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9月10日の2
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9月10日の2。
その先の秘密へ。
食堂のトイレの横にあるスタッフオンリーの扉の前にたつ玄弥は、今ならまだ戻れると言う気持ちを胸に葛藤していた。
この扉を潜れば、新たな七曜神への手掛かりを掴むことはできるが、本来なら不法侵入になってしまうため、それだけは避けたい。
ただ、この機会を逃してしまうとなるとこれから先にチャンスがもう巡って来ないと思うと、胸が苦しくて仕方がなくなってくる。
「……。」
桃子なら存在感をほぼ零にできるために白昼堂々としていても、そこら辺の石ころと同じように誰も存在に気がつかないほどの影の薄さを発揮し、天音は光を操って己の姿を不可視にする力がある。
玄弥は影が薄いわけでもなければ、光を操ることはできるも姿を消すことはできないためこういうときに限って少しだけ羨ましく思えてくる。
「……。」
スタッフオンリーの扉に手をかけたその時だった、あの感覚が背中に這い寄るのを感じたのか玄弥はとっさに振り向いては、胸のポケットのナイフに手を添え、いつでも抜刀できる状態で後ろを見た。
「速いねー、通りでね。」
あの肌黒い人が玄弥の後ろに立っては不気味に笑っている。
「なっ、いつの間に……。 俺が背後を取られるなんて。」
「別にどうってこと無かったけどね。 さて、そこからはウチのスタッフしか入れないんだけどね。」
当然こうなるのは目に見えていた、だけど玄弥としては言い訳などいくらでも作れるし、それを正当化しようものならそれっぽく言うことで相手を納得させ、穏便に済ませることだって今までに何度もしてきたからか、少しは落ち着けるようになった。
「いや、自分でもここに入った時からかな……、仲間が居るような気がしてならなかった。 勝手に入ろうとしたのは悪かった。」
「自然開発センター長あろうものが、こんな不祥事を働くなんてねー、驚くよ。 ばら蒔くぞ、この野郎っ……てね。」
いつの間にか撮られていた写真を見せつけるとそこには、玄弥がスタッフオンリーの扉に手を添えているまさにその瞬間の景色の写真だったのだ。
「す、すまんっ……どうしてもだったんだ。」
「まっ、君の立場なら気になって当然か……。 そりゃそうか、まだ見ぬ仲間が居るのは当たりだよ、七曜神の一柱はここで働いてるよ。」
肌黒い彼はその写真を脅しに使ったのは明白だが、別に玄弥を警察に渡すわけでもないためか破り捨ててはゴミ箱に入れる。
それを見て玄弥も一安心したのか、軽くため息が漏れ出す。
「でも、そちら側に渡す義理は無いよ。 貴重な正社員なんだしね。」
「無事なら無理に七刻に連れていく通りも義理も理由もない。 けど、一目で良いから会ってみたい……かな。」
無理を承知の上でのこれだが、彼は何かの計算上でこうなることを予測した上で玄弥をここに連れ出したのではないかと思うと、むしろ会わせるために呼び出されたのではないかと推測する。
そう思うと期待値は格段と上がる。
「そうだね、もとより会わせるつもりだよ。 ただし、会わせてもいいけど他の七曜神達にはこの事は言わないでくれよ、黙秘なんだから。 もしバラそうものならそれこそこっちも……ばら蒔くぞこの野郎さ。」
破り捨てたはずの写真は元の状態で彼の手中に収まっており、ゴミ箱には破片すら残っていない。
それを見た玄弥も内心は自分より神位が上なのに納得できてくる。
常に隙の無い玄弥の背後を取る、気配を消す、物を復元する……昨日の瞬間移動に、圧倒的な威圧。
どれをとってもカリスマ性は抜群なものに肝を抜かされるも、会えるチャンスが巡ってきたことに感謝しながら二人は扉を潜る。
この先に何が待ち受ける?
