ユートピア

細雪

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理想郷の昼

成り上がるか、蹴落とすか

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母親が食器を片付けているのを横目で見ながら、『家族団欒』の時間を過ごす。
学校のこと
会社のこと
同輩のこと
後輩のこと……。
我が家で話す内容はこんなことばかりだ。
会話というよりは、ただの報告会。
そんな気さえしてくる。
「……由紀。学校の試験はそろそろだろう。首尾はどうだ。」
「いつも通り、かな。特に変わったことはないよ。」
或いは、矢面に立たされ真綿で首を絞められるような退屈な時間。
……自分の成績を上げるのではなく、私の成績が落ちることを願う時点で……別に、辛くもないのだが。
「そうか。」
ねえ、お父さん。
娘の成績が良いと聞いて不服そうな顔をしないでよ。
「相変わらず、天才だな。」
ねえ、お兄ちゃん。
妹をそんなに睨みつけないでよ。
「勉強したからだよ。」
家に居ても、心が休まることはない。
むしろ、踏み込んでくる相手だからこそ。
嫌な思いをすることが増える。
学校にだって、どうせ居場所はないけれど。
私の居場所なんて、どこにもないけれど。
私が一番嫌いな場所は家族がいるところで。
会話を避けられない時間だ。
はやく、自由時間になってしまえ。
祈るような気持ちで、時計塔を眺めた。
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