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第2章【月曜の荒野《夜朧》】
重機で過去を引き剥がせ
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玄弥が風呂で溺れてるんじゃないかと言うほど無駄に長い時間が経過したみたいだが、いかんせん時間にキッチリな聖奈がいるからおサボりよろしく玄弥待ちという名目は早々にぶっ潰された。
現場にさっさと行きましょうってあんなに笑顔だと断るに断れないじゃないか。
集落の中心には何やら似つかわしくないモノがドーンっと鎮座しているが私の眼がおかしく……いや、なってないのだな。
ブルドーザーにクレーン車、ロードローラーなど見えるが幻覚ではなく全て本物であり、よく見ると誘導棒を持ってる人や運転席には清みわたるような海や空の青色とりどりの作業員が見えるってことはまさか、時雨の地区の民の応援が来たってことになるなッ!!
聖奈もどこかソワソワとして落ち着かない様子になるがわからなくもないんだ。
それもそのはず、唯一夜朧が交流を持つのが時雨の民なのだからお互い仲良し子よしなのさ。
そう、そして会いたい人が見つかるまで時間だってかからないものなんだ……何たってお互い全員繋がっているんだからね。
「あっ、聖奈さぁ~んっ!!」
中学生くらいの青髪少女が遠くで手を振っているのが私の目にも確認できたその瞬間、聖奈はパァッと今までにないくらい笑顔が輝き大人げなく駆け足で……和服や袴などお構いなしで走る。
会いたいという思いはとても素敵だな、悔しいが恵麻には聖奈の夫の座が似合……まぁ、と言っても女同士だが彼女を深く理解できる存在なのだからな。
くどいようで悪いが自己紹介はさせてくれ、言わなくてももう誰が誰だかわかるだろうがこの人こそ【水曜神の棟方 恵麻】である。
ショートカットにして少し背丈を縮めた聖奈みたいで可愛いだろ、私もお気にいりだからな。
まったくイジりがいのあるオモチャ……こ、こほんっ!!
……何でもない、聞かなかったことにしてくれ……じゃないとこの鎌で首が飛ぶからな?
「あぁっ、恵麻様……よくぞいらしてくれました!!」
聖奈が嬉しそうに駆け寄っては犬のように、だがこうしてみれば姉妹のようなものだなぁ……まぁ顔似てるから当たり前と言えばそうなるが、その前に恵麻もやることがあるんじゃないのか?
指揮する人がいないから重機が止まってしまったぞ?
「せ、聖奈さんっ……また後でにしましょうね。 今はちょっと忙しくてお話しできにくいタイミングでして。」
「えぇ、構いませんよ。」
ハッとした表情で我に帰り名残惜しそうにそういうと恵麻はまた忙しなく誘導棒を指示しては重機を巧みに導いて行く。
ふむ、水や氷を操るだけが取り柄かと思ったらこういうこともできるんだな……発知りだわ。
いや、バカにしてる訳じゃないんだ……見直したというべきか。
ショベルカーがバキバキと音を立てながら相変わらずのボロ小屋がたくさん破壊してゆき、その端材をトラックに積んではどこかに回収されて行く様子が広場で確認できるが住人たちの元々の愛した小屋なのだ……破壊されて変わり果てる我が家を不安そうに見つめる。
持ち運び忘れたモノが残っていたら大変だ……とか、複雑な思いはあるだろうがそこは自己責任で頼む。
元々寂れた場所だったから更地になるのにはそう時間はかかるはずもなく、一面重機と資材が置いてあるだけの荒れ地となっている。
次に土を指定された通りに溝を掘っては水道管を設置する作業が始まろうとしているがそこは恵麻、プロというか職人顔で皆に指示を出す姿はカリスマとも言えよう。
さすが時雨の区域の長の名前は伊達じゃない。
「みなさん急いでっ、今日中には完成させるんですからね!! 指定置にパイプを接続っ、ファイトですよーっ!!」
私は息を飲む。
だってハッキリと言うなれば恵麻は昔から弱虫で泣き虫、優柔不断でオドオドしてて……まるでダメダメな駄女神のテンプレだというのに、専売特許が絡むと途端に覚醒するんだ。
恵麻も結愛と同じ存在、高らかに右手の人差し指を天に向けビシィッっと……左手は腰に添えて。
さぁ、夜朧の文明に水道を!!
