癒し(笑)の魔王~防御力が高すぎて誰にも倒せません~

岳河 夕陽

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魔王VS魔王?

第29話 ミノタウルスと顔面偏差値

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マルバスがミストの罠にかかって残念な感じになった翌日、のどかな道を牛が2体歩いていた。ただの牛ではなく、体は筋骨隆々の人間の物であり、片方は盾を、もう片方は槍を持っている。


「ったく、なんだって俺らがマルバスのやつを探しに行かなきゃならないんだ。こんなのハルファスの野郎にやらせときゃいいんだよ!」
「兄さん、吸血鬼は太陽が出てたら外に出ないよ?」
「!う、うう、煩え!知ってるよそんぐらい!言ってみただけだ!」


どうやらこのミノタウルスの兄弟、偵察に出たまま帰ってこないマルバスを探しに出されたらしい。つまりは(偽)魔王幹部である。盾を持った方が兄で、槍を持った方が弟のようだ。
兄の方、最初のセリフがマルバスとほぼ同じである。
と、兄弟の前方に若い娘が見えた。


「お、美人の女だ!レプトお前はここで待ってろ!」
「え?何、またナンパするの?無駄だと思うけどなあ・・・って聞いてないね、うん。」


無謀にも声をかけに行ってしまった兄、アガレアと、もはや止めるのを諦めた弟、レプト。


「こんにちはお嬢さん、どうだい?俺と一緒に「キャアァァァ!!!化け物ぉ!こっち来ないで!助けて!誰かぁぁぁぁ!!!」化け物!?」


娘は脱兎のごとく逃げ去っていった。それはもう、どこぞの100メートル記録保持者もびっくりなスピードで。
アガレアはショックでダメージを受けた!悲しみに震えながら膝を折る。
と、傍観を決め込んでいたレプトが、地面に両手をつくアガレアの後ろに立った。


「・・・なんだよ、慰めなんかいらねぇよコンチクショウ。ううぅ、顔か?やっぱり顔なのか!?いいじゃねぇかよ牛顔だってぇ!」
「兄さん・・・。」


涙ぐむ兄の肩に手を置くレプト。そして、


「大丈夫だよ兄さん。僕は知ってるから・・・。」
「レプト・・・!」
「兄さんが、人間の時の方がよっぽど化け物じみた顔してたって。」
「テメェ実の兄の顔そんな風に見てやがったのか!!!」
「ついでに中身も女の子のお尻ばっか見てる変態だって事も。」
「見てねえよ!俺が見てるのは尻じゃなくて胸だ!!」
「え!?2個目は冗談だったのに・・・」
「冗談かよ!ちくしょう嵌められたっって最初のは本音か!!!」
「二卵性双生児でよかったよね本当。」
「テメェェェェェェェ!!!!!」
「兄さん語彙力どこに落としてきた?」
「いちいちうるっせえ!」


兄の方はかなりの馬鹿なようである。ちなみに娘さんは無事に近くの村へたどり着いたとか。





_______________





場面は変わり、魔王討伐のため西へと向う勇者パーティー。
マルバスが狩れた日、宣言通りミストはお昼時まで起きなかった。ミスト起床後、リッチの素材と杖はフレイアに譲られ、メンバーのレベルも上がったため、図らずも戦力強化となったりしたが。


まあ、勇者とは別方向に残念なマルバスさんのことは置いといて、現在勇者パーティーの面々は、立ち寄った町の兵士からある依頼クエストを持ちかけられていた。


「それで、頼みたい事とは?」
「実は此処から西に2時間ほど進んだ所に村があるのですが、その近くの道でミノタウルスと思わしきモンスターが発見されたのです。」
「ミノタウルスってランクAのモンスターじゃねぇか!なんだってそんな所にいるんだ!?」


アガンの言う通り、本来ならばミノタウルスがいるのは迷宮型ダンジョンの最奥部だと決まっている。外にいるはずはないのだ。


「はい、アガン様のおっしゃる通りです。おそらくは・・・魔王幹部の1人ではないかと予想しております。」
「その依頼クエストお受けします!」
「いや、もうちょい話聞こうよ勇者。」


夏樹が速攻で食いついた。マルバスはミストが倒した形となっており、未だ良いところ無しなのだ、ここらで活躍しておきたいのである。


こうしてミノタウルス兄弟を探しに出たのであった。
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