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第2章【月曜の荒野《夜朧》】

聖奈は私の嫁です

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 夢の中にまで干渉してささやいて起こしてくれるとは聖奈の声は天使なのか?
 いや実際彼女にこんな能力は備わってはいないが、たとえばなしで言うとそんな感じ、私を優しく起こしてくれる。
 どこぞのチビッ子の結愛といつもワイルドな玄弥の【自称・起こしたが起きなかった】とは違ってな。

「朝ですよ、もちろんご飯もできていますからね?」

 目を開けるともちろん眼前には微笑んだ聖奈が私を迎えてくれるが、もう七曜神のそのものは聖奈で良いんじゃないかって思えるけどみんなはどう?
 それでもって結愛は月曜神って事で……あ、それはダメか。
 夜朧が一瞬で崩壊しそう、やっぱりナシで。

「それにしても……朝御飯の香り? いい香りだぁ。」

 ついつい私の声が漏れるが本音。
 朝食は和食がメインの彼女にとって理想のものだと言えよう。
 洋食ばかり最近食べる私にとってはこういうものが時として嬉しく感じるときがあって事さ。
 なんと言うかこう、実家のような安心感って言えばわかるんじゃないかな?

 まあ、それもそうだろうな。
 少量ながらも炊きたての白米に塩鮭、納豆に卵焼きとほうれん草のおひたし……実にパーフェクトな組み合わせのテンプレ的な王道朝食。
 でも実際にこのメニューで食べたらとても満足できるはずなのは保証しよう、それだけは確実に言える。

 根拠は自分の血筋に聞いてみることだな……そう、【じゃぱにぃず魂】とはそう言うものなのさ。
 この魂をもって生まれてきたことに感謝するんだぞ?

「とりあえず冷めたら元も子もないな、いただきます。」

「どうぞ、召し上がれ。」

 塩鮭をまずは一口いただくが、ガツンと強い塩味が来るがこれまた白米とよく相性が合うんだ。
 って、ん?
 この肌に伝わる感覚はまさかだ、聖奈も勘づいたのか一瞬でハッとした表情に変わったのがわかる。

「よぉ、おはようさんだ。 朝風呂入りに来たんだぜっ……と。」

 あちゃー、雰囲気ぶち壊すようで悪いが今はお呼びじゃない。
 夫婦の朝飯を邪魔してくれるな。
 お風呂のセットをガチャガチャと我が家ヅラして入ってきてさぁ。

 こっ、言葉のアヤだ……本当の夫婦じゃないッ!!
 第一に女同士だからな?

 とりわけ私はジトーっと玄弥をにらみ返してやるんだが悲しいかな、それを逆に利用するのが玄弥と言う男だ。

 わかるだろう?
 彼の天然な正確に勝てる女など数えるほどでしかなく、普通の女でしかない私は彼の手のひら翻弄され遊ばれるような運命だ。
 それも悪くなくて良いが、なんかなぁ……頭がモヤモヤするんだよ。

「それともお前らも一緒に入るか?」



 なっ、玄弥はいったい何を言い出すんだ!?



 危うく聖奈の顔面に味噌汁を噴飯する所だったぞ。
 とりあえず彼の言葉に悪意はない……彼もまた七曜神の一柱なのだ。
 たとえ男の肉体を持っていたとしても女性と一緒に入るのを躊躇わない天然な発言だし、それに何の疑問を持たないのが厄介な思考だよ。

「い、いえ……私は先程入ったばかりですから。」

 聖奈は頬を紅潮させながらうつ向いてしまうが、いやはや彼女は当たり前の反応をしているのだ……聖奈はなにも悪くない、それどころか玄弥ですら故意に言ってる訳じゃないから悪いと認識する以前の問題なのだから。

「んじゃぁよ、入らせてもらうぜ。」

 誰も一緒に入らないとわかると玄弥は地下の扉をパカーンと開けると階段を開けて降りていってしまうが、飯を食べているときにムワッと湯気の香りを嗅がされるこちらの気にもなってみろ。
 別にいいんだけどさ。



 ……そう言えば聞きたいことがあるのだが、これを聞いてもいいのだろうか?
 否、私だからこそ聞かなくてはならないことなのだッ!!
 だがな、私もまた女としてなのだから許せよ聖奈よ。

「聖奈はもし朝風呂入ってなかったら、あの玄弥のお誘いは受け入れるタイプなのか?」

「ふぇええっ!?」

 やはり私の質問にかなりの驚きを示しているが私もこれを逆に質問されたら同じ反応をせざるを得ないかもしれないな。
 とりあえずこういう反応をしてくれて助かるよ、すんなり受け入れたら私ビックリしちゃうだろ?
 聖奈が1枚先を行く……じゃなくて、何となく彼と2人っきりにさせると厄介なのは聖奈と天音が一番危なっかしいんだ。

 羨ましい訳じゃない。
 決してな。

「けど、強引に甘い声で抱き締められて誘われたら……私は、私はどうなってしまうのでしょう。」

 あぁ、そのシチュエーションはヤバイ……考えただだけでも鼻血ものだ。
 これで拒めるはずがないが、いかんせん玄弥はこんなことを意図的にしないのがまた本性だ。
 わかってるのかわかってないのかその辺りは不明だがな。
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