真夏のかいだん

cherry

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最終話 ー最後の記憶ー

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    翌朝、夫は異変に気づいた。

 二階の押し入れは再び板で塞がれ 
釘が打ち直されていた。

 だが――真理子の姿だけが消えていた。

 息子は泣きながら言う。

 「夜中にママが奥の間に入っていった……
       あの女と一緒に」

 夫が震える手で釘を外したとき
押し入れの奥はただの壁になっていた。

 もう「奥の間」そのものが
    存在していなかった。

 ただ一つ、板の裏に鉛筆で
書かれた走り書きが見つかった。

 「返して……私はここにいる」

――終わり
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