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1章 最強の師篇

長い1日(中編)

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再び商店街に戻った俺は、ある飲食店に釘付けになっていた。

『  ラーメン屋 響 』

異世界で初めて見つけた日本語。日本の文化で独特の進化を遂げたラーメン。
こんなに心揺り動かされたのはいつぶりだろうか。

自然と体はその店に引き寄せられていく。

店内に客の姿はなかったが日本で見るラーメン屋と瓜二つだ。メニューでさえも日本語で書かれている。

「あの、ここってラーメン屋なんですよね?」

店員に尋ねると

「お前さん、この文字が読めるのか!」

いきなり詰め寄ってくる店員さんは俺の肩をがっしりと掴み声を張り上げる。

「え、えぇ。まぁ」

「てぇ事は日本人なんだな!」

日本人、彼は確かにこう言った?俺は頷き返すと、店員は涙を流した。

「日本人に俺ぁ会えたんだな!」

暫くして落ち着いた様子のおじさんはカウンターの椅子に腰掛ける。

「俺ぁな、5年前にこの意味不明な世界に迷い込んじまったんだ。今となってはなんでこんな場所に来たのか見当もつかねぇ。帰る方法も見つかんねぇからこうやって日本語表記で店を始めたって訳だ。おかげでやっと日本人に会うことができたがな」

嬉しそうに言うおじさん。恐らくこの5年間でいろんな苦労をしたんだろう。
俺はおじさんの向かいのテーブル席に腰掛けた。

「おっと、そう言えば自己紹介がまだだったな。俺の名は響 大介ひびき だいすけラーメン屋 響で店長やってんだ!よろしくな」

「俺は佐藤悠真と言います。響さん、日本に帰りたいですか?」

「そりゃ初めは帰りたい一心だったさ。
けどな・・・」

その時、ガラガラっと店の戸を開けて客が入って来た。

「よっ!おやっさん!いつものラーメンよろしく!」

「あいよ!・・・この店愛してくれる客が居てくれる限り帰れそうもねぇや」

そう言い残すと響さんは厨房に入りラーメンを作り始めた。

俺も、ラーメンを注文し、焼豚がのった美味しそうなラーメンをスープごとたいらげ堪能した。

「お会計は3銀貨だ」

そう言えば、お金の使い方がまだ分からなかったんだ。

「響さん。お金ってどう使えばいいんですかね?」

「わりぃわりぃ!えっとな、貨幣には3つ種類があってな。それぞれ銅貨、銀貨、金貨って分けられてんだ。100銅貨で1銀貨。100銀貨で1金貨ってなってんだ。1銅貨は日本円でも1円と同じ感覚だから案外覚えやすいぞ」

「ありがとうございます!」

師匠の家の机に置いてあったら小袋の中を確かめてみる。
金貨20枚と銀貨10枚か。日本円なら201000円になるな。うん、小遣いの範囲大きく超えたな。

俺は銀貨3枚を手渡し店を後にした。

「ありがとうな!何か困ったことがあったらいつでも来い!相談にくらいなら乗ってやるよ」

俺は軽く会釈し店の戸を閉めた。

「また、来ようかな」






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