119 / 164
第九章 勿忘草
不思議な友情
しおりを挟む
志瑞也が玄枝に引き取られ七年が経ったある日、小学校から帰ってきた志瑞也は「ドタバタ」足音を立て慌ただしく居間に駆け込む。
「ばぁちゃんっ、ばぁちゃんっ、今日花絵ちゃんていう転入生が来たんだ! 笑顔がとっても可愛いいんだよアハハ」
十二になる志瑞也も、そろそろ色気付く頃だ。一枝は志瑞也の顔を見れば、花絵をどう思っているのか直ぐに分かる。
「志瑞也はその子が気になるのかい?」
「べっ、別に気になってないよっ 俺はただかっ可愛いって言っただけだよっ、何言ってるんだよばぁちゃんっ」
志瑞也は顔を赤くして慌てふためく。これで誤魔化しているつもりなのだろうか、一枝は微笑んで言う。
「女の子には優しくしてあげるんだよ」
「わっ、わかってるよへへ」
志瑞也は隠し事があまり上手ではない、そういう所は未来に似ている。やはり学校から帰ると、日々花絵の話すようになった。志瑞也の顔立ちは未来に似て、小さい頃は女子によく間違えられていた。そのせいか〝僕〟ではなく〝俺〟とかっこつけて言う姿も、一枝には微笑ましく見える。優しいところや気遣うところ、特に時折見せる男気は望にそっくりだ。花絵もそんな志瑞也が好きなのか、学校でも帰り道もよく一緒にいるようだった。友ができにくいことを気にかけていたが、楽しそうに話す志瑞也を見て一枝は安堵していた。だが暫くして、志瑞也は花絵の話をしなくなった。
一枝が台所で夕飯の用意をしていると、志瑞也が学校から帰って来た。
「志瑞也、最近花絵ちゃんとはあまり遊んでないのかい?」
「うん…」
志瑞也は顔を曇らせる。
一枝は「トントン」食材を切りながら尋ねる。
「何かあったのかい?」
「ちょっとね… 怖いって… 言われたんだ…」
トン…
一枝は一瞬手が止まったがまた直ぐに動かす。
「そうかい… お前が悪い訳じゃない、誰も悪くないからね」
「ば…ばぁちゃん… ありがとう…」
志瑞也は一枝の背中に抱きつき顔を埋める。一枝の背中には、志瑞也の体温が熱く広がった。
小学校最後の思い出作りとして、志瑞也は修学旅行で天門城に来ていた。両親が亡くなってから、一枝に一度連れてきてもらったことがあるが、その時は霊の多さに怯えて直ぐに帰ってしまったのだ。今では見えても怯えるどころか、むしろ志瑞也の方から話したり驚かしたりしている。
「今から自由行動だ、皆怪我をしないよう気をつけるんだぞ!」
生徒達は騒ぎ出し友と仲良く散って行く。その中に花絵もいるが、志瑞也と目を合わすことはない。
「志瑞也、お前は…」
「先生、俺なら大丈夫だよ」
志瑞也が微笑むと、担任は気まずそうに頭を掻きながら言う。
「…わかった、先生達は向こうにいるから」
「はい」
独りで辺りを散歩すると、やはりここは霊がうようよ歩いている。一体やたらとじろじろ見てくるのがいるが、志瑞也は気にせず先へと進んだ。龍神池に辿り着き、縁廻りを歩きながら池を覗いてみる。
(ふーん、大きい鯉が沢山いるな…)
暫く水面を見ていると、志瑞也の側に石の塊のような者が一匹、二匹と忍び寄る。見えないと思っているからか、水面を一緒に覗き込みギョロギョロ志瑞也を見て、クンクン匂いを嗅ぎだした。様々な妖怪を見慣れている志瑞也にとって、二匹はこれといって驚くような存在ではない。気づいていると悟られないよう、水面を見ながらにんまりとする。
三、二、一、
「わあっ!」
「なっ、何じゃお主っ、あてッ」
「何じゃお主っ、あてッ」
妖怪達が驚きひっくり返る。
「アハハハハ! びっくりしたか?」
「無礼な奴めっ」
「無礼な奴めっ」
(こいつら鈍臭いな、クククッ)
二匹は自力で起き上がれないのか、ジタバタと仰向けで喚いている。志瑞也は二匹の手を掴み、笑いながら起き上がらせた。
「アハハハごめんごめん、お前達は石の妖怪か? 名前はあるのか?」
「わしはモモンじゃ」
「わしもモモンじゃ」
「…どっちもモモンじゃ、ややこしいなぁ」
どう見分ければよいのか、睨みつけてくる二匹の顔や声、髭の長さも全て同じで、見比べても純粋に困ってしまう。
「お主名は何と申すか?」
「俺は天堂志瑞也だ」
二匹は志瑞也をまじまじと見つめる。
「お前達甘い物好きか?」
「お主っ、わしらを餌で釣る気かっ」
「わしを餌で釣る気かっ」