そして彼の正体はいかに?
その先の秘密へ。
食堂のトイレの横にあるスタッフオンリーの扉の前にたつ玄弥は、今ならまだ戻れると言う気持ちを胸に葛藤していた。
この扉を潜れば、新たな七曜神への手掛かりを掴むことはできるが、本来なら不法侵入になってしまうため、それだけは避けたい。
ただ、この機会を逃してしまうとなるとこれから先にチャンスがもう巡って来ないと思うと、胸が苦しくて仕方がなくなってくる。
「……。」
桃子なら存在感をほぼ零にできるために白昼堂々としていても、そこら辺の石ころと同じように誰も存在に気がつかないほどの影の薄さを発揮し、天音は光を操って己の姿を不可視にする力がある。
玄弥は影が薄いわけでもなければ、光を操ることはできるも姿を消すことはできないためこういうときに限って少しだけ羨ましく思えてくる。
「……。」
スタッフオンリーの扉に手をかけたその時だった、あの感覚が背中に這い寄るのを感じたのか玄弥はとっさに振り向いては、胸のポケットのナイフに手を添え、いつでも抜刀できる状態で後ろを見た。
「速いねー、通りでね。」
あの肌黒い人が玄弥の後ろに立っては不気味に笑っている。
「なっ、いつの間に……。 俺が背後を取られるなんて。」
「別にどうってこと無かったけどね。 さて、そこからはウチのスタッフしか入れないんだけどね。」
当然こうなるのは目に見えていた、だけど玄弥としては言い訳などいくらでも作れるし、それを正当化しようものならそれっぽく言うことで相手を納得させ、穏便に済ませることだって今までに何度もしてきたからか、少しは落ち着けるようになった。
「いや、自分でもここに入った時からかな……、仲間が居るような気がしてならなかった。 勝手に入ろうとしたのは悪かった。」
「自然開発センター長あろうものが、こんな不祥事を働くなんてねー、驚くよ。 ばら蒔くぞ、この野郎っ……てね。」
いつの間にか撮られていた写真を見せつけるとそこには、玄弥がスタッフオンリーの扉に手を添えているまさにその瞬間の景色の写真だったのだ。
「す、すまんっ……どうしてもだったんだ。」
「まっ、君の立場なら気になって当然か……。 そりゃそうか、まだ見ぬ仲間が居るのは当たりだよ、七曜神の一柱はここで働いてるよ。」
肌黒い彼はその写真を脅しに使ったのは明白だが、別に玄弥を警察に渡すわけでもないためか破り捨ててはゴミ箱に入れる。
それを見て玄弥も一安心したのか、軽くため息が漏れ出す。
「でも、そちら側に渡す義理は無いよ。 貴重な正社員なんだしね。」
「無事なら無理に七刻に連れていく通りも義理も理由もない。 けど、一目で良いから会ってみたい……かな。」
無理を承知の上でのこれだが、彼は何かの計算上でこうなることを予測した上で玄弥をここに連れ出したのではないかと思うと、むしろ会わせるために呼び出されたのではないかと推測する。
そう思うと期待値は格段と上がる。
「そうだね、もとより会わせるつもりだよ。 ただし、会わせてもいいけど他の七曜神達にはこの事は言わないでくれよ、黙秘なんだから。 もしバラそうものならそれこそこっちも……ばら蒔くぞこの野郎さ。」
破り捨てたはずの写真は元の状態で彼の手中に収まっており、ゴミ箱には破片すら残っていない。
それを見た玄弥も内心は自分より神位が上なのに納得できてくる。
常に隙の無い玄弥の背後を取る、気配を消す、物を復元する……昨日の瞬間移動に、圧倒的な威圧。
どれをとってもカリスマ性は抜群なものに肝を抜かされるも、会えるチャンスが巡ってきたことに感謝しながら二人は扉を潜る。
この先に何が待ち受ける?
そして彼の正体はいかに?
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