最恐彼氏。~麗しの生徒会長、実は妖怪総大将だった件~

蒼月柚希

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生徒会室で鍵がかかった日

 十月の終わり――それは、私の平凡な日常が崩壊する日だった。
 昼でも少し肌寒い風が校舎の廊下を抜けていく。
 そんな穏やかな昼休みのこと。

「オイ、お前。見たんだろ?」

……なんの話ですか?

 目の前にいるのは生徒会長様――。
 学校中の女子の憧れ、男子からも尊敬される完璧王子。
 なのに、なぜ今、そんな怖い顔をして私を見てるんですか?

 少し前のこと。

 楽しいお弁当タイムが終了したタイミングで、校内放送が流れた。

藤原彰子ふじわら あきこさん。生徒会室まで来てください。」

 突然の身に覚えのない呼び出し。
 はい? え、私なにかやらかしました?
 クラス中の視線が一気に集まり、正直、胃が痛い。

 足早に教室を去り、恐る恐る生徒会室へと行ってみると、
 扉の向こうには――いつもの麗しい笑顔の生徒会長。
 その優しい笑顔に、正直、癒されます。

「どうぞ。入って。」

 声まで優しい……。

”ガチャリ!!”

「?」

 あれ?
 今、ドアロックがかかる音が、確かに聞こえたような。

“バン!!”
“パラ…………”

 え?
 会長!
 手が壁にめり込んでおりますが。

「オイ、お前。見たんだろ?」

「?」

 そして、いきなり本題!?
 っていうか、なんで鍵閉めましたいま!?

「えっと……何のことでしょう?」

「シラを切るつもりか?」

 声、低っ! 
 さっきまでのあの素敵な笑顔は、声は、私の記憶違い?
 と、思わず疑うほどの、全くの別人格。
 こわっ! 目が全然笑ってない!

 いや、ほんと怖い!
 もはや空調いらないレベルの寒気ですけど!?

「保健室で見ただろう?」

「保健室? え? 寝てた人なら見ましたけど……。」

「子泣き爺、枕返し、砂かけ婆、小豆洗い。」

……はい?
 それ何の呪文ですか?

「そいつらは、俺のしもべ達だ。」

「え? ええっ!?」

 突然語られる、

『生徒会長、魔王どころか妖怪総大将だった件』。

 は?それなんの冗談?

「お前、見える人間だな?」

「い、いやいや、そんな特殊能力ないですって!」

「嘘をつくな。妖怪に触れられた瞬間、頭痛が走るんだろ?」

……え、なんで知ってるのこの人!?
 確かに。
 見えるせいで、四六時中、頭痛と相思相愛ですが。
 保健室の住人になりつつありますが。
 
 ええ、確かに見ていますよ。
 まずは、保健室のカオスを思い出しながら並べてみた。

 恋多き女と言われる肉食女子、保健の先生。
 今は、数学教師と禁断の恋を満喫中らしい。
 でも最近は、毎日耳鳴りが酷くてイライラマックスの不機嫌。
 日常的にヒステリーを起こすので、今では誰も寄りつかない。
 原因は――肩にしがみつく“泣き声のにぎやかなおじいちゃん”たち。
 顔はヨボヨボしわしわなのに、声はオギャアって。
 ギャップがホラーだけど面白くて、毎回笑いを耐えてます。

 万年2位の浜田先輩。
 会長に勝てず、ストレスで不眠症だともっぱらの噂。
 そんな彼の枕を分捕り、ミニ落ち武者風のおじいちゃん達が、連日「枕投げ」改めラグビー大会を開催中。
 トライするたびに「浜田、寝かさねぇ!」と絶叫し、青春真っ盛り。
 浜田先輩は、もちろんずっとうなされている。

 元・会長秘書候補の熊野先輩。
 目の不調で保健室に来るたびに、出迎えるのは“大量の砂を持ったおばあちゃん”。
 先輩は、砂ストームを顔面に浴び、即・視界ゼロでのたうち回った。

 会長に近寄る女性に、ところかまわずすぐに噛みつく番犬。
 前回の違法なやり方で会長の怒りを買い親衛隊長になってしまったあらた先輩。
 最近体中が痛くて眠れないと、保健室にやってくる彼女。
 そんな彼女にまとわりつき、小豆を凄いスピードで当てまくる頭が“フランシスコ・ザビエル”の小さなヨボヨボのおじいちゃん達。

「……っていうか、全員おじいさんかおばあさんじゃないですか!」

「もう何百年も、我が一族に仕えているからな? 妖怪の世界も、高齢化の波が押し寄せているんだよ!」

 仕方ないだろうと、言わんばかりのお言葉でした。

「あんなにご高齢なヨレヨレ集団をこき使って、心が痛まないんですか?」

「ああ見えてあいつらは、まだまだ働き盛りなんだよ!!」

「そ、そうなんですか。」

 まあ、妖怪もヒマだとボケるのかもね?
 あれってきっと、リハビリなんだろうなあ。
 
「それにしてもあの人達、妖怪さん達にお仕置きされるようなことをしているんですか?」

「はあ? おまえはバカか?」

「え? バカ?」
 
「まあいい、教えてやる。」

「保険医の渡部はオレを自分のハーレムに加えようとしやがった。胸糞悪い。」

「浜田は逆恨みにオレに犬神を仕掛けやがった。まあ返り討ちにしたがな。」

「熊野は影で酷いいじめをやっていた。新もしかりだ。この俺が治める学舎での暴挙は、断じて許さん!!」

「分かったか? それとも他に何か言いたいことでもあるのか?」

「……いいえ。返す言葉もございません。」

 すべて、会長が正しいと思います。

「安心しろ。お前だけは、絶対に俺が守る。」

「いやその“安心しろ”の声が一番怖いですから!」

 生徒会長が、ぐっと顔を近づけてくるのですが。
 近い近い近い!
 私の心の安定のためにも、パーソナル・スペースを守っていただきたい!

「今日からお前は俺の秘書だ。」

 突然“顎クイ”までしてきたのですが。

「拒否します!」

 即、お断り申し上げたのですが。

「拒否権はない!」
 
 即、返答が返ってまいりました。
 瞬間却下です。

「俺のそばにいれば安全だぞ。」

 その笑顔で、一体私の何が安全だと。

「いやむしろ危険しか感じませんけど!?」

「問題ない。この俺が守るんだからな。」

「……って言いながら逃げ道を塞ぐのやめてもらえません!?」

 にこり。
 その笑顔、ホラー映画のクライマックスに出せるレベル。

 でも、なぜか――ほんの少しだけ、安心もする。

「聞いて喜べ。お前は今から、俺のものだ。」

……はい?
 なにその宣言。意味がわかりません。

 こうして私は、生徒会長(自称・妖怪総大将)の秘書になりました。

 生徒会室を出たときには、すでに魂が半分抜けていた。
 校舎のどこかで――「ザザッ」と砂をかくような音が。
……気のせいだと、この時の私は思っていた。

――つづきは、23時に。
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