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甘く蕩けるような媚態が込められた瞳でマデリーヌにじっと見つめられると、ベルゼーガは柄にもなくどぎまぎしてしまい、彼女を直視するのが難しいほど身の内が熱く昂ぶってきてしまう。
このままでは、また彼女を獣のように貪ってしまうのではないか――
そんな昏い想いを振り払いながら、ベルゼーガはすっくと立ち上がると、つかつかとテーブルに歩み寄りまだ湯気が立つスープ皿を一つ手に取り、再度マデリーヌの側で膝を着く。
「マデリーヌ、貴女はまだ料理に一口も手を付けていませんでしたね。少しでもなにか食べなければ身体に障りますよ。さあ、これを」
そう言いながら、ベルゼーガは紅褐色のスープをスプーンで掬い、マデリーヌの口元まで運ぼうとする。
「ベルゼーガ様、これは……?」
紅褐色の透明な液体に視線を注ぎながら、マデリーヌは見慣れない食べ物だなと首を傾げながら疑問を口にした。
すると、ベルゼーガはなにか返答に窮した様子で、口ごもりながら説明し始めた。
「これは……オリオスープと言って、様々な肉と数十種類の野菜を煮詰めて作ったスープです。とても栄養価が高く、滋養強壮に効果があるので舞踏会でダンスをした後などに供されることもあるのですよ。それと……」
ちらりと、意味ありげな目線を向けながら付け加える。
「ダンスの後、一晩のパートナーとなった男女が翌朝疲れ切っているところに提供されたりもします。これを飲めば昨晩の疲れが飛んでいくと、大変喜ばれるそうですよ」
「確かに、激しいダンスの後なら喜ばれるでしょうね。……ん?一晩のパートナー……?」
彼の話になにか引っかかるものを感じたマデリーヌは、目を細めながら意味深な微笑みを浮かべたままでいるベルゼーガを見つめ返した。
すると、耳元に顔を寄せられ湿った吐息と共に疑問の返答がマデリーヌの耳朶に吹き込まれる。
「……ベッドの上で恋人達が睦み合いながら舞い踊る、愛のダンスですよ」
――婉曲的な言い回しではあるが、それが男女の閨での交歓を意味していることこであることは、マデリーヌにも分かった。
要するに、ベルゼーガはこの恋人たちに元気と性の活力を与えるスタミナスープをマデリーヌに飲ませ、元気になってもらいたい……という意図があってのことらしい。
ベルゼーガに熱っぽい視線を向けられながら、マデリーヌは少し逡巡した後に意を決して彼の持つスープ皿に手を伸ばした。
「マ、マデリーヌ、何を……!?」
マデリーヌに手ずからスープを飲ませようとしていたベルゼーガは、いきなりスープ皿を奪われ驚いたように声を上げた。
澄んだ紅褐色のスープを一瞥すると、マデリーヌは器を掲げてそれを口元まで運んで口を付ける。
喉を鳴らしながら濃厚で美味なスープを嚥下し、マデリーヌは最後の一滴まで残さず飲み干したのだった。
「……んっ、ご馳走様でした。ベルゼーガ様の言うとおり、お腹にずっしりくるくらいとても濃厚で、美味しかったです。それになんだか……」
空になった器をテーブルに置くと、ベルゼーガの方に向き直る。
「身体が火照ってきちゃって……。ベルゼーガ様……さっきの続き、しませんか?」
ベルゼーガがゴクリと喉を鳴らす音がマデリーヌにも聞こえた。
彼への恋心に気付いてしまったマデリーヌは、もう淑女の慎みなど気にしないと決めたのだった。
彼の関心を、心を独占出来るならこの身体を使って籠絡することも厭わない――。
「マデリーヌ……それは、大胆過ぎるのではないですか……?」
マデリーヌの艶を帯びた視線に射すくめられ、床に縫い付けられたようにベルゼーガは動けなかった。
しかし、部屋の隅で二人のやり取りをずっと見ているであろうドリスの存在を思い出し、できうる限り冷静を装った声で彼女を呼びつけた。
「ドリス!テーブルの食事を片付けてくれないか。……終わったらしばらく席を外してくれ。マデリーヌと二人になりたいんだ」
ベルゼーガの呼びかけに、ドリスは早足で駆け寄るとすぐさま食事を片付け始めた。
黙々と食器をワゴンに片付け、テーブルを布巾で拭き終わるとドリスはベルゼーガとマデリーヌそれぞれに一礼した。
「それではいったん席を外しますが、ご用がございましたらすぐお声をおかけ下さい」
マデリーヌにお辞儀をする時、ドリスが一瞬諦めたような、なにか言いたげな表情をしたようにも見えたが、早足に退出する彼女の後ろ姿を見送ることで、マデリーヌは疑問を口にすることは叶わないのだった。
大食堂の扉が静かに閉まり、マデリーヌとベルゼーガだけが広い部屋に残された。
「マデリーヌ……」
気付いた時には目の前にベルゼーガが立っており、マデリーヌの姿を映したその目は血走り、心なしか息も荒くなっているようだった。
「こんな場所で私を誘惑するなんて、貴女はなんて罪な女でしょうか。可愛らしいその唇で私を求めてくるとは……。私は、貴女をッ……!」
荒々しい動きで身体に腕を回され、彼に担がれるようにされながらマデリーヌはテーブルの上に寝かされた。
マデリーヌをテーブルの上に横たえると、ベルゼーガはその上に覆い被さり、薄い寝間着を一気に剥ぎ取ってしまった。
「っきゃ!ベルゼーガ様、いや……こんなの恥ずかしいです……」
身体の線がくっきり浮き出てしまう申し訳程度の薄い寝間着も失い、マデリーヌは今や生まれたままの姿で羞恥に震えているのだった。
「恥ずかしい……?あんな挑発するような事を言っておきながら、今更恥ずかしがるのですか。さあ……私になんと言ったか、もう一度話してごらんなさい」
テーブルの上に全裸のまま押し倒され、ベルゼーガの荒い息に肌をくすぐられているこの状況では、マデリーヌは正常な思考で言葉を発することも叶わない。
「ベルゼーガ様……わたし……わたし……」
「まるで獣に仕留められた仔ウサギのようですね。あんなに煽っておいて今更怖じ気づくなんて……。私の可愛い獲物、決して逃がしはしませんよ……」
ベルゼーガが喉の奥でくつくつと笑う声を、マデリーヌは気が遠くなりそうになりながら聞いていたのだった。
このままでは、また彼女を獣のように貪ってしまうのではないか――
そんな昏い想いを振り払いながら、ベルゼーガはすっくと立ち上がると、つかつかとテーブルに歩み寄りまだ湯気が立つスープ皿を一つ手に取り、再度マデリーヌの側で膝を着く。
「マデリーヌ、貴女はまだ料理に一口も手を付けていませんでしたね。少しでもなにか食べなければ身体に障りますよ。さあ、これを」
そう言いながら、ベルゼーガは紅褐色のスープをスプーンで掬い、マデリーヌの口元まで運ぼうとする。
「ベルゼーガ様、これは……?」
紅褐色の透明な液体に視線を注ぎながら、マデリーヌは見慣れない食べ物だなと首を傾げながら疑問を口にした。
すると、ベルゼーガはなにか返答に窮した様子で、口ごもりながら説明し始めた。
「これは……オリオスープと言って、様々な肉と数十種類の野菜を煮詰めて作ったスープです。とても栄養価が高く、滋養強壮に効果があるので舞踏会でダンスをした後などに供されることもあるのですよ。それと……」
ちらりと、意味ありげな目線を向けながら付け加える。
「ダンスの後、一晩のパートナーとなった男女が翌朝疲れ切っているところに提供されたりもします。これを飲めば昨晩の疲れが飛んでいくと、大変喜ばれるそうですよ」
「確かに、激しいダンスの後なら喜ばれるでしょうね。……ん?一晩のパートナー……?」
彼の話になにか引っかかるものを感じたマデリーヌは、目を細めながら意味深な微笑みを浮かべたままでいるベルゼーガを見つめ返した。
すると、耳元に顔を寄せられ湿った吐息と共に疑問の返答がマデリーヌの耳朶に吹き込まれる。
「……ベッドの上で恋人達が睦み合いながら舞い踊る、愛のダンスですよ」
――婉曲的な言い回しではあるが、それが男女の閨での交歓を意味していることこであることは、マデリーヌにも分かった。
