日々是成長・HDリマスター(本編の少し前のお話)

９月２４日

９月２４日。
究極の二者択一。














   玄弥が酔っぱらって夜朧城に帰宅し、千鳥足で玄関で靴を脱ぐといつも通り聖奈が優しく迎えてくれる。
   自宅でもないのにニッコリと微笑みながら。

 「お帰りなさい、玄弥様！ 今日も一日お疲れさまでした。」

 「おう。」

   そこに恋が呆れた表情でやって来ては、何か物言いたそうにしている。

 「アンタの家じゃないでしょう。 何よ……ただいまなんて。」

 「まあまあ、良いではありませんか？ 恋さんも、ただいま……なんて言ってくれても構いませんよ？ 私たちは皆同じなのですから、夜朧城も皆のものです。」

   聖奈は恋をなだめるようにして納得させるも、どうにもふに落ちない表情しか出ないが玄弥の一言でそんなこともすっかり忘れてしまうだろう。

 「さてと、居間に行こうぜ？ 今日は勝ったからな……。 まぁ、大したものじゃないがお菓子を買ってきたぜ？」

   玄弥が手に下げて持っている紙袋は有名なお菓子の店のものであり、非常に高くて特別なことがないと買おうともしない逸品だが、味は裏切らないほどで、高価でも連日賑わいを見せるお店のお菓子。
   そんなものを食べられると聞いて呆れる表情もすっかり微笑みに変わる恋。

 「今日は勝たせてくれてありがとな？」

   玄弥は酔っぱらっているためか、ついつい恋の頭を撫でて喜びと伝えようとしているも、恋はムスッとした表情で下を向き、顔を赤くしながらも心にないことを否定してしまう。

 「べっ、別に勝つのは運よ。 私のおかげじゃないもの。」

 「まっ、どちらでも良いじゃねぇかよ。」

   針金のように固い茶髪を撫でては三人して居間に集合し、聖奈は正座に恋は体育座り……、そして玄弥は豪快にあぐらをかいては箱の中身をご対面させるのである。

 「まぁ！」

 「わぁ……スゴい。」

   栗餡最中や苺大福、ティラミスからショートケーキまでたくさんのお菓子が入っている。
   玄弥が行き着けてるお店は和洋中何でもお菓子はあるので品揃えも豊富なのだ。

 「さて、好きなのを一個選んでくれよな。」

   玄弥は缶ビールを開けては選ぶ様子を眺めては、誰がなんのお菓子を選ぶか覚えてはまた買ってくるつもりのようだ。

 「うー……選べませんよ。 けど、これですかね？」

   聖奈は栗餡最中を手に取るとお皿に乗せ、恋はティラミスを選ぶ。
   
 「んじゃ、俺は……これだな。」

   ショートケーキ手に取ると、聖奈は立ち上がっては大切なものを忘れていたと、台所に向かう。
   棚に入っている茶葉を取り出しては急須へと。

 「お茶もいかがです？」

 「良いわね！」

 「あー、良いっすね！」

   これから始まる小さなお茶会に胸を踊らせ、一日の終わりをしばしば堪能する三人は、久々に仲良く笑顔になれたという。
   甘味は人々を笑顔にする素晴らしいものだと、玄弥は酔いしれながら彼女達の笑顔も堪能した。














お菓子を食べて幸せだと思わない人はきっといないだろう。
感じてほしいこの瞬間を……。