魔法の世界で新たな人生を~捨てられた人生のやり直し~

天羽睦月

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第28話 回復魔法

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美桜はスマートフォンを見ながら何かの動画を見ているようであった。

「茜がそこに紐を通すなんて! そんなのありなの!? はぁ!? その穴にまた紐を通すの!? おかしいわ!」

美桜が一人で動画を見ながら笑っているとそれに気を取られて集中して素振りが出来ない出雲は、美桜の方に歩いて行って何を見ているのと話しかけた。美桜は教えなーいと舌を出しながら立ち上がって出雲から小走りで離れる。

「あ、待ってよ!」

出雲は逃げる美桜を小走りで追うと、足元がふらついて地面に倒れてしまった。

「出雲! 大丈夫!?」

美桜が駆け寄って倒れた出雲を揺さぶると、大丈夫だよと出雲が返答する。

「意外と疲れてたみたいで素振りやりすぎたかも!」

そう息を切らしながら美桜に言うと、少し休んだら回復魔法教えてあげると美桜が地面に座りながら右横にいる出雲に言う。出雲は回復魔法マジかと言って教えてもらえるんだとウキウキであった。

「そろそろふらつき治まってきたよ。 心配かけてごめんね!」

ゆっくり出雲が立ち上がると、美桜も立ち上がる。美桜は出雲に約束していた通りに、私の使用してるリキュアを教えるねと話しかける。

「リキュア! 回復魔法を覚えられる!」

出雲は喜んでいると、美桜が回復魔法は扱いが難しいから気を付けてと言う。

「そんなに難しいの? 美桜は軽々と使ってたような気がするけど?」

出雲は以前自身に使ってくれた美桜を思い出すと、それほど難しいのかなと考えた。しかし、美桜は回復魔法は自身の魔力を使用して相手の治癒力を刺激して治癒をするという魔法であると言う。

「治癒力を刺激してか! 何か凄い魔法だね!」

出雲がそう言うと、そう簡単でもないし凄くもないんだと美桜が言う。出雲はどうして凄くないのと美桜に聞くと、治癒魔法は使用相手の身体に魔力を流して治癒能力を刺激したり細胞を操作するから、一歩間違えると殺してしまうかもしれないと言った。

「そんな! 回復魔法はそんなに危険で難しい魔法なんだ…‥」

出雲は俯いてしまい、そんな危険な魔法を扱えている美桜が凄いとも思っていた。

「でも美桜はその魔法を使いこなしてる! なら俺だっていずれは使えるはず!」

美桜は出雲のその意気込みを聞いてその意気だよと言うが、コツは教えられるけど実践でしか習得は難しいからいざという時まで試験では使わない方がいいよと美桜は言う。

「回復魔法は使える人が極端に少ないし、医療関係者でも使える人はほぼいない魔法なんだ。 魔力操作が特に難しいし、一流と言われる人でも何十年と訓練してやっと回復魔法を全て使えるようになったらしいし」

出雲は説明を受けてそんな魔法を俺なんかに教えるんだろうと思いつつも、試験のためかと思うことにした。

「今何で俺にそんなに難しい回復魔法を教えるって思ったのかって考えたでしょ? それはね、出雲には必要な魔法だと思ったからよ」

自分に必要だから。そう聞いた出雲はどうしてだろうかと思った。自分でも理由が分からなかったので、美桜から見たら回復魔法は俺にとってこの世界で生きるために必要不可欠なんだと納得することにした。

「出雲が行うこの時期の試験は、戦闘を伴うことが多いみたいなの。 私の時は筆記試験と面接だけだったけど、出雲の時期の試験は実力が試される試験でもあるのよ」

実力が試されると聞いて、自身にそんな実力があるのか分からなかった。しかし、美桜は雫との訓練で同じ年齢の人達や試験を受ける人達よりも数歩前にいるはずと出雲を鼓舞した。

「ありがとう! 美桜や雫さんに教わったことや訓練をしたことを試験で活かすよ!」

出雲が美桜に笑顔で言うと、美桜はその意気よと出雲の背中を軽く叩いた。そして、二人を夕食ですよと呼ぶ雫の声を聞いた出雲と美桜は笑顔のまま食堂に小走りで向かう。

食堂に到着をすると既に使用人達を含めた雫が席に座っており、出雲と美桜を待っているようである。そして、二人を見た雫は早く席に座ってくださいと言って料理を使用人達と共に運び始めた。

「今日の夕食はハンバーグと目玉焼きにワカメサラダです!」

雫が胸を張って料理の説明をすると、出雲が雫さんが作ったんですかと震え声で聞いた。すると、雫は私も手伝いましたと出雲に言った。

「マジですか! 辛くないですか!?」

出雲が震えていると、雫が今日はちゃんと教えてもらいながら作りましたとドヤ顔になった。

「そ、そうですか……なら大丈夫かな?」

出雲が頷きながらハンバーグを一口食べると、美味しさの中に喉の奥から溢れる辛さが飛び出てきた。

「あがががががが! ぐぁ!」

出雲が辛する味に耐えきれなくて椅子ごと後方に勢いよく倒れてしまった。その様子を見た美桜と雫はすぐに出雲に話しかけて水を飲ませようとコップに水を注ぎ始めた。
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