日々是成長・HDリマスター(本編の少し前のお話)

９月５日

９月５日。
国宝ならぬ地方宝。














   七刻の歴史の内、風見にはこんな伝承が残っていると記されている。

   風見の民は風や植物といった物を操ることができるのは常識の通りだが、なぜかメロンだけは木曜力をどれだけ注ごうが成長することはなく、自力で育て上げることしか収穫への道は今のところ確認されていない。
   木曜を司る女神様はなんでも大好物だが、もちろんメロンもお気に入りの彼女はこれを量産しようと毎年試行錯誤で頑張っており、今年の収穫したメロンのグラフを見ては頷いている。

 「なるほどなるほどーっ！」

   七刻に流通してる八割のメロンは風見産で残りの二割は陽光産であり、メロンは風見にとって絶大な収入源であるには変わりはなく、売上のグラフを見つめてはニッコリと御満悦の女神様。
   偶然なのだろうか、風見の民の髪の毛の色は当たり前だが自然を彷彿させる緑色で、瞳の色はといわれると橙色。
   緑と橙の二色でメロンのカラーなのは偶然なのかは神の溝すら知らないもの。

 「へへっ、メロン様様なんだぜ。」

   木曜を司る神はもう一人存在することはご存じであろうか？
   彼女と同じ因子を持ちながらにして、また別な思考を持つ特別な存在の彼は、当然風見の神であるために民と同じ緑色の髪が生えてるのだが、瞳の色だけはなぜか橙色ではなく紅いのである。
   真っ赤に燃えるような瞳はグラフを穿つような視線で見つめては至極御満悦。

 「メロンリキュールでも造ってみるかっ、きっと美味しいこと間違い無しだ。」

 「おおおっ、私も飲みたいっ！」

   揺れる緑色の髪の毛、言わずと知れたこの両者は菊花と玄弥の二人であり、彼女や彼にこの伝承を知っているかと聞いても知らないと一蹴されそうなのは目に見えている。
  七刻の七つの地方の民にも色々な伝承が残っていると言い伝えられている為、結愛に聞いてみるのも良いかもしれないが、それはまたいつかの出来事で。

 「けど、メロンリキュールってどうやって造るの？」

 「知らねぇから調べに行くかっ！」

   玄弥は会社の情報処理の部屋に菊花を連れて何やら製作の準備に取りかかるようで、大切なメロンで造る至高の一杯を求めて彼と彼女の覇道の一歩はまたしてもここから始まる。
   さてさて、どうなるのかはこれこそ神のみぞしる。














ジューシーなメロンに食らいつくだけでも幸せのひとときを実感できるものだ。