なるほど、この二匹を区別できそうな気がしてきた。志瑞也は腕を組み片方の口角を上げ「ふっ」鼻で笑う。鞄の中から餌を摘み取り、屈んで二匹に手の平を見せる。
「これはキャラメルってお菓子だ、俺が一番好きなお菓子だよ」
二匹は警戒しながらキャラメルの匂いを嗅ぐ。
「甘い匂いがするだろ? 食べるか?」
既に二匹は涎を垂らしている。
「ほら、やるよ」
いきなり差し出されたキャラメルをガシッと掴み取り、二匹はお礼も言わずそそくさと茂みに走って行く。
「あっ、何だよあいつら…」
妖怪は直ぐには懐かない、仕方がないと志瑞也はまた歩きだした。ふと後ろから気配を感じ、ばっと振り返ると先程のモモンが一匹だけいた。
「わしはキャラメルまだもろうてない」
「え? 三匹目がいたのか?」
志瑞也は再び鞄に手を突っ込む。
「お主はさっき食べたではないかっ!」
茂みからぴょんと、もう一匹のモモンが飛び出してきた。
志瑞也は片眉を上げて言う。
「お前達、本当は何匹なんだ?」
「わしらは二匹じゃ! くれるというなら貰うぞ」
そう言って、短い手を広げた。
「ぷっアハハハハ」
流石キャラメルの力は偉大だ。もう一つずつあげると、二匹は今度は逃げずにその場でキャラメルを食べた。一匹のモモンが指差し「あいつはなんじゃ?」ずっと後を付いてきた浮遊霊がもじもじしながら加わる。だが一言も話さず、やたらと志瑞也の腕を小突いてくる。「俺に取り憑くなよ」きっと睨んで言うと「わわ私はは、とと取り憑くことはは、ででできませんっ」かなり重症な気がして、志瑞也は顔を引き攣らせた。
翌日家に帰り、早速、人間ではない友ができたと一枝に笑いながら話をした。一枝は微笑みながら聞いていたが、浮遊霊に関しては、同じく顔を引き攣らせ首を傾げた。
「ばぁちゃんっ、ばぁちゃんっ、今日花絵ちゃんていう転入生が来たんだ! 笑顔がとっても可愛いいんだよアハハ」
十二になる志瑞也も、そろそろ色気付く頃だ。一枝は志瑞也の顔を見れば、花絵をどう思っているのか直ぐに分かる。
「志瑞也はその子が気になるのかい?」
「べっ、別に気になってないよっ 俺はただかっ可愛いって言っただけだよっ、何言ってるんだよばぁちゃんっ」
志瑞也は顔を赤くして慌てふためく。これで誤魔化しているつもりなのだろうか、一枝は微笑んで言う。
「女の子には優しくしてあげるんだよ」
「わっ、わかってるよへへ」
志瑞也は隠し事があまり上手ではない、そういう所は未来に似ている。やはり学校から帰ると、日々花絵の話すようになった。志瑞也の顔立ちは未来に似て、小さい頃は女子によく間違えられていた。そのせいか〝僕〟ではなく〝俺〟とかっこつけて言う姿も、一枝には微笑ましく見える。優しいところや気遣うところ、特に時折見せる男気は望にそっくりだ。花絵もそんな志瑞也が好きなのか、学校でも帰り道もよく一緒にいるようだった。友ができにくいことを気にかけていたが、楽しそうに話す志瑞也を見て一枝は安堵していた。だが暫くして、志瑞也は花絵の話をしなくなった。
一枝が台所で夕飯の用意をしていると、志瑞也が学校から帰って来た。
「志瑞也、最近花絵ちゃんとはあまり遊んでないのかい?」
「うん…」
志瑞也は顔を曇らせる。
一枝は「トントン」食材を切りながら尋ねる。
「何かあったのかい?」
「ちょっとね… 怖いって… 言われたんだ…」
トン…
一枝は一瞬手が止まったがまた直ぐに動かす。
「そうかい… お前が悪い訳じゃない、誰も悪くないからね」
「ば…ばぁちゃん… ありがとう…」
志瑞也は一枝の背中に抱きつき顔を埋める。一枝の背中には、志瑞也の体温が熱く広がった。
小学校最後の思い出作りとして、志瑞也は修学旅行で天門城に来ていた。両親が亡くなってから、一枝に一度連れてきてもらったことがあるが、その時は霊の多さに怯えて直ぐに帰ってしまったのだ。今では見えても怯えるどころか、むしろ志瑞也の方から話したり驚かしたりしている。
「今から自由行動だ、皆怪我をしないよう気をつけるんだぞ!」
生徒達は騒ぎ出し友と仲良く散って行く。その中に花絵もいるが、志瑞也と目を合わすことはない。
「志瑞也、お前は…」
「先生、俺なら大丈夫だよ」
志瑞也が微笑むと、担任は気まずそうに頭を掻きながら言う。
「…わかった、先生達は向こうにいるから」
「はい」
独りで辺りを散歩すると、やはりここは霊がうようよ歩いている。一体やたらとじろじろ見てくるのがいるが、志瑞也は気にせず先へと進んだ。龍神池に辿り着き、縁廻りを歩きながら池を覗いてみる。
(ふーん、大きい鯉が沢山いるな…)
暫く水面を見ていると、志瑞也の側に石の塊のような者が一匹、二匹と忍び寄る。見えないと思っているからか、水面を一緒に覗き込みギョロギョロ志瑞也を見て、クンクン匂いを嗅ぎだした。様々な妖怪を見慣れている志瑞也にとって、二匹はこれといって驚くような存在ではない。気づいていると悟られないよう、水面を見ながらにんまりとする。
三、二、一、
「わあっ!」
「なっ、何じゃお主っ、あてッ」
「何じゃお主っ、あてッ」
妖怪達が驚きひっくり返る。
「アハハハハ! びっくりしたか?」
「無礼な奴めっ」
「無礼な奴めっ」
(こいつら鈍臭いな、クククッ)
二匹は自力で起き上がれないのか、ジタバタと仰向けで喚いている。志瑞也は二匹の手を掴み、笑いながら起き上がらせた。
「アハハハごめんごめん、お前達は石の妖怪か? 名前はあるのか?」
「わしはモモンじゃ」
「わしもモモンじゃ」
「…どっちもモモンじゃ、ややこしいなぁ」
どう見分ければよいのか、睨みつけてくる二匹の顔や声、髭の長さも全て同じで、見比べても純粋に困ってしまう。
「お主名は何と申すか?」
「俺は天堂志瑞也だ」
二匹は志瑞也をまじまじと見つめる。
「お前達甘い物好きか?」
「お主っ、わしらを餌で釣る気かっ」
「わしを餌で釣る気かっ」
なるほど、この二匹を区別できそうな気がしてきた。志瑞也は腕を組み片方の口角を上げ「ふっ」鼻で笑う。鞄の中から餌を摘み取り、屈んで二匹に手の平を見せる。
「これはキャラメルってお菓子だ、俺が一番好きなお菓子だよ」
二匹は警戒しながらキャラメルの匂いを嗅ぐ。
「甘い匂いがするだろ? 食べるか?」
既に二匹は涎を垂らしている。
「ほら、やるよ」
いきなり差し出されたキャラメルをガシッと掴み取り、二匹はお礼も言わずそそくさと茂みに走って行く。
「あっ、何だよあいつら…」
妖怪は直ぐには懐かない、仕方がないと志瑞也はまた歩きだした。ふと後ろから気配を感じ、ばっと振り返ると先程のモモンが一匹だけいた。
「わしはキャラメルまだもろうてない」
「え? 三匹目がいたのか?」
志瑞也は再び鞄に手を突っ込む。
「お主はさっき食べたではないかっ!」
茂みからぴょんと、もう一匹のモモンが飛び出してきた。
志瑞也は片眉を上げて言う。
「お前達、本当は何匹なんだ?」
「わしらは二匹じゃ! くれるというなら貰うぞ」
そう言って、短い手を広げた。
「ぷっアハハハハ」
流石キャラメルの力は偉大だ。もう一つずつあげると、二匹は今度は逃げずにその場でキャラメルを食べた。一匹のモモンが指差し「あいつはなんじゃ?」ずっと後を付いてきた浮遊霊がもじもじしながら加わる。だが一言も話さず、やたらと志瑞也の腕を小突いてくる。「俺に取り憑くなよ」きっと睨んで言うと「わわ私はは、とと取り憑くことはは、ででできませんっ」かなり重症な気がして、志瑞也は顔を引き攣らせた。
翌日家に帰り、早速、人間ではない友ができたと一枝に笑いながら話をした。一枝は微笑みながら聞いていたが、浮遊霊に関しては、同じく顔を引き攣らせ首を傾げた。
1
あなたにおすすめの小説
強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない
砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。
自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。
ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。
とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。
恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。
ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。
落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!?
