箱入り男爵令嬢ですが、それが何か問題ですか?

悠木 源基

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第2章

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 私は幼い頃から護身術を習っていて、なかなかの腕前だと自負しています。
 
 私が体術、剣術、槍術、そして吹矢まで嗜んでいる事はショーン様もよく知っています。婚約してからは一緒に自衛の騎士団と訓練していましたからね。
 
 幼い頃、姉が身代金目的で誘拐されかかった事があったので、それ以後我が家の二ダース程いる兄弟達は、皆護身術を習わされているのです。
 
 兄弟が二ダースいると言いましたが、両親から生まれたのは姉と私と妹、そして年の離れた弟だけです。
 他の二十人の兄弟達はまあ、正式には実の兄弟ではありません。精神的には本当の兄弟だと思っているのですが。
 
 先の戦争で夫を亡くし、子供を抱えて生活に貧窮している寡婦となられた方々を、父が領土のポイントとなる地の責任者として配置して、仕事を任せているのです。
 
 そして父は、片親でも差別されないように、その子供達の後ろ盾になっているのです。
 世間では(いや母親までも)、領土全体にハーレムを形成していると勘違いしているようですが。
 王都に出るまで私は、彼女達の間を巡って領土内の情報を収集し、そして必要な情報を適切に広める係をしていました。まあ、父の補佐役的なポジションですね。
 
 そんなロックアップ領の重要ポストにいる私を攫って、借金苦の領土に連れて行くのですから、ショーン様はそれはそれは必死に勉学や武道に励んでいらっしゃいます。(ショーン様の家は伯爵家ですが極貧です)
 
 その結果、学園に入学してからずっと首位をとり続けていらっしゃるようです。(まあ、ショーン様なら当然ですが)
 
 その上ショーン様は黒髪に濃いエメラルドグリーンの瞳をした、いわゆるイケメンなんだそうです。
 確かに整ったショーン様のお顔を私は大好きなのですが、元々美醜には拘らないたちですので、もしショーン様が鬼瓦のような顔をなさっていたとしても、私はきっと好きになったとは思いますが。
 
 まあ、私の好みはともかく、ショーン様はとにかくおもてになるのです。
 授業を受けている時以外はご令嬢達に付き纏われ、声をかけられ、手紙を渡され、デートに誘われ、黄色い声をあげられ・・・

 ショーン様が悪いわけではないのに、図書館や食堂も出入り禁止になってしまったそうです。騒々しいし邪魔になるからと。
 先生方に何度も注意をしてもらったのだそうですが、事態は一向に収まらなかったそうです。
 
 その上男子生徒からは妬まれて友人もできないし、なかなか相談する相手もいなかったので、かなり辛い学園生活だったそうです。
 しかし、そんな彼に友人が出来るきっかけとなったのが、なんと私の存在だったそうです。
 
 
 いつまでたっても纏わりつくご令嬢達に、入学してから三年たったある日、ショーン様はとうとう我慢ができなくなって、皆様方にこうおっしゃったそうです。
 
「もういい加減僕に付き纏うのはやめてください。僕には婚約者がいるので、婚約者以外の女性と交際するつもりは絶対にありません。
 そもそも婚約者に相応しい人間になるためにこの学園に来たのです。
 ですから、お願いですからもう勉強の邪魔をしないでください」
 
 もう学園中大騒ぎになって、ご令嬢達の態度は変わるどころか、余計に騒々しくなってしまったようです。
 
 ただ、婚約者や好きなご令嬢を奪われる心配がなくなった男子生徒の方は、急に態度を軟化させ、その結果ようやく友人が出来るようになったのだそうです。
 
 特にバッハーマ侯爵家のご次男のヒルマン様とはすっかり意気投合したそうで、彼と行動を共にすることで、再び食堂や図書館も使用できるようになったんだそうです。
 
 まあ、そうは言っても、当然ながら年がら年中友人にくっついているわけにもいかなかったので、その後もまだまだ大変だったらしいのです。
 
 
 
 ショーン様は別に私の存在を隠したかったわけではないようです。むしろ自慢したいくらいだったとおっしゃったので、私も照れてしまいました。
 ですから早めに婚約者がいる事を公表したかったらしいのですが、私の名前が知られると、在席中の姉に迷惑がかかると思って言えずにいたのだそうです。
 そして結局はその心配の通りになってしまいました。
 
 
「とにかく凄かったわよ。毎日大勢の女生徒に何重にも囲まれて。
 ショーン様の婚約者は私ではなくて妹だと説明しても、そんな事一切関係なし。
 妹さんってどんな人なんですかって根掘り葉掘り聞こうとしてくるのよ。
 それを知ってどうするの?って思ったわ。一億ペンドうちに支払えるっていうのかしらね?」
 
 以前、夏休みになって学園から戻ってきた姉がそう言っていました。生々しいからお金の話はやめて!
 
 そう。何故私とショーン様が婚約したのかと言えば、そもそも隣の領地の主であるショーン様の父親イイラント伯爵様が、我がロックアップ男爵家に資金援助を依頼しに来られたのがきっかけだったのです。

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