要するに、ベルゼーガはこの恋人たちに元気と性の活力を与えるスタミナスープをマデリーヌに飲ませ、元気になってもらいたい……という意図があってのことらしい。
ベルゼーガに熱っぽい視線を向けられながら、マデリーヌは少し逡巡した後に意を決して彼の持つスープ皿に手を伸ばした。
「マ、マデリーヌ、何を……!?」
マデリーヌに手ずからスープを飲ませようとしていたベルゼーガは、いきなりスープ皿を奪われ驚いたように声を上げた。
澄んだ紅褐色のスープを一瞥すると、マデリーヌは器を掲げてそれを口元まで運んで口を付ける。
喉を鳴らしながら濃厚で美味なスープを嚥下し、マデリーヌは最後の一滴まで残さず飲み干したのだった。
「……んっ、ご馳走様でした。ベルゼーガ様の言うとおり、お腹にずっしりくるくらいとても濃厚で、美味しかったです。それになんだか……」
空になった器をテーブルに置くと、ベルゼーガの方に向き直る。
「身体が火照ってきちゃって……。ベルゼーガ様……さっきの続き、しませんか?」
ベルゼーガがゴクリと喉を鳴らす音がマデリーヌにも聞こえた。
彼への恋心に気付いてしまったマデリーヌは、もう淑女の慎みなど気にしないと決めたのだった。
彼の関心を、心を独占出来るならこの身体を使って籠絡することも厭わない――。
「マデリーヌ……それは、大胆過ぎるのではないですか……?」
マデリーヌの艶を帯びた視線に射すくめられ、床に縫い付けられたようにベルゼーガは動けなかった。
しかし、部屋の隅で二人のやり取りをずっと見ているであろうドリスの存在を思い出し、できうる限り冷静を装った声で彼女を呼びつけた。
「ドリス!テーブルの食事を片付けてくれないか。……終わったらしばらく席を外してくれ。マデリーヌと二人になりたいんだ」
ベルゼーガの呼びかけに、ドリスは早足で駆け寄るとすぐさま食事を片付け始めた。
黙々と食器をワゴンに片付け、テーブルを布巾で拭き終わるとドリスはベルゼーガとマデリーヌそれぞれに一礼した。
「それではいったん席を外しますが、ご用がございましたらすぐお声をおかけ下さい」
マデリーヌにお辞儀をする時、ドリスが一瞬諦めたような、なにか言いたげな表情をしたようにも見えたが、早足に退出する彼女の後ろ姿を見送ることで、マデリーヌは疑問を口にすることは叶わないのだった。
大食堂の扉が静かに閉まり、マデリーヌとベルゼーガだけが広い部屋に残された。
「マデリーヌ……」
気付いた時には目の前にベルゼーガが立っており、マデリーヌの姿を映したその目は血走り、心なしか息も荒くなっているようだった。
「こんな場所で私を誘惑するなんて、貴女はなんて罪な女でしょうか。可愛らしいその唇で私を求めてくるとは……。私は、貴女をッ……!」
荒々しい動きで身体に腕を回され、彼に担がれるようにされながらマデリーヌはテーブルの上に寝かされた。
マデリーヌをテーブルの上に横たえると、ベルゼーガはその上に覆い被さり、薄い寝間着を一気に剥ぎ取ってしまった。
「っきゃ!ベルゼーガ様、いや……こんなの恥ずかしいです……」
身体の線がくっきり浮き出てしまう申し訳程度の薄い寝間着も失い、マデリーヌは今や生まれたままの姿で羞恥に震えているのだった。
「恥ずかしい……?あんな挑発するような事を言っておきながら、今更恥ずかしがるのですか。さあ……私になんと言ったか、もう一度話してごらんなさい」
テーブルの上に全裸のまま押し倒され、ベルゼーガの荒い息に肌をくすぐられているこの状況では、マデリーヌは正常な思考で言葉を発することも叶わない。
「ベルゼーガ様……わたし……わたし……」
「まるで獣に仕留められた仔ウサギのようですね。あんなに煽っておいて今更怖じ気づくなんて……。私の可愛い獲物、決して逃がしはしませんよ……」
ベルゼーガが喉の奥でくつくつと笑う声を、マデリーヌは気が遠くなりそうになりながら聞いていたのだった。
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