。ポーション飲んだんだから、疲れなんて残ってないはずだ。
ちょっと脅してやろう。
近くに落ちていた石を拾い上げ、それを握力で握り潰す。
「それで?何か言いたいことがあるんですか?」
「ありませんわん!すぐに始めますわん!」
脅しが効いたようで、シャベルを手に発掘作業を開始してくれた。
やっぱり元気じゃないか。
スケイルとサンは周囲の索敵をしてもらっている。
特に活躍しているのはサンだ。
バトルハウンドには犬と同じく嗅覚が発達しており、その索敵能力は機獣の中でも上位に位置する。
さらにもう一つ、マーキング能力がある。
体液を撒くことで、自身の縄張りだと主張し、下位のモンスターの接近を阻害するのだ。
ウォードッグにも同じ能力があるが、上位種であるバトルハウンドの物はより強力らしい。
オーククラスでも単体での接近をためらうそうだ。
これでひとまず安全の確保はできた。
発掘に集中できる。
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