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愛はどんな困難も乗り越える
しおりを挟むアリスティには信じられないけれど、この国生まれの女性ならば、この暑さにもまだどうにか我慢出来るらしい。
しかも市井の人々などは、まだ普通に地上で働いているのだという。
しかし、他国から嫁いで来たお嫁さんの多くは、この暑さを知るともう耐えられないと離縁を言い出す人が多いらしい。
予め話を聞いて覚悟して嫁いできても、想像を絶する暑さに耐え切れずに逃げ出すのだそうだ。
いくらなんでも暑過ぎる、こんな国で一生暮らすなんて嫌だと。
そして離婚に応じてもらえなかった場合、花嫁が逃げ出して、不注意に外にある物に触れて大火傷を負ったり、熱中症にかかって倒れたり、そのまま亡くなったりするという悲劇が多々起こるようになった。
そのせいで近頃では、他国の者との結婚を避ける人も出てきたらしい。
ボルドール公爵ブルーノもそんな悲劇は起こしたくなかったので、国内から花嫁を迎えようと思っていた。
しかし、赴任先の国のリゾート地で、彼は一人の女性に一目惚れしてしまった。
そして王城のパーティーで偶然に彼女と再会したブルーノは、意を決して彼女へ交際を申し込んだ。
雪の降るゲレンデで遭難しても、歌を歌っていられるような前向きで逞しい女性なら、母国へ連れ帰っても大丈夫ではないかと。
しかも彼女は仕事で付き合いのあった伯爵家の令嬢で、彼女の両親の許しも得る事が出来た。こうして二人の仲は急速に進んだ。
ブルーノの思いは強くなる一方だったが、自国の問題を考えるとなかなか結婚の話を切り出せずにいた。
すると、伯爵夫妻の方から婚約話を持ちかけられた。
そこで彼は正直に自国の事情を説明した。彼女を愛しているからこそ尚更騙して連れ帰る訳にはいかなかったからだ。
ところがだ。
伯爵は国の外交部門にいたので、当然隣国の情報は把握していたのだ。
そしてそれを知りつつ夫妻はこう言ったのだ。
「愛は試練が大きければ大きいほど燃え上がるものです。
そして燃え上がった熱い心は何よりも強いのです。
今まで恋愛に全く関心のなかったあの子が恋をしたのだから、君への思いが、たかが暑い寒いだのの気候問題くらいで、貴方への愛情を無くす訳がありません。
ですから気にせず連れて帰って下さい。
ただし、最初に話をしてしまうとびびってしまう恐れもありますから、夫婦生活が安定してから真実を教えた方がいいですよ!」
「・・・・・・」
ああ、諸悪の根源は私の両親でしたか……
ええ、ええ、私は夫のブルーノ様を愛している。
たかだか四十度超えの猛暑くらいで負けたりはしない。
土竜のような生活にも、大好きな植物研究が出来なくても我慢する。
しかし、正直に言ってもらえたら、自分は夫に相応しくないと落ち込んだり、醜い嫉妬をしなくて済んだのにと、ちょっと悔しい。
それにこの事を知っていたら、もっと早くに色々と対策を考えられたかもしれないし。
例えば冬場の雪を貯めておいて夏場の温度を下げるのに利用するとか、地下の中でも育つ植物を研究するとか……
そう私が話すと、夫は一瞬驚いた顔をしてから、嬉しそうに破顔した。
「それは、これからも僕と一緒にいてくれると言う事かい?」
「当たり前でしょ。
この世で一番強いのは愛の力よ!
愛があれば二人でなんでも乗り越えられるわ!」
私は上半身を起こすと、ベッドに腰を下ろしていた夫に思い切り抱き付いたのだった。
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