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第九章 勿忘草
私は誓う
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一枝は放心状態で、志瑞也を連れ天堂家に荷物を取りに行く。合鍵で家に入り、志瑞也の洋服を鞄に畳んで詰め込む。両親の死を知らない志瑞也は、無邪気にもここに来るまで笑っていた。
「ばぁちゃん、お父さんがばぁちゃんにこれ渡してって」
そう言って、志瑞也は茶封筒を見せる。
「えっ?」
家に入った時もだが、一枝はずっと二人の霊気を探っていたが現れなかった。
「志瑞也っ、これはいつ預かったんだい?」
「夜病院にいる時に、お父さんが家に帰ったら引き出しに入れてあるから、ばぁちゃんに渡してって言っていたよ…」
「ほっ他には何かっ?」
志瑞也は顔を歪める。
「こ…これを… わ…渡すまでは… な…泣いちゃ駄目だよって… いっ今からお母さん迎えに行って… もう…会えなくなるから… ううっ…お城は… ばぁちゃんに…ううっ… 連れて行ってもらいなさいって… ごめんねって… ひっく…ばぁちゃん… お…父さんと… ぐすっ…お母さんは…死んじゃったの…? もっもう、会えないの…? ううっ…僕会いたいよ… ぐすっ…おっお父さぁんっ…お母さぁんっ…」
「志瑞也っ…ううっ…」
一枝は泣きながら志瑞也を抱きしめる。
「ばぁちゃんは… 僕を置いて行かないでね…ううっ… ばぁちゃん…うあぁぁん…」
「志瑞也の…側には… ば…ばぁちゃんがいるからね…」
志瑞也は既に両親の死を悟り、望の言葉を守りここまで笑っていたのだ。一枝はそれを知り、胸が張り裂けそうになる。志瑞也は一枝の胸で声を上げ、大粒の涙を流した。その悲痛な声を、一枝はしっかりと胸に刻む。これがこの子の定めだとしても、前世を含めあまりにも残酷すぎる。体温が上がる志瑞也に、一枝は抱きしめることしかできなかった。未来が志瑞也に会いに来なかったのは、見える志瑞也のためにならない、見えていた人間だからこそ、そうしたのだと…一枝は思った。
手紙は二通あり一通目は遺言書、この世界で使えるものや、保険金の受取人、全てが一枝になっていた。二通目は〝お母さんへ〟出逢った頃からの出来事、二人が一枝と接して感じた事、この手紙を書き残す経緯、そして、感謝の言葉が書き綴られていた。一枝は我が子のような存在を一度に二人も失い、寝ている志瑞也の側で、手紙を抱きしめ声を殺して泣いた。
二人の霊が見当たらないのは、思い残す事がないのだろう。あるとするなら志瑞也のことだけだ。息子を託せる存在が自分なのであれば、それが二人への恩返しになることを願った。〝未来〟を〝望〟神の子、天はこの子に今後どのような試練を与えるのか。一枝は涙で頬が赤くなり、時折ひくつく志瑞也の頭をなでる。
「志瑞也…ばぁちゃんが… お前を必ず守るからね…」
一枝は天に逆らってでも、必ず志瑞也を守ると、二人に誓った。
「ばぁちゃん、お父さんがばぁちゃんにこれ渡してって」
そう言って、志瑞也は茶封筒を見せる。
「えっ?」
家に入った時もだが、一枝はずっと二人の霊気を探っていたが現れなかった。
「志瑞也っ、これはいつ預かったんだい?」
「夜病院にいる時に、お父さんが家に帰ったら引き出しに入れてあるから、ばぁちゃんに渡してって言っていたよ…」
「ほっ他には何かっ?」
志瑞也は顔を歪める。
「こ…これを… わ…渡すまでは… な…泣いちゃ駄目だよって… いっ今からお母さん迎えに行って… もう…会えなくなるから… ううっ…お城は… ばぁちゃんに…ううっ… 連れて行ってもらいなさいって… ごめんねって… ひっく…ばぁちゃん… お…父さんと… ぐすっ…お母さんは…死んじゃったの…? もっもう、会えないの…? ううっ…僕会いたいよ… ぐすっ…おっお父さぁんっ…お母さぁんっ…」
「志瑞也っ…ううっ…」
一枝は泣きながら志瑞也を抱きしめる。
「ばぁちゃんは… 僕を置いて行かないでね…ううっ… ばぁちゃん…うあぁぁん…」
「志瑞也の…側には… ば…ばぁちゃんがいるからね…」
志瑞也は既に両親の死を悟り、望の言葉を守りここまで笑っていたのだ。一枝はそれを知り、胸が張り裂けそうになる。志瑞也は一枝の胸で声を上げ、大粒の涙を流した。その悲痛な声を、一枝はしっかりと胸に刻む。これがこの子の定めだとしても、前世を含めあまりにも残酷すぎる。体温が上がる志瑞也に、一枝は抱きしめることしかできなかった。未来が志瑞也に会いに来なかったのは、見える志瑞也のためにならない、見えていた人間だからこそ、そうしたのだと…一枝は思った。
手紙は二通あり一通目は遺言書、この世界で使えるものや、保険金の受取人、全てが一枝になっていた。二通目は〝お母さんへ〟出逢った頃からの出来事、二人が一枝と接して感じた事、この手紙を書き残す経緯、そして、感謝の言葉が書き綴られていた。一枝は我が子のような存在を一度に二人も失い、寝ている志瑞也の側で、手紙を抱きしめ声を殺して泣いた。
二人の霊が見当たらないのは、思い残す事がないのだろう。あるとするなら志瑞也のことだけだ。息子を託せる存在が自分なのであれば、それが二人への恩返しになることを願った。〝未来〟を〝望〟神の子、天はこの子に今後どのような試練を与えるのか。一枝は涙で頬が赤くなり、時折ひくつく志瑞也の頭をなでる。
「志瑞也…ばぁちゃんが… お前を必ず守るからね…」
一枝は天に逆らってでも、必ず志瑞也を守ると、二人に誓った。
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