聖迷宮~相姦AIラプソディ~

中井春一郎

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後記

終わりの始まり

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 アルファポリスに投稿するには不向きな『聖迷宮~相姦AIラプソディ~』を

最後までお読みいただいた方には感謝するしかありません。ただ、不遜を承知で

申し上げると、この作品は傑作『戦争と平和』を書いたトルストイの創作精神に

習って執筆したものです。


 『戦争と平和』は大長編ですが、トルストイが書き上げたものは、もっと長大

なものだったそうですね。ナポレオンのロシア侵攻を背景にした大ロマンの間に

何度も、トルストイ自身の世界観・歴史観をまるで学者の論文のように、長々と

書き連ねていたからです。夫人が『あなた、この部分は削除なさい』と言って、

トルストイに心服する若い作家も削除を強く進言したので、今我々が読むことの

できる『戦争と平和』になったようです。でも、トルストイはしぶとく論文調の

部分を残しています。このことでドストエフスキーが完全無欠の小説と絶賛した

『アンナ・カレーニナ』に較べ、読みにくいものになっていますが。


 僕が『聖迷宮~相姦AIラプソディ~』で書きたかったことは二つあります。

 一つは、性の迷宮を巡ること。

 もう一つは、僕にしか書けないこと、僕としては書いておかなければいけない

ことを表出すること。

 この二つめが、トルストイ夫人が『あなた、この部分は削除なさい』と進言を

した部分に当たります。読者の中にも、知ったかぶりをして偉そうにする、嫌な

奴だとお感じになった人が多かったと思いますが、それを承知の上で書き連ねた

訳です・・・。

 
 性の迷宮巡りも、僕の世界観・歴史観も、真っ暗闇のアン・ハッピーエンドと

なることは、書き始めから、ひとまず書き終えた今も、全く揺らいでいません。

 このことは、僕の少年時代の原体験と深く関わるので、少し私事を書くことに

します。日本国憲法、それの日本国民の受け止め方に、絶望すら感じているのは

本編である程度は書いているので、ここでは触れませんが。

 
 我が家の八月六日は必ず深夜に始まりました。狭い家なので台所に灯りがつき

母親が台所仕事を始めたことが判ります。父親の弁当作りです。

 我が家は広島県内でも広島市からは遠方なので父親は空がまだ真っ暗なうちに

オートバイに乗って出発しなければ原爆慰霊祭に間に合わないからです。

 死ぬまで地区の被団協の代表だけは辞めなかった、少しケロイドの残る父親の

胸に抱かれて僕は育ちました。十歳になると原爆資料館に連れていかれましたが

その時の恐怖感は今でも忘れられません。

 時々、夜中に目が覚めると必ず頭に浮かんできたのは、核ミサイルが真っ暗な

空を飛んでいて、もうすぐ落ちてくるという光景でした。


 少年の僕が初めて覚えた哲学的な用語は『不条理』です。

 今でも、全くそうだなと思っています。

 かといって、ニヒルな人間だとは思わないでくださいね。

 性的嗜好はノーマル過ぎるほどの凡人。

 立小便以外は法律違反をしたことが無い、善良(?)な小市民です。

 十五歳の時に、農薬をまき散らすゴルフと、排気ガスをまき散らす自動車の

運転は、大人になっても絶対にしないと決め、これだけは順守しているので、

交通違反の切符を切られることも、死ぬまで無いはず。

 
 しかし、このホラーな国のホラーな人々の中で暮らしていると、僕の世界観と

歴史観の毒ガスをまき散らしたいという願望を押さえることが出来ません。

 ある程度は『聖迷宮~相姦AIラプソディ~』の中で書きましたが、まだ十分

とは言えません。

 という訳で『25周年カップ』の期間中は本編の推敲を重ねると共に、補遺の

形で壺中庵淫斎とメフィストフェレス社長に仮託し、大抵の人は読みたくも無い

ことを書き連ねることにします。

 本音を言えば、本編などどうでもいいから補遺だけでも読んでいただきたいと

いうのが僕の願望です。

 小説の執筆動機としては、邪道中の邪道ですが。

 


 



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