王女殿下の大罪騎士〜大罪人にされたので、第三王女の騎士になる〜

天羽睦月

文字の大きさ
11 / 39
第2章

第11話 ステラとメア

しおりを挟む
「ノア君! どうして一人で行動したの!」
「あなたは私を怒らせたいのですか?」

 怒る二人を前にして、心臓の鼓動が次第に早くなるのを感じる。
 何を言っても論破されて土下座をする未来しか見えないと考えていると、メアが「私が悪いの」と声を上げてくれた。

「私がお母さんを救ってほしくて声をかけたの! ノアは悪くないの!」

 助けてくれるのは嬉しいが、まさかの呼び捨てだった。
 名乗り出たメアを見たステラが口に両手を当てて驚いた表情をしているが、リルは相も変わらずノアを睨みつけている。

「メ、メアなの……本当にメアなの?」
「そうだよ、ステラちゃん。急にいなくなってごめんね」
「メアぁ~」

 涙を流しながらステラがメアを抱きしめたと同時に、ノアはリルに頬を叩かれてしまっていた。

「痛いよ……」
「当然です。急にいなくなって、どれほど姫様が辛かったか分かりますか?」
「分からないです……」
「一緒に戦う誓いを破られたって泣いていたのですよ? あなたを騎士にして国を変える覚悟は相当なモノなのです。再度姫様を泣かせたら、私が引導を渡すと覚えておいてください」
「わ、分かりました……」

 相当怒らせてしまったようだ。
 ルナを取り戻せると思い、勝手に行動をした罰だろう。だが、リルに殺されてしまうのは勘弁したい。

「気を付けるし、二度と誓いを破らないよ」
「信じられませんが、今は信じます。もう裏切らないでください」

 美人に睨まれるのはどこかゾクゾクする。
 決してマゾではないと思うが、以前にヘリスが美人に怒られると気持ちがいいぞと言っていたことを思い出してしまう。

「おやっさんが言っていたことはこれか……確かに分かる気がするけど、毎回は嫌だな」

 ヘリスのことを思い出して微笑していると、ノアと呼ぶ声が聞こえてくる。

「ノア来てー! 早くー!」
 
 メアが変わらず呼び捨てで名前を呼んでくる。
 やめてと言っても性格的に変えることはないだろう。抱き合いながら手招きをしてくるので、溜息をつきながらノアは近寄ることにした。

「どうした? 何かあったのか?」
「ステラちゃんにも作戦のことを話したんだけど、協力してくれるって!」

 まさか了承されるとは。

「リルにも話してくるから、少し待ってて!」
「あ、おい!」

 呼び止めようとしたが走ってリルの側にステラが行ってしまう。
 ノアはリルが賛成してくれるか分からないので、黙って連れて行こうと考えていたがそれは叶わないらしい。

「ステラちゃんが作戦に乗ってくれないと思ってた?」
「少しね。だって思いっきりヴェルニの側に行くわけだからさ、大罪人を騎士にしたことや国に反旗を翻しているからな。王族とはいえ殺されかもしれないし」
「そうだね。だけど、そこはノアが守るんでしょ?」
「当然だ。死ぬわけにはいかないけど、守れるだけ守るつもりだ」

 嘘は言っていない。
 ルナを救うまでは守るつもりだ。その先は考えていないが、今はこれでいい。
 ノアはリルと話しているステラを優しい眼差しで見つつ、守らないとと小さな声で呟いていた。

「な~に~。ステラちゃんのこと好きなの~?」

 何を勘違いしたのか、ノアがステラを気になっているような言いぶりだ。

「好きとかじゃないよ。年下みたいだから、ルナみたいな妹だと思っているさ。怪我をしないか、何かしでかさないか見ているだけだ」
「本当に~? ま、いいけど。何かステラちゃんのことで知りたいことがあったら聞いてね」
「聞く機会はないと思うけど、覚えておくよ」

 横腹を小突いてくるメアを横目で見つつ、真剣に話している二人を見ていた。
 とても話しが長い。時折難しい顔をしているリルだが、どうやらステラの説得により納得したようだ。

「お待たせ! リルさんも納得してくれたから地下通路に行きましょう」
「納得というわけではないですが、今はそれしかないと思ったので」

 それでも一緒に来てくれることに安堵したノアは、リルに頭を下げた。

「ありがとうございます。これでルナも救えます」
「まだ感謝の言葉は早いですよ。救い出せてからその言葉を下さい」
「そうだな。そうするよ」

 戦った時からリルは頼もしいと感じている。
 優しさと強さを兼ね備えている人は敵だと恐ろしいが、味方だと頼もしい。ノアに足りない要素を備えているので、少しでもモノにしていこうと思える王国騎士だ。

「さて、話も纏まったし行きましょうか!」
「行こうー! 待っててねお母さん!」

 ステラの号令で都市サレアに向かうことにした。
 不安ばかりが膨らむ。多分メアの計画通りにはいかないだろう。ヴェルニにより妨害や、都市サレアにいる王国騎士と戦闘になることは避けようがない。それでも地下通路を通って見つからずに入るしかない。

「不安ですか?」
「そうだな。正直に言うとトントン拍子に進むとは思えないんだ。絶対戦闘になるし、その時にステラやメアを絶対に守れる自信がない」

 前を笑顔で歩く二人を見つつ、横を歩くリルに相談をした。
 すると、予想外の答えが返って来たのである。

「一人で守ろうとする必要はないです。私が一緒に守りますから、ノアは前だけ見て戦ってください」
「ありがとう。そう言ってくれて嬉しいよ」

 二人で微笑していると、前を歩くステラが「熱々だね」とからかってくる。

「ち、違うますよ姫様!」
「強く否定するのが怪しいわよー」

 クスクスと笑うステラの側に駆け寄って、必死に否定しているリル。
 そこまで否定をしなくてもと思うが、好きなステラにそこまで言われて嫌なのだろう。そんな楽しそうな雰囲気を出しながら、都市サレアに向かうための通路がある平屋に向かうことにした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます

時岡継美
ファンタジー
 初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。  侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。  しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?  他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。  誤字脱字報告ありがとうございます!

追放された『ただの浄化係』、実は国中の魔石を満たしていた精霊姫でした〜今さら戻れと言われても、隣国のイケメン皇帝が離してくれません〜

ハリネズミの肉球
ファンタジー
「おい、城の噴水が止まったぞ!?」 「街の井戸も空っぽです!」 無能な王太子による身勝手な婚約破棄。 そして不毛の砂漠が広がる隣国への追放。だが、愚かな奴らは知らなかった。主人公・ルリアが国境を越えた瞬間、祖国中の「水の魔石」がただの石ころに変わることを! ルリアは、触れるだけで無尽蔵に水魔力を作り出す『水精霊の愛し子』。 追放先の干ばつに苦しむ隣国で、彼女がその力を使えば……不毛の土地が瞬く間に黄金のオアシスへ大進化!? 優しいイケメン皇帝に溺愛されながら、ルリアは隣国を世界一の繁栄国家へと導いていく。 一方、水が完全に枯渇し大パニックに陥る祖国。 「ルリアを連れ戻せ!」と焦る王太子に待っていたのは、かつて見下していた隣国からの圧倒的な経済・水源制裁だった——! 今、最高にスカッとする大逆転劇が幕を開ける! ※本作品は、人工知能の生成する文章の力をお借りしつつも、最終的な仕上げにあたっては著者自身の手により丁寧な加筆・修正を施した作品です。

転生調理令嬢は諦めることを知らない!

eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。 それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。 子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。 最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。 八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。 それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。 また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。 オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。 同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。 それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。 弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

処理中です...