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後日談
路地裏の思い出!!
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――彼女の瞳の真相……。
不意を突かれてギュッと抱きしめられた。
瞳を潤わせたその視線は翠を釘付けにしてならないが、振りほどこうにも無理な話である。
否、どんどん心がどういうわけか熱くなってくるのだ。
「ねぇ、翠……わかる? このドキドキする気持ち。」
「わかるようなわからないような……。」
思い出そうにもどうにもこの胸の熱さは思い出せそうにない。
過去に何度か経験があるかのような物なのだが、明確になんなのか答えることもできない霧のような感覚に悩む翠。
「それじゃぁ、これは?」
彼女はポケットからひとつのあるものを取り出しては翠に手渡す。
布のようなもので少し固くて……。
それを見た翠は海凛の顔を見つめた。
「なっ、これは……!?」
七色の生地で彩られたその御守りは、翠の記憶を引き出すのに充分な要素である。
翠は恐る恐るその確信のない言葉を口にした。
「もしかして……め、女神……様?」
海凛はニッコリと優しそうな顔で翠を再び見つめては、もう少し強く抱きしめた。
きっと嬉しかったのだろう。
「思い出してくれて私嬉しいなぁ。」
「忘れるもんかよ……。」
翠も強く抱きしめ返しては胸の突っかかった熱い心拍数も収まってきた気がした。
しかし、七曜神の女神様は全員で八人が限度なのだがいったい誰なのか不思議でたまらない。
けど、そんな疑問も女神様にはお見通し。
「七曜神って元々は十曜神だったの。」
「だからか……なんか靴がやたらとたくさんあったけど、その一つが海凛さんのだったんだね。」
よく思い返せばあの青っぽい靴は彼女が今履いてるものと同じものであり納得がいく。
「私はね、【海曜神】って言うの。 他の二人は【天曜神】と【冥曜神】っていう翠がまだあった事のない私がいるの。 まぁ、会う機会はここじゃないと思うけど……、というより会わせないよ、独り占めしたいもん。」
例え同じ女神様であり同一人物だとしても翠は渡さないという気持ちは、きっと今思うと七曜神全員にあったのではないかと思う。
ちょっとだけみんなに悪い気もするけど、今は海凛を見つめては愛する。
――長いような短いような時が流れた……。
元々今日はあまり良い天気ではないため、軽く小雨がポツリと二人の頬を濡らし始める。
それに気がついた翠は空を見上げては大降りになりそうな予測を立て、家路に急ぐ気持ちがわいて出てくる。
「そろそろ帰らなきゃ。」
「やだっ、翠と今は一緒が良いな……。」
離してくれない彼女の頭を優しく撫でてあげる。
どうしてこうも女神様はみんなわがままが激しいのだろうと思うも、それが彼女たちの特徴であり翠も悪くは思ってもない様子。
「困ったな、どうするかな。」
「私のお家に遊びに来てよ、帰れなくなったら泊まれば良いし。」
軽々とそんな発言をされても困るのと翠はいつものムチャぶりの女神様のわがままに付き合おうとするも、その瞳は本気である。
しかし、翠は両親がいるし迷惑をかけることは一切許されない。
「俺にはお父さんもお母さんも居るし、迷惑をかけ………おっと?」
その時、端末の着信がブルルッと鳴り響いた。
誰からかと言うとお母さんからであり、その応答に耳を済ませた。
「もしもし? 翠だけど……お母さんどうかした?」
【あぁ、翠? ちょっとお父さんが忘れ物をしたけど取りに行けなくて、私が書類を持っていかなきゃならなくなったの。 だから今日は一人でお留守番できる? 明日の二十一時には帰ってこれるけど。】
「はぁー……お父さんはおっちょこちょいだなぁ。 まぁ、俺だって高校生だし一人でお留守番できない訳じゃないからさ、そんなに俺に気を使わなくてもね。」
【でも……、まぁ、机の上に三千円は置いておいたから何か食べるのよ? 三食きちんとよ、良い? わかったわね、あ……電車の時間だから切るわね、プッ……。】
忘れていたがお父さんの出張が今日なのを忘れていた。
しかし、彼女は腹黒い笑みを見せては翠を見つめては、頭をグリグリと胸板に押し付けては嬉しそうな顔をする。
「まさか……これって、偶然じゃ?」
「私は女神様だよ? わがままな、自分の思い通りに何もかもできる……ね。」
翠はニンマリと口を三日月のように上げては腹黒い笑みを同じく見せては一旦海凛を引き剥がしては、手を繋ぐ。
その暖かい手を離さまいと。
「じゃ、私の家に出発ーっ!!」
「楽しくなりそうだな……。」
こちらの世界にも大切なものはきちんと存在し、自分のいきる人生の意味と大切なものを見つけてしまった。
だからもう現実がつまらないなんて思うこともないだろう。
学校の鞄の横に揺れる七曜の御守りが軽く揺れながら、そんな二人を祝福したように気づかない程度にほんの少し淡く輝いた。
【FIN】
不意を突かれてギュッと抱きしめられた。
瞳を潤わせたその視線は翠を釘付けにしてならないが、振りほどこうにも無理な話である。
否、どんどん心がどういうわけか熱くなってくるのだ。
「ねぇ、翠……わかる? このドキドキする気持ち。」
「わかるようなわからないような……。」
思い出そうにもどうにもこの胸の熱さは思い出せそうにない。
過去に何度か経験があるかのような物なのだが、明確になんなのか答えることもできない霧のような感覚に悩む翠。
「それじゃぁ、これは?」
彼女はポケットからひとつのあるものを取り出しては翠に手渡す。
布のようなもので少し固くて……。
それを見た翠は海凛の顔を見つめた。
「なっ、これは……!?」
七色の生地で彩られたその御守りは、翠の記憶を引き出すのに充分な要素である。
翠は恐る恐るその確信のない言葉を口にした。
「もしかして……め、女神……様?」
海凛はニッコリと優しそうな顔で翠を再び見つめては、もう少し強く抱きしめた。
きっと嬉しかったのだろう。
「思い出してくれて私嬉しいなぁ。」
「忘れるもんかよ……。」
翠も強く抱きしめ返しては胸の突っかかった熱い心拍数も収まってきた気がした。
しかし、七曜神の女神様は全員で八人が限度なのだがいったい誰なのか不思議でたまらない。
けど、そんな疑問も女神様にはお見通し。
「七曜神って元々は十曜神だったの。」
「だからか……なんか靴がやたらとたくさんあったけど、その一つが海凛さんのだったんだね。」
よく思い返せばあの青っぽい靴は彼女が今履いてるものと同じものであり納得がいく。
「私はね、【海曜神】って言うの。 他の二人は【天曜神】と【冥曜神】っていう翠がまだあった事のない私がいるの。 まぁ、会う機会はここじゃないと思うけど……、というより会わせないよ、独り占めしたいもん。」
例え同じ女神様であり同一人物だとしても翠は渡さないという気持ちは、きっと今思うと七曜神全員にあったのではないかと思う。
ちょっとだけみんなに悪い気もするけど、今は海凛を見つめては愛する。
――長いような短いような時が流れた……。
元々今日はあまり良い天気ではないため、軽く小雨がポツリと二人の頬を濡らし始める。
それに気がついた翠は空を見上げては大降りになりそうな予測を立て、家路に急ぐ気持ちがわいて出てくる。
「そろそろ帰らなきゃ。」
「やだっ、翠と今は一緒が良いな……。」
離してくれない彼女の頭を優しく撫でてあげる。
どうしてこうも女神様はみんなわがままが激しいのだろうと思うも、それが彼女たちの特徴であり翠も悪くは思ってもない様子。
「困ったな、どうするかな。」
「私のお家に遊びに来てよ、帰れなくなったら泊まれば良いし。」
軽々とそんな発言をされても困るのと翠はいつものムチャぶりの女神様のわがままに付き合おうとするも、その瞳は本気である。
しかし、翠は両親がいるし迷惑をかけることは一切許されない。
「俺にはお父さんもお母さんも居るし、迷惑をかけ………おっと?」
その時、端末の着信がブルルッと鳴り響いた。
誰からかと言うとお母さんからであり、その応答に耳を済ませた。
「もしもし? 翠だけど……お母さんどうかした?」
【あぁ、翠? ちょっとお父さんが忘れ物をしたけど取りに行けなくて、私が書類を持っていかなきゃならなくなったの。 だから今日は一人でお留守番できる? 明日の二十一時には帰ってこれるけど。】
「はぁー……お父さんはおっちょこちょいだなぁ。 まぁ、俺だって高校生だし一人でお留守番できない訳じゃないからさ、そんなに俺に気を使わなくてもね。」
【でも……、まぁ、机の上に三千円は置いておいたから何か食べるのよ? 三食きちんとよ、良い? わかったわね、あ……電車の時間だから切るわね、プッ……。】
忘れていたがお父さんの出張が今日なのを忘れていた。
しかし、彼女は腹黒い笑みを見せては翠を見つめては、頭をグリグリと胸板に押し付けては嬉しそうな顔をする。
「まさか……これって、偶然じゃ?」
「私は女神様だよ? わがままな、自分の思い通りに何もかもできる……ね。」
翠はニンマリと口を三日月のように上げては腹黒い笑みを同じく見せては一旦海凛を引き剥がしては、手を繋ぐ。
その暖かい手を離さまいと。
「じゃ、私の家に出発ーっ!!」
「楽しくなりそうだな……。」
こちらの世界にも大切なものはきちんと存在し、自分のいきる人生の意味と大切なものを見つけてしまった。
だからもう現実がつまらないなんて思うこともないだろう。
学校の鞄の横に揺れる七曜の御守りが軽く揺れながら、そんな二人を祝福したように気づかない程度にほんの少し淡く輝いた。
【FIN】
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