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第1章
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「君も、もうそろそろもっと広い世界を見るべきだと思う」
月に一度の訪問の際に、婚約者のショーン様が突然こうおっしゃった。
「トーミリエ、君が世界一優秀な家庭教師の元で学んでいた事は知っているよ。既に君の知識量は計り知れないという事も。
そして今更王都の学園に入っても、学問的には得るものが少ないだろうという事もね。
しかし、本以外の生きた知恵も必要だとは思わないか?」
彼は少し、いや大分言い辛そうにこう言葉を続けた。
「ほら、諺にもあるだろう? 『井戸の中の蛙大海を知らず』って」
つまり、私が自分の領地から一歩も出た事がないから、視野が狭いとおっしゃりたいのですね?
ですが、我がロックアップ男爵家の領地は王国一広いのですよ。独立してもおかしくないくらいに。もちろんご存知でしょうが。
我が領土は海あり山あり、谷あり、湖、沼、大河、平野と自然に恵まれ、林業、農業、漁業、それに伴う工業が盛んです。
金銀銅鉄などの鉱山、あっ、ダイヤモンドやルビーなど、地下資源も豊富です。
温泉や美しい景観の観光地にも恵まれています。
それ故に国内外からいらっしゃるお客様とも交流をさせて頂いて、情報は学園で学ぶものよりも最新で、それこそ生きた学問をしていると思うのですが・・・
ほら、先程の井戸の諺には、『・・・されど空の青さを知る』という続きがあるじゃないですか。
限られた場所にいるからこそ、深い所までわかるものだと。
私は遠い王都にある学園に態々入りたいなどとは、これまで一度たりとも思ったことはありませんでした。
去年学園を卒業した姉と在学中の妹から話を聞く限り、この私にはあまり役に立つとは思えませんでしたので。
しかし、大切な婚約者にこう言われてしまえば、私は学園に編入しなければならないでしょう。
「また君と一緒に勉強がしたいんだ。せめて卒業までの一年くらい君と学園生活を送りたい。
そして卒業パーティーで愛する君とダンスを踊りたいんだ」
だなんて。
しかし、婚約者が強引に私を誘った真意は、そんな甘ったるものではありませんでした。
本当のわけは、王都の王立学園に編入してすぐにわかりました。まあ、多少予想はしていたのですが。
✽
私が学園に編入して以来、婚約者のショーン様はずっと私の側から離れようとはしませんでした。
レストルー厶以外はずっと一緒。しかし、それは私といちゃつきたかったわけでもありませんでした。
そして当然私を守る為でもありませんでした。
その証拠に寮に戻る際は、私の方がショーン様を男子寮へ送ってから女子寮へ戻るのですから。
しかし、それは婚約者からボディーガードを頼まれたというわけではありませんよ。ショーン様は武闘大会で優勝するくらいお強い方なんですからね。
「まあ。そんなにショーン様にぴったりとくっついているなんて、淑女としてみっともないですわよ」
「いくらショーン様を取られるのが心配だからって。伯爵家と男爵家では身分の差がありますものね」
「おうちの方が大変なら、わざわざ王都へ出ていらっしゃらないで、田舎の方でお待ちになればよかったのに。何故あと一年お待ちになれなかったのですか?」
私は女子寮に戻ってくる度に、サロンで女子の集団に囲まれます。
何故この王都に私が来たのかと言えば、婚約者に懇願されたからです。そう、あなたがたから逃れて勉強をしたいと・・・
月に一度の訪問の際に、婚約者のショーン様が突然こうおっしゃった。
「トーミリエ、君が世界一優秀な家庭教師の元で学んでいた事は知っているよ。既に君の知識量は計り知れないという事も。
そして今更王都の学園に入っても、学問的には得るものが少ないだろうという事もね。
しかし、本以外の生きた知恵も必要だとは思わないか?」
彼は少し、いや大分言い辛そうにこう言葉を続けた。
「ほら、諺にもあるだろう? 『井戸の中の蛙大海を知らず』って」
つまり、私が自分の領地から一歩も出た事がないから、視野が狭いとおっしゃりたいのですね?
ですが、我がロックアップ男爵家の領地は王国一広いのですよ。独立してもおかしくないくらいに。もちろんご存知でしょうが。
我が領土は海あり山あり、谷あり、湖、沼、大河、平野と自然に恵まれ、林業、農業、漁業、それに伴う工業が盛んです。
金銀銅鉄などの鉱山、あっ、ダイヤモンドやルビーなど、地下資源も豊富です。
温泉や美しい景観の観光地にも恵まれています。
それ故に国内外からいらっしゃるお客様とも交流をさせて頂いて、情報は学園で学ぶものよりも最新で、それこそ生きた学問をしていると思うのですが・・・
ほら、先程の井戸の諺には、『・・・されど空の青さを知る』という続きがあるじゃないですか。
限られた場所にいるからこそ、深い所までわかるものだと。
私は遠い王都にある学園に態々入りたいなどとは、これまで一度たりとも思ったことはありませんでした。
去年学園を卒業した姉と在学中の妹から話を聞く限り、この私にはあまり役に立つとは思えませんでしたので。
しかし、大切な婚約者にこう言われてしまえば、私は学園に編入しなければならないでしょう。
「また君と一緒に勉強がしたいんだ。せめて卒業までの一年くらい君と学園生活を送りたい。
そして卒業パーティーで愛する君とダンスを踊りたいんだ」
だなんて。
しかし、婚約者が強引に私を誘った真意は、そんな甘ったるものではありませんでした。
本当のわけは、王都の王立学園に編入してすぐにわかりました。まあ、多少予想はしていたのですが。
✽
私が学園に編入して以来、婚約者のショーン様はずっと私の側から離れようとはしませんでした。
レストルー厶以外はずっと一緒。しかし、それは私といちゃつきたかったわけでもありませんでした。
そして当然私を守る為でもありませんでした。
その証拠に寮に戻る際は、私の方がショーン様を男子寮へ送ってから女子寮へ戻るのですから。
しかし、それは婚約者からボディーガードを頼まれたというわけではありませんよ。ショーン様は武闘大会で優勝するくらいお強い方なんですからね。
「まあ。そんなにショーン様にぴったりとくっついているなんて、淑女としてみっともないですわよ」
「いくらショーン様を取られるのが心配だからって。伯爵家と男爵家では身分の差がありますものね」
「おうちの方が大変なら、わざわざ王都へ出ていらっしゃらないで、田舎の方でお待ちになればよかったのに。何故あと一年お待ちになれなかったのですか?」
私は女子寮に戻ってくる度に、サロンで女子の集団に囲まれます。
何故この王都に私が来たのかと言えば、婚約者に懇願されたからです。そう、あなたがたから逃れて勉強をしたいと・・・
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