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第四章 七変化
緊張と緩和
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柊虎が部屋に入ると、黄虎はまだ寝床で横になっていた。
「体調はどうだ?」
「あぁ大分楽になったよ、昨日は世話になったな、ありがとう」
言いながら、黄虎は体を起こす。
柊虎は黄虎の横に座り、懐から文を出して話す。
「黄虎お前に頼みがある、これを玄華様に渡してもらいたい」
「伯母上に? お前から?」
黄虎は文を受け取り、不思議そうに柊虎を見る。
「おっ…お前、まさかっ」
「お前は関わるな、文を渡してくれるだけでいい」
「なっ…」
柊虎が自分のことを思い、そう言っているのはわかる。だからこそ、何もしないのはあまりにも情けないと黄虎は思った。
「わっ私にも何か手伝わせてくれっ」
「駄目だ」
「柊虎っ」
「お前の身内のことだ」
「十分わかっているさっ」
「ならばもし、仮に事が事実なら、お前は自分の祖母や母を、罰せられるのか?」
「……」答えられず黙る。
「こういう事は、お前ではない方がよい」
黄虎は柊虎の胸ぐらを掴む。
「お前だって身内ではないかっ 祖母上や母上は白虎家の者だぞ!」
「だからだ」
黄虎は眉をひそめる。
「どういう意味だ? お前は良くて、なっ…何故私は駄目なのだ?」
柊虎は黄虎の肩に手を置いて言う。
「お前は黄龍家の者だ、血は混じっても元より白虎家の気性の荒さはない、九虎様と美虎様は我々の傍系だ、場合によって黒幕は他の傍系や祖父上が絡んでいるのかもしれない… だとすれば事は白虎本家の責任だ、お前はこれ以上苦しむな」
黄虎は柊虎の胸ぐらから手を離す。
「お前は、苦しくないのか…?」
「私は…」
「お前は黄怜が男でも、慕っていたのだろ? 黄怜を殺したのが自分の同家や盛虎様だと分かったら、お前こそどうするのだ?」
「罰する」
「なっ…」
「私はずっと、何も言えなかった自分に後悔していた。お前の話を聞いて追及するべきか考えたが、黄怜が何故死なねばならなかったのか…知りたいのだ、でないと…私は前には進めない。だからお前はしなくていい、私がする」
「…決めたのか?」
柊虎は力強く頷く。
「わかった… 文以外にも手伝えることがあれば何でも言ってくれ、私にできることは何でも協力する」
「ありがとう黄虎」
「もしや…蒼万に話したのか?」
柊虎は文を持ってきた時点で、聞かれると予想していた。
「昨夜に…すまない、お前に断りを入れてからが、筋だと思ったのだが…」
「いいやハハ 恐らくお前がそうするだろうと思っていたよ… 蒼万は何と?」
「協力すると…」
「そうか… 蒼万はまだ居るのか?」
「今朝先に発ったよ」
「蒼万の従者も一緒か?」
やはり、黄虎は志瑞也を気にかけていた。
柊虎は頷く。
「あの者は、何故妖魔に襲われたのだ?」
「それは、わからない…」
「そうか…私も明日ここを発って、急ぎ中央宮へ帰るよ。伯母上に文を渡して、その後はどうするのだ?」
「文には女宿で話がしたいとだけ書いてある、来ていただけるとは思うが…」
「どうした?」
「私は明日蒼万達の後を追うが、玄華様の状況を知る術がないのだ、もし来れないとなれば別の方法を考えないと…」
「そうか…」
二人は考え黙る。
「それは私に任せてくれないか?」
柊虎と黄虎はまずいと焦り、ゆっくり開く戸からひょこっと出てくる顔を見て驚く。
「朱翔!」
喋りながら片手を腰にあて、顎を触り部屋に入って来た。
「昨日黄虎がさぁ、体調が悪いから呑みに来れないって聞いてさぁ、お見舞いに来てみたらさぁ、なんか深刻な話してるなぁ、って聴いていたら…おっお前が黄怜を慕っていたってっ…わっ私には玄葉がいるからなっ!」
自分の体を守るような手振りで柊虎を見る。
黄怜が女子と明かせない以上、毎度友からこの仕打ちを受けるのかと、柊虎はうんざりした。
柊虎が険しい顔で尋ねる。
「朱翔いつから聴いていた?」
「黄虎の『お前は苦しくないのか?』の辺りで、柊虎も体調が悪いのかと思って心配したんだぞ! 詳しくは分からないが、私が黄虎と一緒に中央宮へ行って、状況を雲雀で文に託せば柊虎の所に飛んで行けるだろ?ハハハ」
柊虎はまた一人巻き込んでしまう事態に躊躇うが、朱翔以上の適任者がいなく尋ねる。
「全て話すことはできないが、それでもよいのか?」
朱翔は頷きながら言う。
「私はあまり知らない方がいい、ただ友の殿に遊びに行き、友に頼まれて文を出しただけだ、これでいいか?」
柊虎と黄虎は頷く。
「よしっ、私も明日共に発つぞ! 今から父上に伝えてくるよ!ハハハ」
「待て朱翔っ」
軽やかに出て行こうとする朱翔を、柊虎が呼び止め尋ねる。
「何と言って…許可をもらうのだ?」
「何だよ? 友の殿に行くだけだぞ?」
黄虎も険しい顔で尋ねる。
「あっ怪しまれたりは…しないのか? 理由を聞かれたりはっ⁉︎」
朱翔は二人を見て呆れ顔で言う。
「お前達っ、色々知り過ぎているから考え込むんだ! だから私はこれ以上知らない方が動き易いんじゃないのか? そうだろ?」
黙り込む二人を見て、朱翔は両手の平を上に向け首を傾げて言う。
「聞かれても分からないことは、答えられないだろ?ハハハ 二人共何か企んでますって顔をしているぞハハハ」
朱翔は笑いながら部屋を出て行く。
気が抜けたように黄虎が言う。
「ふっ、あいつの言う通りだな」
「そうだな、私も色々神経質になり過ぎていたよ…」
「無理もないさ…」
「朱翔が加わるのは予定外だが、あの前向きさに救われたな、朱雀家の者は何者にも捉われない強さがある。あいつのそういう性分、いいな…」
柊虎は朱翔が去った後の戸を見て微笑む。
「おっ、お前今度は?」
「黄虎、それ以上は殴るぞ…」
「……ぷっハハハハハ」
「ふっハハハハハ」
朱翔のお陰で緊張感が解れ、二人は笑い合った。
「体調はどうだ?」
「あぁ大分楽になったよ、昨日は世話になったな、ありがとう」
言いながら、黄虎は体を起こす。
柊虎は黄虎の横に座り、懐から文を出して話す。
「黄虎お前に頼みがある、これを玄華様に渡してもらいたい」
「伯母上に? お前から?」
黄虎は文を受け取り、不思議そうに柊虎を見る。
「おっ…お前、まさかっ」
「お前は関わるな、文を渡してくれるだけでいい」
「なっ…」
柊虎が自分のことを思い、そう言っているのはわかる。だからこそ、何もしないのはあまりにも情けないと黄虎は思った。
「わっ私にも何か手伝わせてくれっ」
「駄目だ」
「柊虎っ」
「お前の身内のことだ」
「十分わかっているさっ」
「ならばもし、仮に事が事実なら、お前は自分の祖母や母を、罰せられるのか?」
「……」答えられず黙る。
「こういう事は、お前ではない方がよい」
黄虎は柊虎の胸ぐらを掴む。
「お前だって身内ではないかっ 祖母上や母上は白虎家の者だぞ!」
「だからだ」
黄虎は眉をひそめる。
「どういう意味だ? お前は良くて、なっ…何故私は駄目なのだ?」
柊虎は黄虎の肩に手を置いて言う。
「お前は黄龍家の者だ、血は混じっても元より白虎家の気性の荒さはない、九虎様と美虎様は我々の傍系だ、場合によって黒幕は他の傍系や祖父上が絡んでいるのかもしれない… だとすれば事は白虎本家の責任だ、お前はこれ以上苦しむな」
黄虎は柊虎の胸ぐらから手を離す。
「お前は、苦しくないのか…?」
「私は…」
「お前は黄怜が男でも、慕っていたのだろ? 黄怜を殺したのが自分の同家や盛虎様だと分かったら、お前こそどうするのだ?」
「罰する」
「なっ…」
「私はずっと、何も言えなかった自分に後悔していた。お前の話を聞いて追及するべきか考えたが、黄怜が何故死なねばならなかったのか…知りたいのだ、でないと…私は前には進めない。だからお前はしなくていい、私がする」
「…決めたのか?」
柊虎は力強く頷く。
「わかった… 文以外にも手伝えることがあれば何でも言ってくれ、私にできることは何でも協力する」
「ありがとう黄虎」
「もしや…蒼万に話したのか?」
柊虎は文を持ってきた時点で、聞かれると予想していた。
「昨夜に…すまない、お前に断りを入れてからが、筋だと思ったのだが…」
「いいやハハ 恐らくお前がそうするだろうと思っていたよ… 蒼万は何と?」
「協力すると…」
「そうか… 蒼万はまだ居るのか?」
「今朝先に発ったよ」
「蒼万の従者も一緒か?」
やはり、黄虎は志瑞也を気にかけていた。
柊虎は頷く。
「あの者は、何故妖魔に襲われたのだ?」
「それは、わからない…」
「そうか…私も明日ここを発って、急ぎ中央宮へ帰るよ。伯母上に文を渡して、その後はどうするのだ?」
「文には女宿で話がしたいとだけ書いてある、来ていただけるとは思うが…」
「どうした?」
「私は明日蒼万達の後を追うが、玄華様の状況を知る術がないのだ、もし来れないとなれば別の方法を考えないと…」
「そうか…」
二人は考え黙る。
「それは私に任せてくれないか?」
柊虎と黄虎はまずいと焦り、ゆっくり開く戸からひょこっと出てくる顔を見て驚く。
「朱翔!」
喋りながら片手を腰にあて、顎を触り部屋に入って来た。
「昨日黄虎がさぁ、体調が悪いから呑みに来れないって聞いてさぁ、お見舞いに来てみたらさぁ、なんか深刻な話してるなぁ、って聴いていたら…おっお前が黄怜を慕っていたってっ…わっ私には玄葉がいるからなっ!」
自分の体を守るような手振りで柊虎を見る。
黄怜が女子と明かせない以上、毎度友からこの仕打ちを受けるのかと、柊虎はうんざりした。
柊虎が険しい顔で尋ねる。
「朱翔いつから聴いていた?」
「黄虎の『お前は苦しくないのか?』の辺りで、柊虎も体調が悪いのかと思って心配したんだぞ! 詳しくは分からないが、私が黄虎と一緒に中央宮へ行って、状況を雲雀で文に託せば柊虎の所に飛んで行けるだろ?ハハハ」
柊虎はまた一人巻き込んでしまう事態に躊躇うが、朱翔以上の適任者がいなく尋ねる。
「全て話すことはできないが、それでもよいのか?」
朱翔は頷きながら言う。
「私はあまり知らない方がいい、ただ友の殿に遊びに行き、友に頼まれて文を出しただけだ、これでいいか?」
柊虎と黄虎は頷く。
「よしっ、私も明日共に発つぞ! 今から父上に伝えてくるよ!ハハハ」
「待て朱翔っ」
軽やかに出て行こうとする朱翔を、柊虎が呼び止め尋ねる。
「何と言って…許可をもらうのだ?」
「何だよ? 友の殿に行くだけだぞ?」
黄虎も険しい顔で尋ねる。
「あっ怪しまれたりは…しないのか? 理由を聞かれたりはっ⁉︎」
朱翔は二人を見て呆れ顔で言う。
「お前達っ、色々知り過ぎているから考え込むんだ! だから私はこれ以上知らない方が動き易いんじゃないのか? そうだろ?」
黙り込む二人を見て、朱翔は両手の平を上に向け首を傾げて言う。
「聞かれても分からないことは、答えられないだろ?ハハハ 二人共何か企んでますって顔をしているぞハハハ」
朱翔は笑いながら部屋を出て行く。
気が抜けたように黄虎が言う。
「ふっ、あいつの言う通りだな」
「そうだな、私も色々神経質になり過ぎていたよ…」
「無理もないさ…」
「朱翔が加わるのは予定外だが、あの前向きさに救われたな、朱雀家の者は何者にも捉われない強さがある。あいつのそういう性分、いいな…」
柊虎は朱翔が去った後の戸を見て微笑む。
「おっ、お前今度は?」
「黄虎、それ以上は殴るぞ…」
「……ぷっハハハハハ」
「ふっハハハハハ」
朱翔のお陰で緊張感が解れ、二人は笑い合った。
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