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9月10日
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9月10日。
香りに導かれては……。
松茸の絵が描かれた段ボール箱をバイクの後ろに積んでは、玄弥は指定された料亭へと足を運ばせる。
小ぢんまりとした寂しい裏路地からでしか入れない店は、知る人ぞ知る隠れた名店となりつつあるなかで、やっとの思いで見つけた玄弥はギリギリ抱えた段ボールが入るか入らないかの路地裏の、さらに裏の厨房の勝手口の扉へと進んでゆく。
「かぁーっ、ビールの飲みすぎで太った訳じゃないのに通れないものがあるとはな。 ビールデブにだけはなりたくねぇな。」
冷たくて無骨な金属のドアノブを開ける。
「失礼しまーす、風見自然開発センターの者ですが、松茸の納品に来ました………ん?」
厨房はおろか食堂にすら誰もいない薄暗い室内は、朝陽だけの光源で少しは明るくなっているものの、物々しい雰囲気が空間を作り出している。
こんな悠長に景色を楽しんでるわけにもいかないのだが、不思議と惹き付けられるものがあるのだろうか、仕事の鬼の玄弥でも段ボールを抱えたまま見とれてしまうほど、異質な雰囲気に取り込まれてゆく。
「なんだろうな……この感覚。」
なにか懐かしいような感覚が心に景色として流れ込んでくるのがわかる。
過去にここに来たことがあった……などというデジャヴに似たような物なのかもしれないが、それに似て似つかない他ならぬなにかには変わりはない。
心が満たされる安心感に例えるのが一番しっくりくる。
「ん?」
玄弥の右腕にはめている緑色の髪結い留めに不思議と感じたことのない曜力を感知し、驚愕する。
基本的な七曜日を冠した曜力ではなく、また別な属性の曜力なのだと直感的に理解した。
何かの間違いだと思いたいが、明らかに曜力の感覚なため腕に伝わる異様なパワーを曜力そのものと釘付ける決定的な証拠として否定はできないが、どうやらその根源は天井部分から感じ取れるようだ。
「天井? それとも二階なのか?」
松茸を納品するためにここまで来たと言うのに、また別な好奇心にそそられていてもたってもいられなくなってしまい、ついついルート変更をしそうになる。
いけないことをしようとしてるとわかっていても、それが新たな七曜神の発見に繋がるなら大きなものだと。
「んー……でもな。」
心当たりは大きくある。
七曜神は元をたどれば皆、若松結愛なのであり全員が若松結愛なのだから全員の記憶の奥底に曖昧ながらも、いつものメンバー以外の数人の記憶もうっすらと残っている。
それの記憶は消えかけた蝋燭の炎のようにちっぽけなものでも、不思議と燃え上がるように記憶が大きく膨らんでくる感覚に驚くばかりの玄弥であった。
禁断の領域へと足を踏み入れるのか。
知ってしまったが最後、後には戻れないのかもしれない。
香りに導かれては……。
松茸の絵が描かれた段ボール箱をバイクの後ろに積んでは、玄弥は指定された料亭へと足を運ばせる。
小ぢんまりとした寂しい裏路地からでしか入れない店は、知る人ぞ知る隠れた名店となりつつあるなかで、やっとの思いで見つけた玄弥はギリギリ抱えた段ボールが入るか入らないかの路地裏の、さらに裏の厨房の勝手口の扉へと進んでゆく。
「かぁーっ、ビールの飲みすぎで太った訳じゃないのに通れないものがあるとはな。 ビールデブにだけはなりたくねぇな。」
冷たくて無骨な金属のドアノブを開ける。
「失礼しまーす、風見自然開発センターの者ですが、松茸の納品に来ました………ん?」
厨房はおろか食堂にすら誰もいない薄暗い室内は、朝陽だけの光源で少しは明るくなっているものの、物々しい雰囲気が空間を作り出している。
こんな悠長に景色を楽しんでるわけにもいかないのだが、不思議と惹き付けられるものがあるのだろうか、仕事の鬼の玄弥でも段ボールを抱えたまま見とれてしまうほど、異質な雰囲気に取り込まれてゆく。
「なんだろうな……この感覚。」
なにか懐かしいような感覚が心に景色として流れ込んでくるのがわかる。
過去にここに来たことがあった……などというデジャヴに似たような物なのかもしれないが、それに似て似つかない他ならぬなにかには変わりはない。
心が満たされる安心感に例えるのが一番しっくりくる。
「ん?」
玄弥の右腕にはめている緑色の髪結い留めに不思議と感じたことのない曜力を感知し、驚愕する。
基本的な七曜日を冠した曜力ではなく、また別な属性の曜力なのだと直感的に理解した。
何かの間違いだと思いたいが、明らかに曜力の感覚なため腕に伝わる異様なパワーを曜力そのものと釘付ける決定的な証拠として否定はできないが、どうやらその根源は天井部分から感じ取れるようだ。
「天井? それとも二階なのか?」
松茸を納品するためにここまで来たと言うのに、また別な好奇心にそそられていてもたってもいられなくなってしまい、ついついルート変更をしそうになる。
いけないことをしようとしてるとわかっていても、それが新たな七曜神の発見に繋がるなら大きなものだと。
「んー……でもな。」
心当たりは大きくある。
七曜神は元をたどれば皆、若松結愛なのであり全員が若松結愛なのだから全員の記憶の奥底に曖昧ながらも、いつものメンバー以外の数人の記憶もうっすらと残っている。
それの記憶は消えかけた蝋燭の炎のようにちっぽけなものでも、不思議と燃え上がるように記憶が大きく膨らんでくる感覚に驚くばかりの玄弥であった。
禁断の領域へと足を踏み入れるのか。
知ってしまったが最後、後には戻れないのかもしれない。
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