すべてkissのせい~愛されて甘やかされて

早河 晶

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~はじまり

3話 まさかの展開

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カナタと、その先輩のタモツは幼馴染だ。カナタの姉とタモツが同学年、カナタとタモツの妹が同学年、そして近所に住んでいたこともあり、家族ぐるみの付き合いがあった。
生意気な弟妹に比べ、素直なカナタはタモツにとって可愛い弟分。姉より兄が欲しかったカナタにとっては、あこがれの兄貴分。
そんな関係で、タモツが働くカフェに、フロアスタッフとしてのバイトを紹介したり、アパートの更新時期が、渡航時期より早くて困っていたのを、自宅に受け入れたりする仲だった。

そんな可愛い弟分のカナタから、気になっていた娘に、日本を離れる直前になってようやく声をかける決心をつけたことを聞かされ、応援しつつも、その相手が、自分も気になっていた隣の店の女の子だと分かったときは、少なからず動揺した。

動揺したけれど、とりあえず頑張れと背中を押して、カナタの最後のバイトの日、暖かく見守った。

翌日が定休日で遅番の時、いつも立ち寄る店があり、そこに行けば、胸の奥のもやもやも紛れると思っていたのに、今日に限って臨時休業だった。
大先輩であるその店の大将は、しぶっていた孫娘の結婚式に出ることにしたらしく、前回訪ねた時は「絶対行かない」と豪語していたのに、結局『諸事情により数日休みをいただきます』というそっけない貼り紙をしただけで、休みをとっていた。

「結局行くなら、さっさと決めてくれてればいいのに」
そうつぶやき、やりきれない気持ちのまま、自宅に戻った。
もしかしたら、ふられてしょんぼりしたカナタが一人、いるかもしれない。
もしかしたら、楽しい時間を過ごして、テンションがやたら高い状態でいるかもしれない。
どちらにしても、面倒なことには変わらないと思いつつ、自宅に戻ると、玄関に小さな女物の靴が置いてあり、ダイニングキッチンと部屋を仕切る扉は閉ざされ、何とも言えない熱波を感じた。

まさか、この部屋に連れ込んで、いちゃついているとは想像しなかった。
そんなタイプだとは思っていなかっただけに、衝撃だったけれど、若いながらも包容力がありそうな彼女のこと、意外かと言えば、そういうこともありえたのか。と肩を落とす。

いちゃつく現場に踏み込むのも無粋だが、自分の部屋なのに、あてもなく外に出るのも気に食わない。
とりあえずシャワーを浴びて、冷えた体を温め、頭をすっきりさせたい。
もしかしたら、その音で帰宅に気づき、シャワーを浴びている間に彼女を返してくれるかもしれないし。
そう考えて、浴室でシャワーを浴びる。

「くそっ」
思わず声をあらげ、壁を拳でなぐる。

自分の部屋でカナタが彼女にしていることを想像すると、やはりなんとも腹立たしい。

地味で平凡だと自己認識しているメグミだが、その認識ほど、地味でも平凡でもなかった。
たしかに、鏡に映る姿や、写真に残る姿は、まさに地味で平凡。
だが、止まっている姿が可愛いタイプもいれば、動いてこそのタイプもいる。
メグミはまさに後者で、顔のつくりは平凡で、可もなく不可もないが、だからこそ、楽しそうに笑ったり、真剣なまなざしや、のんびりしつつも気配りに長けた動作など、見るものを惹きつける何かがある。

そして、カフェでランチを食べるときに、一人でも必ず食べる前に手を合わせて、小さく「いただきます」という姿や、食べている時の幸せそうな顔、スプーンを運ぶ動作の美しさ、食べ終わった食器を自ら片付けて、厨房に入る許可さえあれば、食器も洗おうとする姿など、どれをとっても好ましく映っていた。

今年の新年会では、隣に座ることが出来、乾杯のビールをちょっと口にして
「炭酸は苦手なんです」という彼女に
「ビールは炭酸じゃなくホップだけどね」と言ったら
ちょっと驚いたような恥ずかしそうな顔をして
「じゃあ、しゅわしゅわするのが苦手ってことで」と笑って見せた、その愛くるしさを思い出すと、もっと早く行動しておくべきだったと後悔するのだった。

熱いシャワーの後、冷たい水にかえて、頭を冷やす。

どうか、シャワーから出たら、もう彼女はここにいませんように。
もし、まだいたら、その時は・・・

その時、どうするのが一番だろうか。

浴室から出て、からだを拭き、トランクスとスウェットのズボンだけを身に着け、上半身は裸のままタオルで髪をぬぐいながらダイニングに続く扉を開ける。
玄関を見ると、残念ながら、まだ靴がある。
部屋に続くドアは閉ざされたまま。

「んっはぁっ、ちっちからが、はいらないよぉ」

小さく聞こえたその艶っぽい声に、血液が一気に下半身に行くのを感じる。
今、屹たれては困る。
意志の力で何とかおさめ、冷蔵庫から冷たい水を取り出し、渇ききった喉を潤す。

ふーっと深く息を吐き出し、深呼吸を繰り返す。

部屋に続く扉に手をかけ、思い切って開いた。

「これはちょっとないんじゃないの。カナタ君」

声をかけると、こちらに背中を向けていたカナタがビクッと震え、恐る恐るの体でこちらを振り向く。

床に寝かされていた彼女も起き上がり、慌てた様子でスカート(だろうか?)で前を隠す。

「タッ、タモツさん・・・・、いいいいつも、もっと遅いのに」
動揺したカナタがどもりながら、そういうので
「いつもの店が、休みだったんだよ」
ぶっきらぼうに答えた。

唇を悔しそうに噛みしめながら、キッとタモツを見上げ
「ごめん。タモツさん。こんなつもりじゃなかったんだ。
でも、うどんを一本ずつすする姿が可愛くて、たくさん歩かせても楽しそうで、あのスイーツとお酒の店にいったら、緊張しながらも、目をキラキラさせている姿も可愛くて、それで、もっと一緒にいたいって思って、つい、連れてきちゃったんだ。
何もしないつもりだったけど、無理で・・・
で、キスしたら、歯止めがきかなくて・・・・」

最後のほうは小声になり、うつむくカナタ。
しゃべりながら、自分でもどうしてこんなことに?と思っているのかもしれない。

そのカナタの言い分を聞いている時、メグミはいちいち反応して、可愛いって言葉が出るたびに、驚いて目をぱちくりさせている。
自分の今の格好などおかまいなし。

乱れた髪の毛、細い首、鎖骨、前を隠したスカートから除く曲線、なまめかしい脚。
もう我慢も限界だ。

「そうか、気持ちは分かるよ。
メグミちゃんは確かに魅力的だ。しかし、どうする?お前は三日、いやあと二日もしたら日本を出る。店もやめているから関係ないよな。
でも、このままだと、俺たちはとても気まずいだろう。これからも毎日店で顔を合わせるんだからな」

そう。
もしこのまま彼女を返したら、休み明けに、どんな顔をすればいいのか、メグミにもタモツにもわからない。
もしかしたら、いたたまれなくなって、店をどちらかが辞めることになるかもしれない。
それは絶対に避けたい。
だったらいっそ

「だから、俺も参戦する。そしてメグミちゃんを、とことん気持ちよくさせることにした」
「えっ!?」
おどろく二人をよそに、タモツは部屋に入り扉をしめ、メグミのもとへ。
そしてそっと抱き上げて、耳元に口を近づけ

「大人はもっとすごいよ」と、息を吹きかけながら囁く。
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