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9月6日
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9月6日。
汚れて綺麗になるもの。
岩動の温泉の中で女性に人気が高いのは以外にも泥の温泉であることはご存じであろうか?
土曜力が溶け込んだ栄養豊富な泥は美肌を作るために一役かっており、連日大にぎわいとなっているほど。
「あー……すげぇなぁ。」
頭にタオルを乗せ、その上に桃子が作った泥団子をバランスよく保ちながら玄弥は幸せそうにお湯に浸かっている。
「お風呂の中に……泥がある、これを掬ってみる。」
白濁と濁ったお湯にはベッタリドロドロな泥が沈殿しており、自由に使ってもよろしいものなのだ。
桃子は玄弥の顔に塗り塗りと塗り潰してゆくも、表情ひとつ変えずに相変わらず幸せそうなのだから、温泉で満足してくれることに生きがいを感じるのは嬉しいが、智美と同じように他人にイタズラをして喜ぶ性格なのだから、複雑な気持ち。
「これが美容効果ねーっ。」
菊花も温泉に浸かっているものの、見れば見るほどゾッとする。
頭全体を泥で覆って、まるで頭が泥の球体に変わっているかのようにしか見えないのだから、無理もないだろう。
「き……菊花? 呼吸は大丈夫なの?」
「私は無呼吸でも平気だからねっ。」
常識に囚われない女、菊花はドヤっとした表情を泥の中に隠して胸を張る。
もちろん、体の構造がデタラメじみたものなので口が塞がってようが正確な発音ができるのも彼女の強み。
「はぁ、酒がうまい。 やはり夜中の時間に入る風呂の雰囲気は格別だ。」
玄弥はポータルから焼酎を取り出すと瓶のままラッパで飲みだしては、露天風呂から覗く満月に酔いしれている。
夜中の二時とあらば本来は旅館のお客もスタッフも入ることは許されないもので、七曜神を冠するものだけの特別な特権なのだから、雰囲気がロマンチックなのも無理はないだろう。
「私も飲むよ。」
菊花は玄弥の瓶を拝借しては、泥団子に瓶が突き刺し喉元にゴクリゴクリと音をたてながら焼酎が流し込まれる。
それを見て二人は菊花らしいと苦笑いするものの瞬時に岩の縁に腕を伸ばしてはリラックスし、菊花の寝息が即座に聞こえてくる。
「あらら……寝ちゃったわ、まぁいいわ。」
「寝顔が見れないのが残念ね……。」
玄弥の顔を見合わせるも、お酒を飲んでいないはずの桃子の顔はほんのりと赤い。
風呂の温かさで血の巡りが良くなったのひとつの例ではあるが、それとはまた別なものだと桃子の心にドキドキが流れ込んでくるのだ。
「ふ、二人きり……ね。」
夜中の誰も来るはずのない露天風呂に二人、ロマンチックなのも雰囲気に包まれるも玄弥には桃子の特有の小声は耳に入らない。
わかりきったことだから言ったわけである。
「んぁ? 何か言ったか?」
「月が綺麗ね……って。」
桃子はそう伝えると、空を見上げては満月を見つめて軽くため息をついたのち、玄弥から少し距離をおいて風呂に浸かってゆく。
玄弥は酒と夜風とお湯の三種に包まれては幸せそうであったとさ。
夜中の温泉は格別である。
誰もが知り得ぬ空間へ飛び込んでみたいものである。
汚れて綺麗になるもの。
岩動の温泉の中で女性に人気が高いのは以外にも泥の温泉であることはご存じであろうか?
土曜力が溶け込んだ栄養豊富な泥は美肌を作るために一役かっており、連日大にぎわいとなっているほど。
「あー……すげぇなぁ。」
頭にタオルを乗せ、その上に桃子が作った泥団子をバランスよく保ちながら玄弥は幸せそうにお湯に浸かっている。
「お風呂の中に……泥がある、これを掬ってみる。」
白濁と濁ったお湯にはベッタリドロドロな泥が沈殿しており、自由に使ってもよろしいものなのだ。
桃子は玄弥の顔に塗り塗りと塗り潰してゆくも、表情ひとつ変えずに相変わらず幸せそうなのだから、温泉で満足してくれることに生きがいを感じるのは嬉しいが、智美と同じように他人にイタズラをして喜ぶ性格なのだから、複雑な気持ち。
「これが美容効果ねーっ。」
菊花も温泉に浸かっているものの、見れば見るほどゾッとする。
頭全体を泥で覆って、まるで頭が泥の球体に変わっているかのようにしか見えないのだから、無理もないだろう。
「き……菊花? 呼吸は大丈夫なの?」
「私は無呼吸でも平気だからねっ。」
常識に囚われない女、菊花はドヤっとした表情を泥の中に隠して胸を張る。
もちろん、体の構造がデタラメじみたものなので口が塞がってようが正確な発音ができるのも彼女の強み。
「はぁ、酒がうまい。 やはり夜中の時間に入る風呂の雰囲気は格別だ。」
玄弥はポータルから焼酎を取り出すと瓶のままラッパで飲みだしては、露天風呂から覗く満月に酔いしれている。
夜中の二時とあらば本来は旅館のお客もスタッフも入ることは許されないもので、七曜神を冠するものだけの特別な特権なのだから、雰囲気がロマンチックなのも無理はないだろう。
「私も飲むよ。」
菊花は玄弥の瓶を拝借しては、泥団子に瓶が突き刺し喉元にゴクリゴクリと音をたてながら焼酎が流し込まれる。
それを見て二人は菊花らしいと苦笑いするものの瞬時に岩の縁に腕を伸ばしてはリラックスし、菊花の寝息が即座に聞こえてくる。
「あらら……寝ちゃったわ、まぁいいわ。」
「寝顔が見れないのが残念ね……。」
玄弥の顔を見合わせるも、お酒を飲んでいないはずの桃子の顔はほんのりと赤い。
風呂の温かさで血の巡りが良くなったのひとつの例ではあるが、それとはまた別なものだと桃子の心にドキドキが流れ込んでくるのだ。
「ふ、二人きり……ね。」
夜中の誰も来るはずのない露天風呂に二人、ロマンチックなのも雰囲気に包まれるも玄弥には桃子の特有の小声は耳に入らない。
わかりきったことだから言ったわけである。
「んぁ? 何か言ったか?」
「月が綺麗ね……って。」
桃子はそう伝えると、空を見上げては満月を見つめて軽くため息をついたのち、玄弥から少し距離をおいて風呂に浸かってゆく。
玄弥は酒と夜風とお湯の三種に包まれては幸せそうであったとさ。
夜中の温泉は格別である。
誰もが知り得ぬ空間へ飛び込んでみたいものである。
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