暗黒探偵 テスト用

ミロrice

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2 解決編

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「あなた」
 探偵は紳士を指差した。
 紳士はびくりと体を震わせた。
「な、なにかね?」
「教えてください。誰が吸血鬼なんです?」
「さ、さあ、なんのことだか、さっぱりわからんね」
 紳士は長身の青年にちらりと視線を送ってうつむいた。
「ふむ。あなたはわかりますか?」
 探偵は大男に視線を向けた。
「う、うう……」
 大男は顔色の悪い青年を一瞬見ると、うつむいて首を振った。
「なるほど。ご夫人、あなたはどうです?」
「さあ、わかりませんね」
 夫人はちらちらと青年に視線を送る。
「あなたは?」
 探偵は青年をみつめた。
「さあね」
 青年はまっすぐ探偵をにらみつけた。
「美魔梨さん、君は?」
「わかりません」
 美魔梨はじっと青年をみつめている。
「はあ」
 探偵は大きくため息をついた。
「みなさん、なかなか口が固いですね。ではひとりずつ正体を暴いていくしかなさそうだ」
 探偵は大男を指差した。
「あなたは、フランケンシュタインの怪物ですね?」
「な、なぜわかった⁉︎」
 大男は意外にしっかりした声で言った。
「んー、頭のボルトですかね?」
 探偵は自分のこめかみを人差し指でつついた。
「だからとっとと取っちゃえばって言ったのに」
 夫人が言うと、
「充電に必要なんだ」
 大男は大きな指先で、頭の横のボルトを摘まんだ。
「そういうアレなんだ」
 美魔梨が目を丸くした。
「ご夫人、あなたは――」
 探偵は夫人に視線を向け、目を細めた。
「わかるかしら?」
 夫人が流し目を探偵に送った。
 探偵はしばし考えこむ風だったが、やがて、
「――サキュバス、ですね?」
「あら、すごい」
 夫人は長い睫毛に縁取られた目を見開いた。
「なぜわかったの?」
「フェロモンがダダ漏れですからね」
 探偵はこともなげに言った。
「さて、問題は残ったおふた方だ」
 探偵は青年と紳士を交互に見やった。
 青年は鋭く探偵をにらみつけ、紳士は緊張した面持ちで探偵をみつめた。
「吸血鬼は――あなたですね?」
 探偵は青年を指差した。
「ふふふ――ふはははは! よくぞ見抜いた! なぜわかった!」
 青年の口から鋭い牙がのぞいた。
「あなたは吸血鬼のことを、かたくなにヴァンパイアと言った。これは吸血鬼の――いや、ヴァンパイアのプライドでしょう」
「え? そんな理由で?」
「他にも色々とあった気がするけど?」
 外野がひそひそとささやいたが、
「なるほど、無意識の言葉があだになったか。しかし小僧、ここから生きて出られると思うなよ!」
 吸血鬼の青年は口を大きく開き探偵を威嚇した。
「できるかな?」
 そう言った探偵の瞳が赤く輝く。
 その時、
「なんだ、騒々しい」
 広間の扉が開き、全身を包帯に巻かれた男が部屋に入ってきた。
「あなた!」
「あれ、ご主人? そうか! あなたはミイラ男だったのですね⁉︎ どうりで心臓は動いてないし、血も空っぽだったわけだ!」
「なーんだ」
 広間に全員の笑い声が響いた。
 ひとしきり笑ったあと、探偵は紳士に視線を向けた。
「さて、そうなるとわからないのはあなただ。あなたは一体何者ですか?」
 探偵が言うと、紳士は真顔になり、体が細かく震えはじめた。その震えは徐々に大きくなる。
 紳士の顔が左右で段違いにずれた。
 その顔が左右に開き、断面には尖った牙が生えている。
 体のどこかから、細い触手が何本も現れた。
「物体Xだったか!」
「くそっ! 紛れ込んでいたとは!」
 紳士の触手が探偵たちに襲いかかった。

  おしまい
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