日々是成長・HDリマスター(本編の少し前のお話)

青衣

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9月9日

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9月9日。
見慣れぬものが……。














   風見自然開発センターの面談室にて異質な空気がただ漏れしている中、玄弥は誰かとお話している声が聞こえてくる。
   玄弥の声の他のもう一人は肌黒い人で、笑いながらも玄弥と何らかの商談がしたいらしく、ここへ来たみたいなのだ。

 「俺はね、まぁ……神界で料亭やってるんだけど、松茸が欲しくてね。 売れなそうな質の悪いヤツでも有効活用したくてさ。 三十本でぇ……五万!」

   口調は軽いようだが別に玄弥は気にするものではないし、貴重な商談なら何でも乗っておくのが玄弥の鉄則であるからだ。
   それにしてもちょっとだけ後ろめたい気持ちもあるみたいだ。

 「いや、形の悪い松茸なら三十本でも一万で充分だぜ。」

   料亭側の食事の製作代の原価にも大きく響くのは良くないし、質の悪い松茸などたくさんあるのだからタダであげても差し支えないのだが、あいにくお相手は五万円で買い取りたいと強く願うものだから、ご厚意とあればこちらもそれで量諾するのが普通であり、無難な商談なのだ。
   下手に反論しようなら取引すらなくなるのは避けたい。

 「そこまで強く頼まれては仕方ないな。 おまけに三十本の他にもプラスアルファで何本か付けておくからさ。」

 「あー、良いねぇ。 じゃあ、明後日までにここの住所までで宜しくぅ!」

   封筒に入った五万円を玄弥に渡すと、ニッコリと微笑んでくれるのだ。

 「それに、ここの関係者にはよーくお世話になってるからね。 ここの松茸じゃないといけない理由もそこにあったし。」

 「ここの関係者? まさか。」

   玄弥は最後を強調して言うも、誰がお世話になっているのかまでは考えてはいなかった。
   菊花が世話になってるなら、日常的な会話でこの人の話が出てきてもおかしくはないのだが、そんな話など今日まで一切口から出てきたのを聞いてこなかったのだから、菊花の予測も信用はできない。

 「開発センターの人で?」

 「いーや、違うねぇ。 まぁ、気が向いたら自分自身で松茸を納品しに来ればわかるかもしれないね。 と言うわけだから、次の商談の時間もあるから……松茸の件は宜しくぅ!」

   完全に誰がお世話になってるのか全くわからないまま、商談の人は光輝いたあとに一瞬で消え去ってしまう。
   面談室に誰もいなくなると緊張していた玄弥の心のヒモがほどけてぐったりとした様子になっては、自堕落な姿に。

 「神位一桁の五位の神がまさか来るとはな……。 案外チャラ男なのな。」

   自己紹介と名刺をもらったときは驚いたが、ランキングは見た目によらないと言うのは本当らしく、あんなチャラ男でも八百万人も存在する神の中の五本指の実力を兼ね備えているのだから、七位の玄弥ですら緊張するのは当たり前の事。

   一通り緊張がほどけたのち、松茸を届けるための準備に取りかかるのであった。














この季節の味覚の神!
キノコイズゴッドの松茸。
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