3 / 4
拍手が鳴った瞬間、空気がひっくり返る
しおりを挟む
私が部屋を出たと同時に、拍手が鳴った。
すぐに数が増え、場はお祝いムードに染まる。
「おめでとう!」
「二人は、お似合いだね。」
「本当。ピッタリ!」
称賛を浴びて、元カレの小暮貴史と、略奪に成功した畠中恵美は、肩を寄せて笑い合う。
――勝った、と言いたげに。
狙いどおり、観客の前で“誠実さ”を演出したのだろう。
しかし。
「小暮、畠中さんみたいな可愛い彼女が出来て、お前がうらやましいよ~。」
とある男性社員のひと言で、空気が反転した。
「え?倉橋さんって、そういうタイプが好みなんですか?」
その場にいた一人の女性が、驚いたように尋ねた。
「誠実な人だと思ってたのに……がっかり。」
「小暮さんと同類か。距離、置こ。」
「他の女子にも共有しとこ。被害者を出すの嫌だし。」
彼女たちはすぐにスマホを出し、連絡を飛ばし始める。
戸惑った倉橋は言った。
「え?どうして?みんな祝福してるんじゃないの?」
突然の彼女たちの態度に、とても驚いていたらしい。
「ええ、祝福してますよ。最低同士がくっついたおかげで、他に被害が出ないって意味でね。」
さっきまでの祝福ムードは消え、小暮と畠中に冷たい視線が集まる。
「え?最低な人間?」
倉橋は、その意味がよく分かっていなかったようだ。
「二股して若いほうを選んで、支えてきた彼女を捨てる男? 最低でしょ!」
「彼氏持ちに手を出す女も同レベルだよ。わからないって、程度が知れるわ!」
「顔と若さでしか選べない残念コンビだしな。」
倉橋がなおも口を開く。
「でもさ。」
「自分より仕事できる女が彼女って、男としては――。」
「はぁ~。男尊女卑、いただきました!」
「妬むくらいなら努力しなよ。そんなんじゃ出世は絶望的だね?」
女性陣は、冷たい目つきで、倉橋を見る。
男性陣も、淡々と後に続いた。
「彼女を応援しつつ自分も上を目指すもんじゃね?“負けてられない”ってな!」
「女を下に見るやつは、この業界じゃ詰むんだよ。」
さらに、囁きが落ちる。
「顔と若さだけが取り柄で、仕事はからっきしの女は御免こうむりたい!」
「そういえば、学生時代から“横取り”の常習だって。同大の子が言ってた。」
「うわ、サイテー!」
ふたりは顔を真っ赤にしてうつむいた。
畠中は涙目で男たちを見上げるが、誰も手を差し伸べない。
見事なまでの無視。
そこで、鋭い音が場を断ち切った。
パン!パン!
「無駄話はそこまで。仕事に戻れ。残業を増やすな。」
一言で、場に静寂が満ちる。
視線の先には、長身に上質なスーツを身にまとった真田社長。
今日は支店視察だと皆が知っていたが、この部屋にいるとは誰も思っていなかった。
「真田社長、私……」
助け船だとばかりに、畠中が震える声で近づく。
涙を浮かべ、彼の腕を取ろうと手を伸ばす。
「これは、誤解なんです!」
突然、予想外の言葉を口にした。
「え?」
となる、その場に居合わせた社員一同。
「何が誤解なのかな?」
社長は穏やかにかわし、彼女の手は空を切る。
「だって、私が本当に愛しているのは……社長、わかってますよね?」
祈るように手を組み、上目遣いで見上げる。
入社以来、半年間続いたというアプローチ。
だが返ってくるのは――。
「いつも言っているよね?君の言っていることは、僕には理解できないんだが。」
いつもと同じ、温度のない返事だけ。
「ですからいつも言っています!私が心から愛しているのは社長だけだって!」
なおも距離を詰めようとする彼女を、社長の微笑が止める。
「君が心から愛しているのは、そこの小暮君だろう? さっき、思い切り“幸せアピール”していたじゃないか。」
真田社長は、ゆっくりと口角を上げた。
「おめでとう。僕も、二人はとてもお似合いだと思うよ。」
完璧な笑顔。
場の空気が一拍遅れて揺れる。
女性陣はもちろんのこと男性社員でさえ、頬を染めるほどの破壊力。
……畠中はお間抜けにも口を大きく開けたまま、その場で固まった。
――次回更新:22:00時予定
すぐに数が増え、場はお祝いムードに染まる。
「おめでとう!」
「二人は、お似合いだね。」
「本当。ピッタリ!」
称賛を浴びて、元カレの小暮貴史と、略奪に成功した畠中恵美は、肩を寄せて笑い合う。
――勝った、と言いたげに。
狙いどおり、観客の前で“誠実さ”を演出したのだろう。
しかし。
「小暮、畠中さんみたいな可愛い彼女が出来て、お前がうらやましいよ~。」
とある男性社員のひと言で、空気が反転した。
「え?倉橋さんって、そういうタイプが好みなんですか?」
その場にいた一人の女性が、驚いたように尋ねた。
「誠実な人だと思ってたのに……がっかり。」
「小暮さんと同類か。距離、置こ。」
「他の女子にも共有しとこ。被害者を出すの嫌だし。」
彼女たちはすぐにスマホを出し、連絡を飛ばし始める。
戸惑った倉橋は言った。
「え?どうして?みんな祝福してるんじゃないの?」
突然の彼女たちの態度に、とても驚いていたらしい。
「ええ、祝福してますよ。最低同士がくっついたおかげで、他に被害が出ないって意味でね。」
さっきまでの祝福ムードは消え、小暮と畠中に冷たい視線が集まる。
「え?最低な人間?」
倉橋は、その意味がよく分かっていなかったようだ。
「二股して若いほうを選んで、支えてきた彼女を捨てる男? 最低でしょ!」
「彼氏持ちに手を出す女も同レベルだよ。わからないって、程度が知れるわ!」
「顔と若さでしか選べない残念コンビだしな。」
倉橋がなおも口を開く。
「でもさ。」
「自分より仕事できる女が彼女って、男としては――。」
「はぁ~。男尊女卑、いただきました!」
「妬むくらいなら努力しなよ。そんなんじゃ出世は絶望的だね?」
女性陣は、冷たい目つきで、倉橋を見る。
男性陣も、淡々と後に続いた。
「彼女を応援しつつ自分も上を目指すもんじゃね?“負けてられない”ってな!」
「女を下に見るやつは、この業界じゃ詰むんだよ。」
さらに、囁きが落ちる。
「顔と若さだけが取り柄で、仕事はからっきしの女は御免こうむりたい!」
「そういえば、学生時代から“横取り”の常習だって。同大の子が言ってた。」
「うわ、サイテー!」
ふたりは顔を真っ赤にしてうつむいた。
畠中は涙目で男たちを見上げるが、誰も手を差し伸べない。
見事なまでの無視。
そこで、鋭い音が場を断ち切った。
パン!パン!
「無駄話はそこまで。仕事に戻れ。残業を増やすな。」
一言で、場に静寂が満ちる。
視線の先には、長身に上質なスーツを身にまとった真田社長。
今日は支店視察だと皆が知っていたが、この部屋にいるとは誰も思っていなかった。
「真田社長、私……」
助け船だとばかりに、畠中が震える声で近づく。
涙を浮かべ、彼の腕を取ろうと手を伸ばす。
「これは、誤解なんです!」
突然、予想外の言葉を口にした。
「え?」
となる、その場に居合わせた社員一同。
「何が誤解なのかな?」
社長は穏やかにかわし、彼女の手は空を切る。
「だって、私が本当に愛しているのは……社長、わかってますよね?」
祈るように手を組み、上目遣いで見上げる。
入社以来、半年間続いたというアプローチ。
だが返ってくるのは――。
「いつも言っているよね?君の言っていることは、僕には理解できないんだが。」
いつもと同じ、温度のない返事だけ。
「ですからいつも言っています!私が心から愛しているのは社長だけだって!」
なおも距離を詰めようとする彼女を、社長の微笑が止める。
「君が心から愛しているのは、そこの小暮君だろう? さっき、思い切り“幸せアピール”していたじゃないか。」
真田社長は、ゆっくりと口角を上げた。
「おめでとう。僕も、二人はとてもお似合いだと思うよ。」
完璧な笑顔。
場の空気が一拍遅れて揺れる。
女性陣はもちろんのこと男性社員でさえ、頬を染めるほどの破壊力。
……畠中はお間抜けにも口を大きく開けたまま、その場で固まった。
――次回更新:22:00時予定
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる