狸の尻子玉が河童に狙われる話

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後編

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気づけば白ブリーフもスーツのズボンも脱がされ白玉団子のようなもちもちした尻を突き出すようにして布団にうつ伏せになっていた次第である。
 川端はたっぷりした左右の尻たぶを下からすくい、たぷたぷと上下に動かしたりその肉の重さを掌に受けてたりして柔らかな感触と重さを楽しんだ。
 スーツに包まれた尻のぱつぱつむちむちの感触も悪くなかったが、それから解放された尻の柔らかさと言ったら。手のひらからこぼれ落ちるほどの大きさと柔らかさに川端は感動すら覚えた。
「はあ、パンツ履かなきゃいいのに」
 尻を揉む手に集中しているため変態発言がぽろりと溢れるが、バコさんは聞こえませんとばかりに布団で頭を隠している。
 手のひら全体でバコさんの尻を揉みしだいていると
「あの……尻子玉は?」
 布団からこもった声がした。
「いきなり突っ込んだら尻切れちゃうよ? だから今解してんの」
 と言うのはもちろん嘘である。河童はスポーンと手を突っ込んでスポーンと尻子玉を取り出すことなど朝飯前だ。しかし今まで我慢してきた分思う存分尻をかわいがってやりたいし、これが最後の機会かもしれないと思うとすぐ終わらせてしまうのももったいない。
 二つ並んだ白玉団子のような尻はオッさんのものとは思えないほどつやつやもちもちである。を左右から寄せるとむにっと盛り上がるのが美味そうに見えてかぷりと甘噛みしてしまったのはご愛嬌。ついでに割れ目に顔を埋めぱふぱふしたり、すーっと匂いを吸ったりしたら怒られた。
 だが川端はケロリとして白玉団子がマシュマロのように柔らかくなるまで揉み続けたのであった。
 バコさんがそろそろ腰が痛くなってきたとぼやく。布団を被っていたので、暑くなったのかふうふう言いながら出てきて、ぺしょりと布団にうつ伏せになった。
 川端は構わずバコさんの尻たぶを押し広げる。菊門にぶにゅっと人差し指が差し込まれた。職業柄爪は手入れしてあるし河童の肌はぬるっとした粘液に覆われているので、痛みも抵抗もなく入ってしまった。
「ひえっ」
 とバコさんの悲鳴とともに狸尻尾が一瞬現れて消える。
 バコさんの尻は中身もむちむちで、川端の指は上下左右を突っつき回し、内側からもその感触を楽しんだ。
 あんまり熱心に尻をこねくり回していたからか、川端の額にも汗が滲む。それだけではない。川端の股間のキュウリもむくむく育ってきた気がする。人間や他の仲間と相撲をとるうち先っちょが入ったり入らなかったりという事故はある。そのまま若い河童たちが本格的な夜の大相撲場所(河童界の隠語)を繰り広げることはままあるが、尻子玉をほじくり出すときには股間のキュウリのことなど露ぞ考えない。
 尻に夢中になりすぎたかと考えるが、バコさんがそろりと手を上げる。
「えーっと……川端さん、その……ちょっとトイレに」
「もしかしてチンコ勃った?」
 ビクッと肩を弾ませるバコさんに合わせ、尻の肉がたぷんと揺れる。
「大丈夫大丈夫、尻の中触られたら誰でもチンコ勃つもんだから」
「そういうもんなんか⁈」
「そうそう、前立腺? だっけ。ほらここ」
 尻のエキスパートである川端は、隘路を潜り小ナスのようにぷくりとした膨らみをすぐ見つけ出した。指の腹で引っ掻けば、バコさんの身体は大きな饅頭のように丸まった。尻は桃のようにほんのりピンクに色づきぷるぷる震えている。
「そ、そこもう触らんと……ひぁっ」
「あ、ごめん。じゃやめるわ」
「ぅあっ、指ぃ……」
 しこりから離れ指を抜きかけて、中指と人差し指を束にして再び尻の中に突っ込んだ。グニグニ押し広げるように中へと進んでいく。
「もっ、いつ終わるんや」
 ふうふう言いながら肩を上下させるバコさんの目の前に、緑がかった腕がにゅっと現れる。
「こんくらいまで入れないとダメなんだけど」
 手首から肘まで川端が指差せば、バコさんは青い顔になる。
「まだ慣らした方がいいけど、どうする? もういっちゃう?」
 バコさんはぷるぷる首を振る。
「よーしじゃあ次はチンコ挿れてみよっか」
「なんで⁉︎」
「腕よりは楽勝だって。イケるイケる」
「いやそうやけど……いやなんで⁉︎河童ってみんなそんなんするん⁉︎」
「夜の大相撲場所って知らない?」
「知らんがな!」
「じゃ逆に狸はオス同士でヤッたりしないの?」
「いやあ……おらんこともないけど……」
「はーいいっきまーす」
 川端の股間のキュウリがバコさんの尻に侵入する。それも粘液に塗れておりずぶずぶと根元まで浸かってしまった。
 川端のキュウリは精霊馬のごとく元気いっぱいで、腰を打ちつけるたびにぶるんぶるんと中で暴れ回る。バコさんはひんひん啼きながら背中を丸めているが、尻の孔はきゅんと締まって川端のキュウリを美味そうに食んでいた。尻たぶに腰がぶつかる振動で白い肉が揺れ、パチンペチンと小気味良い音を立てる。
「あー、バコさんの尻マジで最高だわ」
 両手で掴む尻肉は蕩けるように柔らかく、中も肉の密度が高くキュウリがいい塩梅に浸かっている。
「ひぃっ……もう嫌や……情けない……」
「なーに言ってんだよ、バコさんはサイコーだよ」
「取り柄が尻だけて……」
「だぁかぁらぁ……あーもう後にするわ」
 川端はバコさんの尻を鷲掴みし、陰嚢に詰まった白い煩悩を吐き出すべく腰を振る。獣の交尾のような激しさにバコさんの全身の肉が揺れた。
「うあ、あ、あ、か、堪忍して……」
 隈に縁取られたつぶらな目には星が舞っている。バーコード頭からは耳が、尻からは尻尾が飛び出しもういっぱいいっぱいだ。川端からは見えないが、腹肉に埋もれたバコさんのチンコは、よく太った茄子のようにパツンパツンに張り詰めていた。
 太い腕で前進して布団から抜け出そうとするも、川端がバコさんの背中にがばりと覆い被さった。
「どーこ行くんだよ」
と腕を回され身体をがっちりホールドされる。
「どこにも行くなよぉ……」
 いつもより湿っぽい声が聞こえて、バコさんは狸耳をピクリと動かした。顔は見えないが、川端の腕に力が入る。バコさんはもう少しだけ付き合ってやろうとふうふう息を切らしながら尻に力を込めた。
 川端は堪らず腰を大きく打ち付けた。頭の皿から水かきの先までびりびりと稲妻が走る。急いで尻から抜け出すと、その上に白くて苦い液体が振り撒かれた。
 川端は全身で息をしながら机の上のティッシュを引き出し、バコさんの尻の上にぺしょっと貼り付ける。そこで力尽きてごろりと横になった。
「えええ……」
 と呆れつつ、バコさんは短い腕を伸ばして尻を拭く。しばらく二人してふうふう言いながら畳や布団に転がっていた。
「あーあ、バコさん、風呂借りていい?」
 川端が頭を掻きながら起き上がる。
「えっ、尻子玉は?」
「なんか……もういいかなって」
「ええええ⁉︎なんでなん⁉︎」
「あ、そんな見たかった? んじゃほれ」
 川端はバコさんを布団にひっくり返し仰向けにする。両膝の裏を掬って持ち上げ、尻の孔が見えたところで躊躇いなく手をズボッと入れた。そう、手首から先がずっぽりである。さらにずんずん腕が入っていく。
 ぎゃー! とバコさんから悲鳴が上がるが痛みはまったくない。そもそも先ほど川端のキュウリが入っていたところとは全く別の場所を触られているような感覚だ。
 そして川端が手を引き出した時には、指先で白い紐のようなものを摘んでいた。その白い紐のようなものの先っちょには、ノビルやラッキョウくらいの玉がついておりぴょこぴょこ空中で跳ね回る。その度に金粉を振り撒くようにキラキラ輝いていた。
「え、何⁉︎何これ⁉︎」
「何って尻子玉」
「そんな小さいんか?」
「先っちょだけだから」
「だから先っちょて何⁉︎体から出して大丈夫なん?」
「大丈夫大丈夫、先っちょだけだから。それより見てよ、活きがいいしめちゃくちゃピッカピカ。
こんなん百年に一度拝めるかどうかだよ」
 川端は目をキラキラさせながら尻子玉をじっと見つめる。
「食べていい? コレ」
「あかんあかんペッしいや、ペッ!!」
「しょうがないなあ、戻しとくか」
 玉の部分を摘み、バコさんの尻の孔にグッと差し込む。尻子玉はあっという間に尻の中に消えていった。
「ええ……どないなっとるん……」
「バコさんの一部だからねえ、元の場所に戻っただけ。
いやあいいモン見たわ。あれはバコさんが辛抱強く磨き上げたんだよ、並の狸や人間には無理だよ。もっと胸張っていいと思うけど? 俺はバコさんのそういうとこが好きなの」
 バコさんは真っ赤になって縮こまる。言葉もない様子に、「バコさんだってどうでもいいヤツにチンコ突っ込ませるようなヤツじゃないでしょ」と川端は追い討ちをかける。バコさんはますますカチコチになった。
「うーん、マジで干からびそうだから風呂借りるわ」
 どっこいせ、と立ち上がる川端は、干からびるどころかツヤツヤ潤っているように見える。それをツッコむ元気はなく、バコさんはしゅるしゅると再び狸の姿に戻ってしまう。
 シャワーで全身を潤し皿の水も補充してきた川端が風呂から出てくると、バコさんは狸の姿のままくうくう眠っていた。今度は狸寝入りではないらしくわしゃわしゃ毛をかき混ぜても起きない。
「達者でな、バコさん」
 乱した毛並みを整えてやりながら、川端はそう呟くのであった。

 翌週の金曜日、バコさんと川端は何ごともなかったかのように"天海の鬼火亭"に現れた。
 お互いがお互いに、脈がありそうならあるいはと目論んでいたのだが、あまりに相手が普段通りに振る舞うものだから、やはり酒の失敗ということにしようと日和ってしまったのである。色恋の仕方や駆け引きなんぞとうの昔に忘れてしまった。
 やがて特に進展もないまま、バコさんは四国に旅立った。
 それからも、川端は週末になると独りで"天海の鬼火亭"に通っている。
 サラダマティーニを店で傾けているがどこか味気ない。もう秋口に差し掛かり、キュウリの旬も終わりがけかとキュウリの糠漬けを頬張る。
 するとチャイナドレスを纏った美女が隣に座った。尻からは九本の狐の尾が扇のように広がっている。尻はキュッと引き締まった美しい形をしているが、川端の好みではない。
「玉藻ママじゃん。独りで珍しいね」
 玉藻はニコリと微笑み会釈する。
「バコさん地元帰っちゃったんだよ、ママ聞いてた?」
 玉藻は首を振りお品書きを広げた。
「はあーあ、バコさんママに憧れてたみたいだよ? なんにも言わずにいっちゃったかあ。まあ俺もだけど」
 玉藻の柳眉がピクリと動く。川端を見れば、ふてくされたように肘をついてキュウリをポリポリ齧っている。
「いいキュウリ食ってもなんか味気なくてさ、バコさんと飲む酒が一番美味かったんだよなあ。惚れたとか腫れたとかもう忘れちゃったけどさあ、俺バコさんがいないとダメみたいだわ、今度会えたら……って」
 ふと川端が玉藻に目をやると、饅頭の妖怪がいた。吊り目の周りに隈ができて、ほっそりした輪郭はぷくぷく丸くなり、チャイナドレスに包まれた身体は肉まんのように膨れていた。
 川端は思わず口からキュウリを噴き出す。
「ど、どうしちゃったの⁉︎」
 オロオロ狼狽えているうちに、九本の尻尾は一本にまとまり、長い髪の生えた頭頂部は薄くなっていきバーコード模様になっていく。玉藻の座っていた椅子には、ワイシャツにネクタイを締めたバコさんが背中を丸めていた。
「え、えっ、嘘! バコさん⁉︎ 帰ったんじゃなかったの⁉︎」
「帰ったよ、跡目継いだ兄ちゃんのお披露目に参加してきたんや。里帰りて言うてなかったっけ?」
「店長ぉ!」
 川端が叫ぶも、海老原はしれっと澄まし顔で「帰って来ないなんて言ってませんけど?」とカウンターのグラスを下げている。
「バコさん変化がお上手になられましたねえ」
どちらいかありがとう。久しぶりに修行つけたるて親父や叔父さんらにしごかれてなあ。まだ声真似は出来んしそんな長いこと持たんけど、ビックリさせたろと思て」
「ビックリしたした! バッチリ騙されたわ」
「そこは"化かされた"て言うて欲しいわあ」
 また楽しそうに話し始める二人を見て、海老原はニッコリ微笑む。
 そこにおかえり! とバコさんにタックルしてきた睦月が加わり、本物の玉藻ママも来店し、ますますカウンター席は賑やかになった。
「ただいま!」
とニコニコするバコさんの顔は、たいそう晴れ晴れとしていたという。

【閉店】

の前にもう少し………………
――「それにしてもバコさん真面目だねえ、せっかく仕事が休みなのに修行って」
「おっさんらに無理矢理引っ張りだされただけやて。古狸がぎょうさんおるから僕なんかまだ若造なんや」
「言うじゃん。でもこりゃあまた尻子玉の輝きに磨きが」
「いやもうええやんそれは!」
「いいじゃん、また見せてよ」
「あかんて!」
「まあいっか、こっちにいるんだったらゆっくり口説き落とすし」
「え? 今なんて?」
「別にぃ」 

――――これにて【閉店】!
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