最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。
12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生
何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか
風
BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。
……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、
気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。
「僕は、あなたを守ると決めたのです」
いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。
けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――?
身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。
“王子”である俺は、彼に恋をした。
だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。
これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、
彼だけを見つめ続けた騎士の、
世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。
あなたの隣で初めての恋を知る
彩矢
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。
その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。
そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。
一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。
初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。
表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。
【完結】禁断の忠誠
海野雫
BL
王太子暗殺を阻止したのは、ひとりの宦官だった――。
蒼嶺国――龍の血を継ぐ王家が治めるこの国は、今まさに権力の渦中にあった。
病に伏す国王、その隙を狙う宰相派の野心。玉座をめぐる見えぬ刃は、王太子・景耀の命を狙っていた。
そんな宮廷に、一人の宦官・凌雪が送り込まれる。
幼い頃に売られ、冷たい石造りの宮殿で静かに生きてきた彼は、ひっそりとその才覚を磨き続けてきた。
ある夜、王太子を狙った毒杯の罠をいち早く見破り、自ら命を賭してそれを阻止する。
その行動をきっかけに、二人の運命の歯車が大きく動き始める――。
宰相派の陰謀、王家に渦巻く疑念と忠誠、そして宮廷の奥深くに潜む暗殺の影。
互いを信じきれないまま始まった二人の主従関係は、やがて禁じられた想いと忠誠のはざまで揺れ動いていく。
己を捨てて殿下を守ろうとする凌雪と、玉座を背負う者として冷徹であろうとする景耀。
宮廷を覆う陰謀の嵐の中で、二人が交わした契約は――果たして主従のものか、それとも……。
ざこてん〜初期雑魚モンスターに転生した俺は、勇者にテイムしてもらう〜
キノア9g
BL
「俺の血を啜るとは……それほど俺を愛しているのか?」
(いえ、ただの生存戦略です!!)
【元社畜の雑魚モンスター(うさぎ)】×【勘違い独占欲勇者】
生き残るために媚びを売ったら、最強の勇者に溺愛されました。
ブラック企業で過労死した俺が転生したのは、RPGの最弱モンスター『ダーク・ラビット(黒うさぎ)』だった。
のんびり草を食んでいたある日、目の前に現れたのはゲーム最強の勇者・アレクセイ。
「経験値」として狩られる!と焦った俺は、生き残るために咄嗟の機転で彼と『従魔契約』を結ぶことに成功する。
「殺さないでくれ!」という一心で、傷口を舐めて契約しただけなのに……。
「魔物の分際で、俺にこれほど情熱的な求愛をするとは」
なぜか勇者様、俺のことを「自分に惚れ込んでいる健気な相棒」だと盛大に勘違い!?
勘違いされたまま、勇者の膝の上で可愛がられる日々。
捨てられないために必死で「有能なペット」を演じていたら、勇者の魔力を受けすぎて、なんと人間の姿に進化してしまい――!?
「もう使い魔の枠には収まらない。俺のすべてはお前のものだ」
ま、待ってください勇者様、愛が重すぎます!
元社畜の生存本能が生んだ、すれ違いと溺愛の異世界BLファンタジー!
後宮に咲く美しき寵后
不来方しい
BL
フィリの故郷であるルロ国では、真っ白な肌に金色の髪を持つ人間は魔女の生まれ変わりだと伝えられていた。生まれた者は民衆の前で焚刑に処し、こうして人々の安心を得る一方、犠牲を当たり前のように受け入れている国だった。
フィリもまた雪のような肌と金髪を持って生まれ、来るべきときに備え、地下の部屋で閉じ込められて生活をしていた。第四王子として生まれても、処刑への道は免れられなかった。
そんなフィリの元に、縁談の話が舞い込んでくる。
縁談の相手はファルーハ王国の第三王子であるヴァシリス。顔も名前も知らない王子との結婚の話は、同性婚に偏見があるルロ国にとって、フィリはさらに肩身の狭い思いをする。
ファルーハ王国は砂漠地帯にある王国であり、雪国であるルロ国とは真逆だ。縁談などフィリ信じず、ついにそのときが来たと諦めの境地に至った。
情報がほとんどないファルーハ王国へ向かうと、国を上げて祝福する民衆に触れ、処刑場へ向かうものだとばかり思っていたフィリは困惑する。
狼狽するフィリの元へ現れたのは、浅黒い肌と黒髪、サファイア色の瞳を持つヴァシリスだった。彼はまだ成人にはあと二年早い子供であり、未成年と婚姻の儀を行うのかと不意を突かれた。
縁談の持ち込みから婚儀までが早く、しかも相手は未成年。そこには第二王子であるジャミルの思惑が隠されていて──。
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる