37 / 47
イシャロット帝国一行はとうとうヨルムンド共和国にやってきました。
しおりを挟む
ヨルムンド共和国に、というより正確には、自由都市シールズーを治めるヴァレン辺境伯に、ある縁談を持ちかけるためだ。
そう言って、イシャロット帝国一行はこの国を訪れた。
資金繰りに苦しみ、国の経営が思うようにいかないイシャロット帝国では、皇子と皇女が各国を渡り歩き、結婚を通じた資金援助を求めているという話は、すでに周知の事実であった。
「なんでも、悪臭をまき散らしながら、どこの国でも門前払いらしいが……」
その臭いのせいで、自国にも入国拒否をされたらしい。
「この国に入ったときには、その悪臭も消えていたようだが……。」
国王はホッとした。
隣の国、バンーテーン王国領に入ったときは、まだ臭いが残っていたため国王率いる王族が、全力で入国拒否した。
バンーテーン王国は、シュバリエ皇国に比べると財力も軍事力も劣るためか、まさか自分のところには来ないだろうと安心していた矢先である。
この国でも年頃の王女はいたが、その臭いのひどさとイシャロット帝国の悪い噂で、皇子たちは全力で拒否された。
シュバリエ皇国からも情報を得ていたため、皇子と皇女は噂以上に、バンーテーン王国の王族たちにとって、厄介な客人となっていた。
彼らはその代わりにと、自国の外れにある温泉街を自由に使える許可を出し、事なきを得たのである。
イシャロット帝国一行は、周りにとても不愉快な視線を送られながらも、それを気にすることなく存分に温泉を楽しんだ。
そのおかげか、今ではあのなかなかとれなかった臭いから、やっとの事で解放されたのである。
ヴァレン辺境伯領は、隣接する伯爵領地と合わせて三つのダンジョンを有し、港を抱えているため貿易も盛んだ。
近年はミールネーの乳製品とその料理、さらに良く効く薬の流通により、発展も著しい。
彼らが目をつけたのは、まさにその点だった。
狙いは、バレリア皇女を辺境伯夫人として嫁がせ、その見返りに資金援助を受けること。
「一度、他国のパーティーでも、お会いしたことがありますわ。」
そう言って、バレリア皇女はこの縁談に乗り気だった。
シュバリエ皇国のコンラッド・ウィン・ヴァーミリオン公爵と比べれば見劣りはするものの、ローウェン・ヴァレン辺境伯もまた、細身で背が高く、整った顔立ちの持ち主である。
見た目重視のバレリア皇女が、目をつけないはずがなかった。
突然の王都からの呼び出し――すなわち縁談の話に、ヴァレン辺境伯は顔を引きつらせた。
「……何故、私が行き遅れの後始末など。」
いつも穏やかで、人の外見について口にすることなどなかった辺境伯が、こうまで言うのだから。
「年齢や見た目をどうこう言うつもりはないが、あの女はごめんだ!」
辺境伯にしては珍しく、強い拒否を示す。
バレリア・イシャロット皇女、三十三歳。
現イシャロット帝国、皇帝の十歳も離れた妹。
数多くいる皇帝の兄弟の中で皇女は彼女一人であったため、特に甘やかされ何不自由なく育った女。
そのせいか素行が悪く、何度も婚約をしては破棄するという、迷惑極まりない女だった。
当然、辺境伯もいいイメージはみじんもない。
かつて、望みもしないパーティーで顔を合わせたあの女。
傲慢な態度と、香水臭いけばけばしさしか印象に残っていない。
耳障りなキンキン声で他国の令嬢にケンカを売り、「皇女だから」と上から目線で、公衆の面前で辱めた女だ。
辺境伯の知り合いの娘が、ただ挨拶に来ただけだったというのに。
その時、他の貴族子息に相手にされなかったからだろうか。
「私とダンスを踊ってくれたら、彼女は許して差し上げますわ。」
といわれ、ダンスぐらいなら……と承諾したのがいけなかったのだろうか?
彼女は皇女でありながら、独創的なリズムでお世辞なりにもダンスはうまくなかった。
一曲終わるまでに、あのかかとのとがった高いヒールで、何度足を踏まれたことだろう。
このときほど、風属性の魔法持ちだったことに、感謝したことはない。
バレないようにギリギリのところで避け、見た目にはうまく踊れているように細工した。
触れるのも嫌だったので、風魔法で防御膜を作り、触れているように見せかけることにも成功している。
あれ以上にきつい香水の匂いも、風魔法を駆使して分からない程度に散らせたくらいだ。
思い出しただけで、怒りと疲れが交差する。
ヨルムンド共和国の国王や重鎮たちも、あれこれ助言して断ろうとしたらしいが。
「問題ありませんわ。以前ダンスもご一緒しましたのよ。辺境伯様はきっと、私を辺境伯夫人にしてくださいます。」
と、やけに自信満々であるらしい。
冗談ではない、と頭を抱える兄を見かねて、弟のバーナード・ハイランズ伯爵はユーリに声をかけた。
「兄を助けると思って、婚約者のふりをしてくれないだろうか?」
「私が……ですか?」
突然の申し出に、きょとんとするユーリ。
「君は、平民の割には、所作がとても綺麗だ。まるで本物の貴族のご令嬢のようにね。」
そう言われ、ドキンと心臓が跳ね上がった。
「そ、そうでしょうか?」
「皆が、噂しているくらいにはね。」
そして今回のバレリア皇女の件を彼女に話して聞かせた。
「まあ。そんなに印象深い皇女様が、ローウェン様に求婚を?」
最近、彼が元気を失っていることには、なんとなく気づいていた。
何かある毎に、深いため息を漏らしているのを見るからだ。
体調が悪いのかと声をかけるも。
「大丈夫ですよ。ご心配、ありがとうございます。」
と、作り笑顔で返事を返される。
「ああ。兄はとても困っているんだ。あの通り仕事いっぺんな性格だったから、他に頼める女性もいないしね……。」
「あの……以前おっしゃっておりましたが、ローウェン様には、お心を寄せているご令嬢がいらっしゃると。その方にお願いは出来ないのでしょうか?」
ユーリは以前、話に上がったことを聞いてみた。
(それ、あなたのことなんですけどー!)
そう叫びたいところをギリギリのところで我慢するハイランズ伯爵。
「そうですね……今は難しいかと……。」
冷や汗をかきながら、必死にごまかしてみせた。
(兄上ー! 貴方の思いはまだ距離がありそうですー!)
内心は、全く届いていないであろう兄の思いに、涙を流す。
「そうなんですね……。」
そんな伯爵の思いなど全く分かっていないユーリ。
困ったような顔を向ける、ハイランズ伯爵に対し、ユーリは決心した。
ローウェン・ヴァレン辺境伯には、ずっとお世話になっている。
いつも世話になりっぱなしなのだから、せめてこのくらいは――。
「分かりましたわ。そのお役目、引き受けさせていただきます。」
そう答えたユーリの声は、思ったよりも静かで、しかし確かだった。
そう言って、イシャロット帝国一行はこの国を訪れた。
資金繰りに苦しみ、国の経営が思うようにいかないイシャロット帝国では、皇子と皇女が各国を渡り歩き、結婚を通じた資金援助を求めているという話は、すでに周知の事実であった。
「なんでも、悪臭をまき散らしながら、どこの国でも門前払いらしいが……」
その臭いのせいで、自国にも入国拒否をされたらしい。
「この国に入ったときには、その悪臭も消えていたようだが……。」
国王はホッとした。
隣の国、バンーテーン王国領に入ったときは、まだ臭いが残っていたため国王率いる王族が、全力で入国拒否した。
バンーテーン王国は、シュバリエ皇国に比べると財力も軍事力も劣るためか、まさか自分のところには来ないだろうと安心していた矢先である。
この国でも年頃の王女はいたが、その臭いのひどさとイシャロット帝国の悪い噂で、皇子たちは全力で拒否された。
シュバリエ皇国からも情報を得ていたため、皇子と皇女は噂以上に、バンーテーン王国の王族たちにとって、厄介な客人となっていた。
彼らはその代わりにと、自国の外れにある温泉街を自由に使える許可を出し、事なきを得たのである。
イシャロット帝国一行は、周りにとても不愉快な視線を送られながらも、それを気にすることなく存分に温泉を楽しんだ。
そのおかげか、今ではあのなかなかとれなかった臭いから、やっとの事で解放されたのである。
ヴァレン辺境伯領は、隣接する伯爵領地と合わせて三つのダンジョンを有し、港を抱えているため貿易も盛んだ。
近年はミールネーの乳製品とその料理、さらに良く効く薬の流通により、発展も著しい。
彼らが目をつけたのは、まさにその点だった。
狙いは、バレリア皇女を辺境伯夫人として嫁がせ、その見返りに資金援助を受けること。
「一度、他国のパーティーでも、お会いしたことがありますわ。」
そう言って、バレリア皇女はこの縁談に乗り気だった。
シュバリエ皇国のコンラッド・ウィン・ヴァーミリオン公爵と比べれば見劣りはするものの、ローウェン・ヴァレン辺境伯もまた、細身で背が高く、整った顔立ちの持ち主である。
見た目重視のバレリア皇女が、目をつけないはずがなかった。
突然の王都からの呼び出し――すなわち縁談の話に、ヴァレン辺境伯は顔を引きつらせた。
「……何故、私が行き遅れの後始末など。」
いつも穏やかで、人の外見について口にすることなどなかった辺境伯が、こうまで言うのだから。
「年齢や見た目をどうこう言うつもりはないが、あの女はごめんだ!」
辺境伯にしては珍しく、強い拒否を示す。
バレリア・イシャロット皇女、三十三歳。
現イシャロット帝国、皇帝の十歳も離れた妹。
数多くいる皇帝の兄弟の中で皇女は彼女一人であったため、特に甘やかされ何不自由なく育った女。
そのせいか素行が悪く、何度も婚約をしては破棄するという、迷惑極まりない女だった。
当然、辺境伯もいいイメージはみじんもない。
かつて、望みもしないパーティーで顔を合わせたあの女。
傲慢な態度と、香水臭いけばけばしさしか印象に残っていない。
耳障りなキンキン声で他国の令嬢にケンカを売り、「皇女だから」と上から目線で、公衆の面前で辱めた女だ。
辺境伯の知り合いの娘が、ただ挨拶に来ただけだったというのに。
その時、他の貴族子息に相手にされなかったからだろうか。
「私とダンスを踊ってくれたら、彼女は許して差し上げますわ。」
といわれ、ダンスぐらいなら……と承諾したのがいけなかったのだろうか?
彼女は皇女でありながら、独創的なリズムでお世辞なりにもダンスはうまくなかった。
一曲終わるまでに、あのかかとのとがった高いヒールで、何度足を踏まれたことだろう。
このときほど、風属性の魔法持ちだったことに、感謝したことはない。
バレないようにギリギリのところで避け、見た目にはうまく踊れているように細工した。
触れるのも嫌だったので、風魔法で防御膜を作り、触れているように見せかけることにも成功している。
あれ以上にきつい香水の匂いも、風魔法を駆使して分からない程度に散らせたくらいだ。
思い出しただけで、怒りと疲れが交差する。
ヨルムンド共和国の国王や重鎮たちも、あれこれ助言して断ろうとしたらしいが。
「問題ありませんわ。以前ダンスもご一緒しましたのよ。辺境伯様はきっと、私を辺境伯夫人にしてくださいます。」
と、やけに自信満々であるらしい。
冗談ではない、と頭を抱える兄を見かねて、弟のバーナード・ハイランズ伯爵はユーリに声をかけた。
「兄を助けると思って、婚約者のふりをしてくれないだろうか?」
「私が……ですか?」
突然の申し出に、きょとんとするユーリ。
「君は、平民の割には、所作がとても綺麗だ。まるで本物の貴族のご令嬢のようにね。」
そう言われ、ドキンと心臓が跳ね上がった。
「そ、そうでしょうか?」
「皆が、噂しているくらいにはね。」
そして今回のバレリア皇女の件を彼女に話して聞かせた。
「まあ。そんなに印象深い皇女様が、ローウェン様に求婚を?」
最近、彼が元気を失っていることには、なんとなく気づいていた。
何かある毎に、深いため息を漏らしているのを見るからだ。
体調が悪いのかと声をかけるも。
「大丈夫ですよ。ご心配、ありがとうございます。」
と、作り笑顔で返事を返される。
「ああ。兄はとても困っているんだ。あの通り仕事いっぺんな性格だったから、他に頼める女性もいないしね……。」
「あの……以前おっしゃっておりましたが、ローウェン様には、お心を寄せているご令嬢がいらっしゃると。その方にお願いは出来ないのでしょうか?」
ユーリは以前、話に上がったことを聞いてみた。
(それ、あなたのことなんですけどー!)
そう叫びたいところをギリギリのところで我慢するハイランズ伯爵。
「そうですね……今は難しいかと……。」
冷や汗をかきながら、必死にごまかしてみせた。
(兄上ー! 貴方の思いはまだ距離がありそうですー!)
内心は、全く届いていないであろう兄の思いに、涙を流す。
「そうなんですね……。」
そんな伯爵の思いなど全く分かっていないユーリ。
困ったような顔を向ける、ハイランズ伯爵に対し、ユーリは決心した。
ローウェン・ヴァレン辺境伯には、ずっとお世話になっている。
いつも世話になりっぱなしなのだから、せめてこのくらいは――。
「分かりましたわ。そのお役目、引き受けさせていただきます。」
そう答えたユーリの声は、思ったよりも静かで、しかし確かだった。
40
あなたにおすすめの小説
赤毛の伯爵令嬢
もも野はち助
恋愛
【あらすじ】
幼少期、妹と同じ美しいプラチナブロンドだった伯爵令嬢のクレア。
しかし10歳頃から急に癖のある赤毛になってしまう。逆に美しいプラチナブロンドのまま自由奔放に育った妹ティアラは、その美貌で周囲を魅了していた。いつしかクレアの婚約者でもあるイアルでさえ、妹に好意を抱いている事を知ったクレアは、彼の為に婚約解消を考える様になる。そんな時、妹のもとに曰く付きの公爵から婚約を仄めかすような面会希望の話がやってくる。噂を鵜呑みにし嫌がる妹と、妹を公爵に面会させたくない両親から頼まれ、クレアが代理で公爵と面会する事になってしまったのだが……。
※1:本編17話+番外編4話。
※2:ざまぁは無し。ただし妹がイラッとさせる無自覚系KYキャラ。
※3:全体的にヒロインへのヘイト管理が皆無の作品なので、読まれる際は自己責任でお願い致します。
一年だけの夫婦でも私は幸せでした。
クロユキ
恋愛
騎士のブライドと結婚をしたフローズンは夫がまだ婚約者だった姉を今でも想っている事を知っていた。
フローズンとブライドは政略結婚で結婚式当日にブライドの婚約者だった姉が姿を消してしまった。
フローズンは姉が戻るまでの一年の夫婦の生活が始まった。
更新が不定期です。誤字脱字がありますが宜しくお願いします。
嫌われたと思って離れたのに
ラム猫
恋愛
私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。
距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。
子供のままの婚約者が子供を作ったようです
夏見颯一
恋愛
公爵令嬢であるヒルダの婚約者であるエリックは、ヒルダに嫌がらせばかりしている。
嫌がらせには悪意しか感じられないのだが、年下のヒルダの方がずっと我慢を強いられていた。
「エリックは子供だから」
成人済みのエリックに、ヒルダの両親もエリックの両親もとても甘かった。
昔からエリックのやんちゃな所が親達には微笑ましかったらしい。
でも、エリックは成人済みです。
いつまで子供扱いするつもりですか?
一方の私は嫌がらせで寒い中長時間待たされたり、ご飯を食べられなかったり……。
本当にどうしたものかと悩ませていると友人が、
「あいつはきっと何かやらかすだろうね」
その言葉を胸に、私が我慢し続けた結果。
エリックは子供を作りました。
流石に目が覚めた両親とヒルダは、エリックと婚約破棄するも、今まで甘やかされたエリックは本当にしつこい。
ねえエリック、知ってる?
「私にはもっと相応しい人がいるのよ?」
非常識な婚約者に悩まされていたヒルダが、穏やかな結婚をするまでの物語。
婚約破棄されたので田舎で猫と暮らします
たくわん
恋愛
社交界の華と謳われた伯爵令嬢セレスティアは、王太子から「完璧すぎて息が詰まる」と婚約破棄を告げられる。傷心のまま逃げるように向かったのは、亡き祖母が遺した田舎の小さな屋敷だった。
荒れ果てた屋敷、慣れない一人暮らし、そして庭に住みついた五匹の野良猫たち。途方に暮れるセレスティアの隣には、無愛想で人嫌いな青年医師・ノアが暮らしていた。
「この猫に構うな。人間嫌いだから」
冷たく突き放すノアだが、捨て猫を保護し、傷ついた動物を治療する彼の本当の姿を知るうちに、セレスティアの心は少しずつ惹かれていく。
猫の世話を通じて近づく二人。やがて明かされるノアの過去と、王都から届く縁談の催促。「完璧な令嬢」を脱ぎ捨てた先に待つ、本当の自分と本当の恋——。
「君を愛することはない」と言われたので、私も愛しません。次いきます。 〜婚約破棄はご褒美です!
放浪人
恋愛
【「愛さない」と言ったのはあなたです。私はもっとハイスペックな次(夫)と幸せになりますので、どうぞお構いなく!】
侯爵令嬢リディアは、建国記念舞踏会の最中に、婚約者である王太子レオンハルトから婚約破棄を宣言される。 「君を愛することはない!」という王太子の言葉は、国中に響く『公的拒絶誓約』となってしまった。
しかし、リディアは泣かなかった。 「承知しました。私も愛しません。次いきます」 彼女は即座に撤退し、その場で慰謝料請求と名誉回復の手続きを開始する。その潔さと有能さに目をつけたのは、国の行政を牛耳る『氷の宰相』アシュ・ヴァレンシュタインだった。
「私の政治的盾になれ。条件は『恋愛感情の禁止』と『嘘がつけない契約』だ」
利害の一致した二人は、愛のない契約結婚を結ぶ。 はずだったのだが――『嘘がつけない契約』のせいで、冷徹なはずの宰相の本音が暴走! 「君を失うのは非合理だ(=大好きだ)」「君は私の光だ(=愛してる)」 隠せない溺愛と、最強の夫婦による論理的で容赦のない『ざまぁ』。
一方、リディアを捨てた王太子は「愛さない誓約」の呪いに苦しみ、自滅していく。 これは、悪役令嬢と呼ばれた女が、嘘のない真実の愛を手に入れ、国中を巻き込んで幸せになるまでの物語。
今さら執着されても困ります
メイリリー
恋愛
「これから先も、俺が愛するのは彼女だけだ。君と結婚してからも、彼女を手放す気はない」
婚約者・リアムが寝室に連れ込んでいたのは、見知らぬ美しい女だった――
アンドレセン公爵令嬢のユリアナは、「呪われた子」として忌み嫌われながらも、政略結婚によりクロシェード公爵家の嫡男・リアムと婚約し、彼の屋敷に移り住んだ。
いつか家族になれると信じて献身的に尽くすが、リアムの隣にはいつも、彼の幼馴染であり愛人のアリスがいた。
蔑まれ、無視され、愛人の引き立て役として扱われる日々。
ある舞踏会の日、衆前で辱めを受けたユリアナの中で、何かがプツリと切れる。
「わかりました。もう、愛される努力はやめにします」
ユリアナがリアムへの関心を捨て、心を閉ざしたその夜。彼女は庭園で、謎めいた美しい青年・フィンレイと出会う。
彼との出会いが、凍りついていたユリアナの人生を劇的に変えていく。
一方、急に素っ気なくなったユリアナに、リアムは焦りと歪んだ執着を抱き始める。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる