26 / 123
王都編
宿屋
しおりを挟む
紹介された宿屋へ行くと、ギルドハウスをそのまま宿に改造したかのような大きさだった。
「アースとは、思いきった名前だね」
「プレイヤー達にわかるようにしてるんじゃないか?」
とりあえず中へ。
「お、いらっしゃい」
入るとすぐに声がかかる。
俺達は声の主がいる受け付けカウンターの前まで行く。
「二部屋とれるか?」
「ええ、大丈夫ですよ」
「それはよかった。あと狼が一匹いるのだが・・・」
「うちは従魔も一緒に泊まれる宿ですのでご心配なく」
「ありがたい。おっと、忘れるとこだった。これ紹介状なんだが」
アイテムボックスから紹介状を取りだし店員に渡す。
「拝見します。ふむ、これは・・・。少々お待ちを」
店員は読むと奥へと引っ込んだ。
しばらく待つと、一人の女性が出てきた。
俺はその人のことを知っている。向こうも俺のことを知っているだろう。
「ノア。久しぶりですね」
腰まであるだろう長い黒髪をポニーテールにしているルビーのような赤い目。そんな彼女は優しげな笑顔を俺に向けていた。
「久しぶりだな。シルファ」
「え!? シルファってマスターと初期の時に一緒に活動してたって言う──」
「ええ、そのシルファですよ。お嬢さん」
彼女はシルファ。
カプリスが言うように、彼女はユグドラシルのオープンβ当時に知り合い。一緒に活動していた旧い友人だ。
「でも、確かお前は二年前に引退した筈だろ?」
「引退と言うより休止してたんですよ。それでユグドラシルが終わるって聞いて最後にログインして終了までいたのだけれど、そのまま寝落ちしちゃって、気付いたらこっちにいたんです」
「なるほど」
俺と同じだな。
「ちなみに何年前だ?」
「そうですね。確か十年前ですよ。ノアは?」
「俺はついこの間だ」
「時間差があるんですね」
「ああ」
謎のタイムラグですよ。
呼ぶならまとめて呼べっての。
そんなこと考えてると、袖を引かれた。
見るとカプリスがちょいと頬を膨らませながらこちらを見ていた。
「仲良さそうだけど、私のこと忘れないで」
「あら、大好きなノアを取っちゃってごめんね?」
「ホントですよ。謝らなかったら剣を抜くとこでした」
「あらあら」
焼きもちか?
可愛いやつめ。
「ああ。悪いな。だがシルファと戦うのはおすすめしない」
「なんで?」
「俺の次に強いから」
「え?」
「だから俺の次に強いんだよ」
「うぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
俺の名前が売れすぎて二位以降の人は知らない人も多いと聞くが、本当に知らないんだな。
「あ、でもバーサクヒーラーの動画なら見たことあるだろ?」
「うん。火力がバカ高いのに回復をメインにしてるプレイヤーのだよね」
「そうそれ、そのバーサクヒーラーがシルファだ」
「・・・マジですか?」
「マジだ。基本後衛、前に出たらバーサーカーがこのシルファさん」
「・・・ソロ動画も見ましたけど、確かに勝てるとは思えないや」
シルファはソロで戦う時は、ガンガン回復しながら杖で殴打しまくるなんとも奇妙な戦い方をするのだ。
何が怖いってダメージ入れる度に回復していくからHPが減らないとこだ。
HP削れないし火力は高いしでまさにバーサクヒーラーなのが彼女である。
「ちなみにレベルは9200だったかな」
「そうですね」
「よくそこまで上がりましたね。ギルメンでも9000越えてからは上がらないぃ! って呻いてたのに」
「まぁ、ノアのレベリングに付いていったりしてましたからね」
「あー、なるほど。よくあのレベリングに付いていけましたね」
「レベリング楽しいので苦ではありませんでしたね」
「あっ・・・」
察するな。
「この話は終いだ。泊めてくれ」
「畏まりました。えっと、一部屋ですね?」
「二部屋だ」
「えー!」
「えー。じゃない。年頃の女の子がおっさんと同部屋は嫌だろ?」
「マスターなら別に嫌じゃないし」
「・・・そうか」
「あ、マスター照れてるー!」
「ニヤニヤすんな。シルファ、二部屋だ」
「うふふ。畏まりました。こちら鍵になりますので無くさないようにお願いします」
「ああ、ありがとう 」
「いつまで泊まるか知りませんが、ゆっくりしていってください」
「そうするよ」
「ありがとうございました!」
俺達はシルファと別れて、部屋へと向かった。
部屋は一人部屋にしては広めで過ごしやすそうだ。
『寝る』
俺と同じ部屋であるギルターは、さっそくベッドで丸くなって眠り始めた。
本当に自由だな。
「俺も寝るか」
ちゃんと鍵を閉めたのを確め、俺は丸くなったギルターを端に押し退けて床についた。
現実で初めて複数戦をやって疲れたのか、俺はすぐに眠りについた。
「アースとは、思いきった名前だね」
「プレイヤー達にわかるようにしてるんじゃないか?」
とりあえず中へ。
「お、いらっしゃい」
入るとすぐに声がかかる。
俺達は声の主がいる受け付けカウンターの前まで行く。
「二部屋とれるか?」
「ええ、大丈夫ですよ」
「それはよかった。あと狼が一匹いるのだが・・・」
「うちは従魔も一緒に泊まれる宿ですのでご心配なく」
「ありがたい。おっと、忘れるとこだった。これ紹介状なんだが」
アイテムボックスから紹介状を取りだし店員に渡す。
「拝見します。ふむ、これは・・・。少々お待ちを」
店員は読むと奥へと引っ込んだ。
しばらく待つと、一人の女性が出てきた。
俺はその人のことを知っている。向こうも俺のことを知っているだろう。
「ノア。久しぶりですね」
腰まであるだろう長い黒髪をポニーテールにしているルビーのような赤い目。そんな彼女は優しげな笑顔を俺に向けていた。
「久しぶりだな。シルファ」
「え!? シルファってマスターと初期の時に一緒に活動してたって言う──」
「ええ、そのシルファですよ。お嬢さん」
彼女はシルファ。
カプリスが言うように、彼女はユグドラシルのオープンβ当時に知り合い。一緒に活動していた旧い友人だ。
「でも、確かお前は二年前に引退した筈だろ?」
「引退と言うより休止してたんですよ。それでユグドラシルが終わるって聞いて最後にログインして終了までいたのだけれど、そのまま寝落ちしちゃって、気付いたらこっちにいたんです」
「なるほど」
俺と同じだな。
「ちなみに何年前だ?」
「そうですね。確か十年前ですよ。ノアは?」
「俺はついこの間だ」
「時間差があるんですね」
「ああ」
謎のタイムラグですよ。
呼ぶならまとめて呼べっての。
そんなこと考えてると、袖を引かれた。
見るとカプリスがちょいと頬を膨らませながらこちらを見ていた。
「仲良さそうだけど、私のこと忘れないで」
「あら、大好きなノアを取っちゃってごめんね?」
「ホントですよ。謝らなかったら剣を抜くとこでした」
「あらあら」
焼きもちか?
可愛いやつめ。
「ああ。悪いな。だがシルファと戦うのはおすすめしない」
「なんで?」
「俺の次に強いから」
「え?」
「だから俺の次に強いんだよ」
「うぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
俺の名前が売れすぎて二位以降の人は知らない人も多いと聞くが、本当に知らないんだな。
「あ、でもバーサクヒーラーの動画なら見たことあるだろ?」
「うん。火力がバカ高いのに回復をメインにしてるプレイヤーのだよね」
「そうそれ、そのバーサクヒーラーがシルファだ」
「・・・マジですか?」
「マジだ。基本後衛、前に出たらバーサーカーがこのシルファさん」
「・・・ソロ動画も見ましたけど、確かに勝てるとは思えないや」
シルファはソロで戦う時は、ガンガン回復しながら杖で殴打しまくるなんとも奇妙な戦い方をするのだ。
何が怖いってダメージ入れる度に回復していくからHPが減らないとこだ。
HP削れないし火力は高いしでまさにバーサクヒーラーなのが彼女である。
「ちなみにレベルは9200だったかな」
「そうですね」
「よくそこまで上がりましたね。ギルメンでも9000越えてからは上がらないぃ! って呻いてたのに」
「まぁ、ノアのレベリングに付いていったりしてましたからね」
「あー、なるほど。よくあのレベリングに付いていけましたね」
「レベリング楽しいので苦ではありませんでしたね」
「あっ・・・」
察するな。
「この話は終いだ。泊めてくれ」
「畏まりました。えっと、一部屋ですね?」
「二部屋だ」
「えー!」
「えー。じゃない。年頃の女の子がおっさんと同部屋は嫌だろ?」
「マスターなら別に嫌じゃないし」
「・・・そうか」
「あ、マスター照れてるー!」
「ニヤニヤすんな。シルファ、二部屋だ」
「うふふ。畏まりました。こちら鍵になりますので無くさないようにお願いします」
「ああ、ありがとう 」
「いつまで泊まるか知りませんが、ゆっくりしていってください」
「そうするよ」
「ありがとうございました!」
俺達はシルファと別れて、部屋へと向かった。
部屋は一人部屋にしては広めで過ごしやすそうだ。
『寝る』
俺と同じ部屋であるギルターは、さっそくベッドで丸くなって眠り始めた。
本当に自由だな。
「俺も寝るか」
ちゃんと鍵を閉めたのを確め、俺は丸くなったギルターを端に押し退けて床についた。
現実で初めて複数戦をやって疲れたのか、俺はすぐに眠りについた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
5,257
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる