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第4章【水曜の湖畔《時雨》】

テツニマミレタ……ユキトコオリト

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 細やかな氷がより一層と太陽の輝きを放ち、居眠りしていたのだろうか、軍曹の視界に明るみが感じ取られた。
 そうして、聞き覚えのある少女の声が私を目覚めさせる。

 軽くあくびをしたあと周りを見渡すと砦を製作している真っ最中、雪に寝そべってはどうにもラーメンを食べたあと眠くて休憩時間は昼寝に費やしてしまったみたいなのだ……軍曹はうっかりさんとよく言われるのだぞ。
 とりあえず満腹で重くなった身体をゆっくり起こすともう少し寝ていたい気分もあるがここは頑張り所となれば気合いを入れて頑張る他はないと思う。

 だが思えばどうすれば良いのかてんでわからないような気がしたような……しないような?
 いや、考えるだけヤボみたいだから気にしたら負けっておにーさんが言ってたはず。

「と言うわけで、軍曹には今からアイスキューブを作るための特訓をするわ!!  まぁー感じたままにやるだけだから……ほら、指にこのリングをはめてちょうだいっ!!」

「これは指輪? とりあえず装着してみるのだぞ。」

 そうして右手の薬指にお互いはめた瞬間だった、身体の中で例えようのない凄まじいエネルギーがグルグルと渦巻いているのが直感的にだが感じ取れた。
 そのエネルギーが曜力であることも、自分の感じる普段のグルグルよりも爆発的に大きな感覚というのが結愛の物であると言うことも……言わなくても理解できる。

「これは、結愛と同じ感覚なのか?」

「ふふんっ、そのリングを身に付けるとホスト側の身体の感覚を共有することができるのっ!! 恋……まぁ、知り合いの天才に作って貰ったのよ!!」

 自分で作ったわけでも無いのにドヤァってされても困り者だが、その知り合いとやらは私達の世界には存在しない技術を持っていて驚くに驚けないな。
 とりわけこれで何がしたいのかの意図はもう充分にわかったから早くやってみてくれってゾクゾクが止まらない。

「今から結愛がアイスキューブを作るからその感覚を覚えれば良いって寸法さ。 なぁに、1度乗れるようになった自転車は乗り方を忘れないのと同じ原理。 身体と本能に刻ませるだけさ。」

 冥綾の言うことには納得。
 だがこのリングをつけてる間は身体がこそばゆいと言うかくすぐったいと言うか、こんな不思議な感覚は初めてだからそう簡単に慣れるものじゃない……何たって2つの身体と意識があるみたいで若干怖いけどここは身を任せた方が確実なのは明白。

 そして結愛が両手に力を集中させた時、私の両手をにも同じ感覚が流れ込んでくる。



 ……なるほど、この感覚なのだな? 1度覚えれば簡単なんだぞ!!



 自分の手でアイスキューブが完成していくのに強い達成感が込み上げてきてとても嬉しい。
 早くリングを取って自分の力でたくさん作って皆の役に立ちたいって……でも結愛が苦笑いしてる様子を見ると考えてることもお見通しで何だか恥ずかしいんだぞ。

 俗に言う【顔から火が出る】だがここなら火も操れる体質になれればできそうなのは分かるけど、実際顔面から火を出したらいろいろと危なそう。

「軍曹はせっかちね!! さて、リングを取ってあとは自主練習よ!!」

「はははっ、自主練習の必要もないぞ!! 何たってこの通りなんだ……ぞ!?」

 早速リングを外しては今覚えた感覚を便りにアイスキューブの錬成を始める。
 手に伝わる感覚、よしっ……そう思っていたんだが出来上がったのは小さなアイスキューブ。

「ち、小さ……。 けどミニチュアで可愛い~っ!!」

 普通のは1辺が1メートルなのに対して私のはその半分の50センチと普通じゃない。
 それでも悲しんでいられない、と言うか出来た喜びが大きすぎてこの気持ちが爆発しそうなほど。
 これはこれで上等、自分では満点をあげたいんだぞ。

「確かに小さい、それでもだ……軍曹はやりとげたんだぞ!! 出来たんだぞ!!」

「へぇ、やるじゃない……見直したわ。」

 あの智美が頭を撫でてくれた……母親に頭を撫でられて褒められたがごとく、その温かさは忘れることはないだろう。
 となると軍曹も皆と混じって砦の製作に全力を尽くし汚名返上、反撃といくんだぞ!!
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