現場にさっさと行きましょうってあんなに笑顔だと断るに断れないじゃないか。
集落の中心には何やら似つかわしくないモノがドーンっと鎮座しているが私の眼がおかしく……いや、なってないのだな。
ブルドーザーにクレーン車、ロードローラーなど見えるが幻覚ではなく全て本物であり、よく見ると誘導棒を持ってる人や運転席には清みわたるような海や空の青色とりどりの作業員が見えるってことはまさか、時雨の地区の民の応援が来たってことになるなッ!!
聖奈もどこかソワソワとして落ち着かない様子になるがわからなくもないんだ。
それもそのはず、唯一夜朧が交流を持つのが時雨の民なのだからお互い仲良し子よしなのさ。
そう、そして会いたい人が見つかるまで時間だってかからないものなんだ……何たってお互い全員繋がっているんだからね。
「あっ、聖奈さぁ~んっ!!」
中学生くらいの青髪少女が遠くで手を振っているのが私の目にも確認できたその瞬間、聖奈はパァッと今までにないくらい笑顔が輝き大人げなく駆け足で……和服や袴などお構いなしで走る。
会いたいという思いはとても素敵だな、悔しいが恵麻には聖奈の夫の座が似合……まぁ、と言っても女同士だが彼女を深く理解できる存在なのだからな。
くどいようで悪いが自己紹介はさせてくれ、言わなくてももう誰が誰だかわかるだろうがこの人こそ【水曜神の棟方 恵麻】である。
ショートカットにして少し背丈を縮めた聖奈みたいで可愛いだろ、私もお気にいりだからな。
まったくイジりがいのあるオモチャ……こ、こほんっ!!
……何でもない、聞かなかったことにしてくれ……じゃないとこの鎌で首が飛ぶからな?
「あぁっ、恵麻様……よくぞいらしてくれました!!」
聖奈が嬉しそうに駆け寄っては犬のように、だがこうしてみれば姉妹のようなものだなぁ……まぁ顔似てるから当たり前と言えばそうなるが、その前に恵麻もやることがあるんじゃないのか?
指揮する人がいないから重機が止まってしまったぞ?
「せ、聖奈さんっ……また後でにしましょうね。 今はちょっと忙しくてお話しできにくいタイミングでして。」
「えぇ、構いませんよ。」
ハッとした表情で我に帰り名残惜しそうにそういうと恵麻はまた忙しなく誘導棒を指示しては重機を巧みに導いて行く。
ふむ、水や氷を操るだけが取り柄かと思ったらこういうこともできるんだな……発知りだわ。
いや、バカにしてる訳じゃないんだ……見直したというべきか。
ショベルカーがバキバキと音を立てながら相変わらずのボロ小屋がたくさん破壊してゆき、その端材をトラックに積んではどこかに回収されて行く様子が広場で確認できるが住人たちの元々の愛した小屋なのだ……破壊されて変わり果てる我が家を不安そうに見つめる。
持ち運び忘れたモノが残っていたら大変だ……とか、複雑な思いはあるだろうがそこは自己責任で頼む。
元々寂れた場所だったから更地になるのにはそう時間はかかるはずもなく、一面重機と資材が置いてあるだけの荒れ地となっている。
次に土を指定された通りに溝を掘っては水道管を設置する作業が始まろうとしているがそこは恵麻、プロというか職人顔で皆に指示を出す姿はカリスマとも言えよう。
さすが時雨の区域の長の名前は伊達じゃない。
「みなさん急いでっ、今日中には完成させるんですからね!! 指定置にパイプを接続っ、ファイトですよーっ!!」
私は息を飲む。
だってハッキリと言うなれば恵麻は昔から弱虫で泣き虫、優柔不断でオドオドしてて……まるでダメダメな駄女神のテンプレだというのに、専売特許が絡むと途端に覚醒するんだ。
恵麻も結愛と同じ存在、高らかに右手の人差し指を天に向けビシィッっと……左手は腰に添えて。
さぁ、夜朧の文明に水道を!!
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