箱入り男爵令嬢ですが、それが何か問題ですか?

悠木 源基

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第6章

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 私が心の中で色々とツッコミながらも、表面上令嬢らしく澄ました顔で黙っていると、私の正面に立っていらしたソーナット侯爵家のナタリア様が、こう言いました。
 
「来週の期末テストの後で星祭りの夜会が催されるわ。あなたはその時に、皆様の前でショーン様との婚約を解消しなさい」
 
 と。
 
 私の周りを囲んでいたご令嬢達も次々と同じことを言ってきました。
 
 意味がわかりません。
 
 私が小首をかしげると、人巻きの外側にいらしたホフスト伯爵家のイボンヌ様が、小さいけれどはっきりした口調でこうおっしゃいました。
 
「婚約解消だなんて、関係のない方が口を挟む事ではありませんわ」
 
「関係ないですって。私達は同級生ですわ」
 
「同級生といっても、クラスメートでも友人でもないじゃないですか。
 それにたとえもし本当に友人だったとしても、他所の家の婚姻関係に口を出す権利はありませんわ。
 それではもし私が貴女に婚約者と別れなさいと言ったら、貴女はお別れになるのですか?」
 
 イボンヌ様はその場にいた子爵令嬢に向かってこう言いました。
 すると彼女はブルブルと頭を左右に振りました。子爵令嬢は自分より爵位の低い私には理不尽な事を平気で言えても、自分よりも爵位が上のイボンヌ様には何も言えないご様子です。
 
「貴女、最近ずいぶんと偉そうじゃないの? ずっと私に苛められてきたくせに」
 
 苛めているって自分で言ってしまいましたよ、侯爵令嬢。
 いいんですかねぇ。確か貴女のお父上は文科大臣で、我が国の教育機関等には一切苛めなどないと、毎年国王陛下に報告なさっていましたよね。
 しかしイボンヌ様がずっと苛められてきたという事実が明確になれば、大臣は五年間ずっと嘘の報告をなさっていたという事になるのですが。
 
 
 私が編入してきたばかりの頃、たまたまイボンヌ様が苛められているところに遭遇してお助けしてから、私達は友人となりました。
 
 イボンヌ様はおとなしい性格の優しい方ですので、侯爵令嬢のナタリア様に言い返す事ができず、苛めの対象にされてしまったようです。
 しかし彼女と少し接しただけで、彼女が頭脳明晰だという事はわかりましたので、彼女にこうアドバイスしました。
 
「おとなしく黙っていると相手は図に乗り、エスカレートします。
 ですから冷静に理論的に言い返してください。相手に理解されなくても構わないので。
 むしろわからないくらいの方がいいのです。人間って、自分が理解出来ない事を言われると不安になって怖くなりますからね」
 
 まぁ私が大人しくしているのは、単にタイミングを計っているだけです。ショーン様を邪魔する方々に一斉に静かになってもらうために。

 その後、私の助言が功を奏したのか、最近ではイボンヌ様はもう苛められてはいません。
 むしろ今までの事を侘びて、友人になって欲しいと言ってくる人達が増えていらっしゃいます。
 その方達は漏れなく私とも友人になって下さいました。
 そして、彼女達はナタリア様側の情報をいつも教えて下さるので、とてもありがたいです。
 
 もちろん私に近づいてくる方々の中には私の家の事を知っていて、卒業した後の繋がりを期待しておられる方もいるのでしょう。
 しかし、貴族や商売をなさっている家の方なら当然です。
 親御さんもその為にわざわざ高い学費を支払ってまで、知的レベルのそれ程高くないこの学園に子供を入学させているのでしょうから。
 
 むしろ私や妹にわざわざ敵対してくる方々の気がしれません。
 彼らは学生なのに自国の歴史を学ばないのでしょうか? 
 新聞の経済面や社会面をご覧にならないのでしょうか?
 
 ✽
 
 そして例の侯爵家令嬢だけでなく、公爵家のご子息まで彼女達と同レベルだった事に私は驚きを隠せませんでした。
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