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Trac08 独りんぼエンヴィー/koyori 後編
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ジョンの手がTシャツの下から入ってくる。
胸の辺りをさ迷って、先を探り当て摘まれた。暖房が切れたせいか少しスースーする。
「もう勃ってんだけど」
ちょっと暗さに慣れてきたけど動く気配が分かるくらいで、表情は全然見えない。ただ愉しそうにしてるのは分かる。
「舐めていい?」
「好きにすれば」
ジョンはこちらに身を乗り出すが、サイドブレーキが邪魔、とくつくつと喉を鳴らした。
乳首を押し潰すように舐めながら
「気持ちいい?」
と聞いてくる。
「いちいち聞くなよ」
「だって顔見えないし」
「じゃホテル行けばいいじゃねえか」
「ヤダ。一回イッてから」
太腿を伝って、ファスナーに手がかけられる。
暗くて全然見えない、と言いながらもペニスを取り出される。
「アハッこっちも勃ってる」
「言葉責めウザい」
「俺は大好き」
そこに手を当てたまま身体にのしかかってきて、耳元に唇を当てられた。くすぐったいけれども、吐息に湿った耳に声が響くとぞわりとする。
ジョンの手がゆっくりと動き始めた。
「気持ちいい?声だしてよ」
「いやだね」
そう言われると出したくなくなる。
息が深くなってきた。真っ暗な中に水音が響く。わざとだなこの野郎。耳元で感じる息が濃くなってきている。ヤツも昂っているのだ。
「イクまでやっていい?」
声を我慢しながら頷く。
俺のも握って、と手を持ってヤツのペニスに導かれる。
硬くなってたソレを手の平で包むと、ピクリとジョンの身体が揺れた。
「ゆっくりでいいから擦って」
ヤバイ。持たなくなってきた。白いチカチカした光が舞っている。
「ほら、頑張って」
ジョンが手を重ねて俺の手を動かす。
クソッタレ。楽しそうでなによりだな。
俺の喉の奥からくぐもった声が出ると同時に、どろりと温かい液体が溢れた。
「あーあ、イッちゃった」
恍惚さを孕んだジョンの声はめちゃくちゃエロかった。
ティッシュどこだっけ、と後ろの座席を探る気配がする。
「全然見えないんだけど。あ、あった」
ティッシュを引き抜く音がして、ジョンの身体がこちらに戻ってきた。俺にも渡される。
「俺イッてないんだけど」
絶対ニヤニヤしてやがるコイツ。
「ホテルで抜いてやるよ」
「じゃ挿れていい?」
「いいよ」
「へえ、ネコだったんだ」
「リバだよ」
「マジで?どっちもいけるんだ」
ジョンはシートベルトを締めた。
「あ、パンツはいた?」
「とっくにしまったよ」
俺もシートベルトを引く。
「じゃホテル行こっか」
ジョンは嬉々としてキーを回した。
ホテルでもジョンはやりたい放題だった。
泡風呂でヤッてみようぜ、とかカーテン開けてみない?とか。まあ付き合ったけど。そしたら
「この変態」
と艶のある唇を無駄にエロく引き伸ばしながら言われた。
散々付き合ってやったのにその言い草はなんだ。
「お前相当遊んでんだな。見た目が大人しそうなヤツがヤバイってマジなんだな」
ジョンはシャワーを浴びた後、濡れた髪を拭きながら言った。タオルがとらえきれなかった滴が均整のとれた筋肉の凹凸に沿って流れていく。もうクタクタなのにムラっときた。
「警官とかがハメ外す時ヤバイってのもマジなんだな」
服を着ながら言い返してやった。
「ストレス溜まるんだよ」
「まだ警察官やってんの?」
「やってるよ。お前は?」
「フリーターだよ」
そうじゃなくて、と前置きして
「ちゃんと家帰ってんの?」
と聞かれた。
「帰ってるよ」
と答えると、そっか、と安心したようにジョンは笑った。
「ま、ちょっとはマシな顔するようになったしな」
「しっかり覚えてんじゃねえか」
「思い出したんだよ。いやあ、16歳に手ェ出してビビっちゃってさ。ちょっと大人しくしてたらお前どっか行っちゃうし」
それが避けてた理由か。やっぱコイツはクズだクズ。
「寂しかった?」
ジョンはにっと歯を見せて笑う。
「全然」
その頃はヤリまくってたからな。今はカホやユウジもいる。
「あれ?何それ」
服を指差されて、腰の後ろの辺りを見てみると、キャラクターのシールが付いていた。
「カホだな」
アイツ帰ったらどうしてくれようか。てかユウジも気づいてたな。どうりで出かける時ニヤニヤしていたはずだ。
「何、子どもいるのお前」
「姪っ子だよ」
「へえ、今いくつ?」
「4歳」
「そっか、ガキはいいよな。制服着てるだけで目ぇキラキラさせてさ。俺、ガキの頃はカッコイイおまわりさんになりたかったんだよな」
そう言うジョンの目にも流れ星のようにキラリと光が通り過ぎた。
すぐに甘いマスクに苦々しさが混じって、今はこんなやさぐれたヤツになっちまったけどな、と眉を下げながら笑う。
ヤツがなんで警察官を続けているのか、いつもニコニコした笑みを貼り付けていたのか、分かった気がした。多分、憧れた警察官像が、心の中に残っているんだと思う。
だからって、クソ変態という評価は変わらないけどな。
ホテルから出て車に乗り込むと
「今も住んでるとこ変わってないの?」
って聞かれた。
「送らなくていい」
「じゃ、駅まで。あ、ガソリン代はいいよ」
無茶振りにも付き合ってもらったし、と妖艶に微笑む。
無茶振りってのも全然許容範囲だったんだけど黙っとくか。コイツも相当だけど俺マジで変態なんだな。
駅のロータリーに車を停めると、あの時と同じように去り際にキスされた。
「よかったらまた連絡して」
「気が向いたらな」
「アハッそれでもいいよ、またな」
走り去る黒いフィールダーは、夜に溶けていった。
変な気分だった。
ジョンと初めてホテルに行ったあの夜は、家に帰らなきゃって思うと苦しくてこのまま消えてしまいたかった。
でも、同じような状況なのに全く違うことを考えている。あの頃はあんなに帰りたくなかったのに、今は早く帰って眠ってしまいたくて仕方ない。
ジョンと会わずに過ごした時間の長さと変化を自覚した。
山下達郎の歌に"あの日あの時あの場所で君に会えなかったら僕らはいつまで他人のまま"っていうフレーズがあったけど、俺とジョンは再会しても、これからまた会う機会があっても、きっと他人のままなんだろう。
翌朝、起きてきたカホに朝一でデコピンしてやった。
痛がってたから昨日貼られたシールを額に貼ってやる。
「コラ。もうすんなよ」
「痛い!ハジメちゃんのバカ!おまわりさん呼ぶよ!」
思わず笑いそうになった。
「コラ、イタズラしたのはカホだろ。ごめんなさいは?」
ユウジが朝食を運びながら言う。オイ、お前が言うな。昨日の内に言っとけ。
「・・・ごめんなさい」
ふくれっ面をしてたから頬をつついてやる。口から空気がぶっと出てきて、カホはケタケタ笑い出した。
「おい、できたぞ」
「ハジメちゃん、おいで!」
ユウジが俺を呼んで、カホが俺の手を引いていく。
どこかで見たような光景だ。
でも、悪くない気分だった。
end
to be WALKMAN2nd
胸の辺りをさ迷って、先を探り当て摘まれた。暖房が切れたせいか少しスースーする。
「もう勃ってんだけど」
ちょっと暗さに慣れてきたけど動く気配が分かるくらいで、表情は全然見えない。ただ愉しそうにしてるのは分かる。
「舐めていい?」
「好きにすれば」
ジョンはこちらに身を乗り出すが、サイドブレーキが邪魔、とくつくつと喉を鳴らした。
乳首を押し潰すように舐めながら
「気持ちいい?」
と聞いてくる。
「いちいち聞くなよ」
「だって顔見えないし」
「じゃホテル行けばいいじゃねえか」
「ヤダ。一回イッてから」
太腿を伝って、ファスナーに手がかけられる。
暗くて全然見えない、と言いながらもペニスを取り出される。
「アハッこっちも勃ってる」
「言葉責めウザい」
「俺は大好き」
そこに手を当てたまま身体にのしかかってきて、耳元に唇を当てられた。くすぐったいけれども、吐息に湿った耳に声が響くとぞわりとする。
ジョンの手がゆっくりと動き始めた。
「気持ちいい?声だしてよ」
「いやだね」
そう言われると出したくなくなる。
息が深くなってきた。真っ暗な中に水音が響く。わざとだなこの野郎。耳元で感じる息が濃くなってきている。ヤツも昂っているのだ。
「イクまでやっていい?」
声を我慢しながら頷く。
俺のも握って、と手を持ってヤツのペニスに導かれる。
硬くなってたソレを手の平で包むと、ピクリとジョンの身体が揺れた。
「ゆっくりでいいから擦って」
ヤバイ。持たなくなってきた。白いチカチカした光が舞っている。
「ほら、頑張って」
ジョンが手を重ねて俺の手を動かす。
クソッタレ。楽しそうでなによりだな。
俺の喉の奥からくぐもった声が出ると同時に、どろりと温かい液体が溢れた。
「あーあ、イッちゃった」
恍惚さを孕んだジョンの声はめちゃくちゃエロかった。
ティッシュどこだっけ、と後ろの座席を探る気配がする。
「全然見えないんだけど。あ、あった」
ティッシュを引き抜く音がして、ジョンの身体がこちらに戻ってきた。俺にも渡される。
「俺イッてないんだけど」
絶対ニヤニヤしてやがるコイツ。
「ホテルで抜いてやるよ」
「じゃ挿れていい?」
「いいよ」
「へえ、ネコだったんだ」
「リバだよ」
「マジで?どっちもいけるんだ」
ジョンはシートベルトを締めた。
「あ、パンツはいた?」
「とっくにしまったよ」
俺もシートベルトを引く。
「じゃホテル行こっか」
ジョンは嬉々としてキーを回した。
ホテルでもジョンはやりたい放題だった。
泡風呂でヤッてみようぜ、とかカーテン開けてみない?とか。まあ付き合ったけど。そしたら
「この変態」
と艶のある唇を無駄にエロく引き伸ばしながら言われた。
散々付き合ってやったのにその言い草はなんだ。
「お前相当遊んでんだな。見た目が大人しそうなヤツがヤバイってマジなんだな」
ジョンはシャワーを浴びた後、濡れた髪を拭きながら言った。タオルがとらえきれなかった滴が均整のとれた筋肉の凹凸に沿って流れていく。もうクタクタなのにムラっときた。
「警官とかがハメ外す時ヤバイってのもマジなんだな」
服を着ながら言い返してやった。
「ストレス溜まるんだよ」
「まだ警察官やってんの?」
「やってるよ。お前は?」
「フリーターだよ」
そうじゃなくて、と前置きして
「ちゃんと家帰ってんの?」
と聞かれた。
「帰ってるよ」
と答えると、そっか、と安心したようにジョンは笑った。
「ま、ちょっとはマシな顔するようになったしな」
「しっかり覚えてんじゃねえか」
「思い出したんだよ。いやあ、16歳に手ェ出してビビっちゃってさ。ちょっと大人しくしてたらお前どっか行っちゃうし」
それが避けてた理由か。やっぱコイツはクズだクズ。
「寂しかった?」
ジョンはにっと歯を見せて笑う。
「全然」
その頃はヤリまくってたからな。今はカホやユウジもいる。
「あれ?何それ」
服を指差されて、腰の後ろの辺りを見てみると、キャラクターのシールが付いていた。
「カホだな」
アイツ帰ったらどうしてくれようか。てかユウジも気づいてたな。どうりで出かける時ニヤニヤしていたはずだ。
「何、子どもいるのお前」
「姪っ子だよ」
「へえ、今いくつ?」
「4歳」
「そっか、ガキはいいよな。制服着てるだけで目ぇキラキラさせてさ。俺、ガキの頃はカッコイイおまわりさんになりたかったんだよな」
そう言うジョンの目にも流れ星のようにキラリと光が通り過ぎた。
すぐに甘いマスクに苦々しさが混じって、今はこんなやさぐれたヤツになっちまったけどな、と眉を下げながら笑う。
ヤツがなんで警察官を続けているのか、いつもニコニコした笑みを貼り付けていたのか、分かった気がした。多分、憧れた警察官像が、心の中に残っているんだと思う。
だからって、クソ変態という評価は変わらないけどな。
ホテルから出て車に乗り込むと
「今も住んでるとこ変わってないの?」
って聞かれた。
「送らなくていい」
「じゃ、駅まで。あ、ガソリン代はいいよ」
無茶振りにも付き合ってもらったし、と妖艶に微笑む。
無茶振りってのも全然許容範囲だったんだけど黙っとくか。コイツも相当だけど俺マジで変態なんだな。
駅のロータリーに車を停めると、あの時と同じように去り際にキスされた。
「よかったらまた連絡して」
「気が向いたらな」
「アハッそれでもいいよ、またな」
走り去る黒いフィールダーは、夜に溶けていった。
変な気分だった。
ジョンと初めてホテルに行ったあの夜は、家に帰らなきゃって思うと苦しくてこのまま消えてしまいたかった。
でも、同じような状況なのに全く違うことを考えている。あの頃はあんなに帰りたくなかったのに、今は早く帰って眠ってしまいたくて仕方ない。
ジョンと会わずに過ごした時間の長さと変化を自覚した。
山下達郎の歌に"あの日あの時あの場所で君に会えなかったら僕らはいつまで他人のまま"っていうフレーズがあったけど、俺とジョンは再会しても、これからまた会う機会があっても、きっと他人のままなんだろう。
翌朝、起きてきたカホに朝一でデコピンしてやった。
痛がってたから昨日貼られたシールを額に貼ってやる。
「コラ。もうすんなよ」
「痛い!ハジメちゃんのバカ!おまわりさん呼ぶよ!」
思わず笑いそうになった。
「コラ、イタズラしたのはカホだろ。ごめんなさいは?」
ユウジが朝食を運びながら言う。オイ、お前が言うな。昨日の内に言っとけ。
「・・・ごめんなさい」
ふくれっ面をしてたから頬をつついてやる。口から空気がぶっと出てきて、カホはケタケタ笑い出した。
「おい、できたぞ」
「ハジメちゃん、おいで!」
ユウジが俺を呼んで、カホが俺の手を引いていく。
どこかで見たような光景だ。
でも、悪くない気分だった。
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みんなの感想(1件)
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こんにちは。いつもTwitterでイイネありがとうございます。
1話目を読んでみました。殺伐とした主人公だなぁと思ったら、あたたかい、いい話でした。
窓枠の下に黒い筋がついた、などの描写がいいなあと思いました。
お返事が遅くなりすみません。お読みいただき、また、感想をくださりありがとうございました。
はじめてこのサイトで感想をいただきドキドキしております。
リアルな描写を心がけた作品で、描写を褒められて嬉しいです。
捻くれ者の擦れた主人公ですが、シーズン2もありますので見守っていただけると幸いです。