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最終章 吾亦紅
愛しい人
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今後に向けての話し合いも一通り終わり、志瑞也は初めて黄怜殿に足を踏み入れた。辺りを見渡し不思議な感覚に浸っていると、蒼万が背後からお腹に手を回す。
「どうした?」
「何か懐かしい感じがして…」
「そうか」
「蒼万は俺に何が起こったか、聞かないのか?」
「お前が戻ったのなら、それで良い」
そう言って、蒼万は志瑞也を引き寄せ耳元に唇を寄せる。
「蒼万くすぐったいよアハハハ」
志瑞也は蒼万らしい答えだと笑う。
「おいっお前達! ここは出入口だぞっ」
志瑞也はびくっとして振り返る。
「あ、ごめん朱翔っ」
朱翔は腕を組み二人を睨みつける。
「蒼万離せよっ」
「何故、お前は私のものだ」
「ひっ人前で言うなよっ」
「何故」
朱翔は白目を剥いて溜息を吐き、顔を横に振りながら客室に入って行く。
戦いの最中、志瑞也と蒼万の関係は周知となってしまった。それどころか、蒼万は人目を気にせず堂々と志瑞也の腰に手を回して離さない。葬式までの一ヵ月、皆とここで無事に過ごせるのか、志瑞也は不安でならなかった。
そして、一番の悩みの種は磨虎だ。黄怜の記憶だと、悪い人ではないのはわかる。だが、南宮で揉めた事もあり、志瑞也は会うのが気まずかった。「磨虎って…呼んでもいいのかな?」遠慮がちに言うと、磨虎は右側に垂れた前髪をかき上げて「構わないさ、お前今は男だよな?」意味の分からないことを言ってきた。「そっそうだけど、どうしたんだ?」と聞いても「体も中身も、男だよな?」上から下までを舐めるような視線に、何故か首とお尻がざわつき鳥肌が立つ。蒼万の言う通り、頭が弱いのかもしれない…。
玄弥は会うなり「し志瑞也ぁ!」がしっと肩を組む。「玄弥、今回色々ありがとうな、俺と黄怜のこと、知っていたんだろ?」玄弥は何も言わず頷く。これが玄武家だと、二人で肩を組んで笑い合った。
柊虎の優しさや温かさは、以前よりも身近に感じた。「柊虎、最後まで一緒にいてくれてありがとうな」柊虎は何も問うことなく「会いたかったぞ」変わらない笑で志瑞也の頭をなでた。皆とは幼い頃から知っているような、黄怜の友を思う感情が志瑞也の心に流れた。
皆は一人部屋だが、志瑞也と蒼万は黄怜の自室を使うことにした。今朝までの出来事が嘘のように、辺りはとても静かな夜だ。志瑞也は寝衣に着替え寝床に入る。蒼万とこうして一緒に寝るのは女宿以来だが、かなり前の事のように感じた。
「蒼万おやすみ」
蒼万の頬に口づけして、差しだされた二の腕に頭を置く。むず痒さで照れながらも、久々の腕の中に思わず笑みが溢れる。
「志瑞也」
「ん? んっ…」
突然の蒼万の口づけに一瞬戸惑うが、金色の瞳に捉われると拒めない。舌と舌が絡み合い、甘い唾液と匂いに身体の中が溶けそうになる。頭では皆居ると分かっていても、ぞくぞくと全身の毛が逆立ち蒼万を求めた。足が自然に開くと、蒼万が間に入り覆い被さる。
「ちゅっ…蒼万、好き…あっ、んっ…」
首筋を吸いつかれる度に目が眩み、何も考えられなくなる。蒼万が志瑞也の上衣の止め紐を外し肌に触れた。
「あっ熱い… 蒼万…あっ、は…っ」
志瑞也は蒼万の背中に手を回して引き寄せる。首筋や胸元に愛撫の痛みが走り、求められていることが嬉しくて堪らない。
「蒼万、キスして……」
唇を重ねながら蒼万が志瑞也を抱え起こし、太腿に乗せ上衣を剥いだ。志瑞也の胸の間には勾玉模様の鬱血痕があり、熱を籠らせ皮膚が赤く腫れていた。蒼万は眉をひそめ指でそっと触れる。「痛ッ…」志瑞也は鈍痛に肩を竦めた。蒼万がぐっと抱き寄せ耳元で囁くが、その声は少し震えていた。「約束する…」蒼万を抱きしめ頭をなでる。こんなにもこの男が可愛いと思える日が来ようとは、初めの出逢いを思い返すと、一生とは未知なるものだと志瑞也は微笑む。
蒼万の唇が熱く肌を滑り、再び脳天に刺激が訪れ甘い吐息が漏れだす。背中や腰に熱い手が触れると、志瑞也の腰は興奮から自然とくねってしまう。抱き寄せる腕は力強くとも、胸の傷にあてない優しさが、なんともこの男らしい。志瑞也は熱を帯びた瞳で見つめた。
「蒼万っ…あっ、どっどうしよう…」
「何が」
蒼万が首筋に顔を沈める。
「俺っ、あっ、は…っ、とっ止められない…」
「構わぬ」
強く吸いつかれ、蒼万の後頭部の髪に指を掻き入れた。
「は…っ、好きっ、あ…っ、蒼万そこ、気持ちいい…」
「ここか」
「蒼万の、熱い…っ、もっと触って、は…っ、きっ気持ちいい、あっ…」
「好きか」
「うん、大きくて好き…っ、あっ、蒼万っキスして…んっ…」
志瑞也は夢中で吸いつく。
「きゃああぁぁぁ──っ!」
「しっ志瑞也様?」
「そっ蒼万様?」
玄華と千玄と玄七が、驚愕の顔で立っていた。
(なっ何で居るんだっ?)
更に廊下から「ドタバタ」複数の足音が向かってくる。
バンッ!
「志瑞也っ どうし…た…」
柊虎は勢いよく戸を開けたが、目の前の光景に思わず見入ってしまう。寝床には半裸の志瑞也が蒼万の太腿に跨って座り、よりによって蒼万の片手は、志瑞也の下衣に忍ばせお尻に触れていた。心做しか、志瑞也の股間の布は、突っ張っているような…。
志瑞也は全員と一人ずつ目が合う。
「みっ、見るなあぁ──っ!」
玄華と千玄と玄七は慌てて外に出て、柊虎は急ぎ戸を閉めた。
志瑞也は涙目になり、上衣を着ながら言う。
「ぐすっ…俺… こんな恥ずかしい事ばっかりだっ」
蒼万が志瑞也の頬に触れる。
「何故着る」
志瑞也に口づけをしながら、また上衣を脱がしだす。
…は?
この猛獣は今起きた事を気にも留めず、続きをするつもりなのか。志瑞也はわなわなと、怒りを込み上げた。寝床から飛び起き、上衣を着直して怒鳴る!
「蒼万っ、俺は皆に見られて恥ずかしかったんだっ! その後普通に続きなんてできないっ 俺はここではしないっ!」
蒼万は目を細めて微笑む。
「わかった」
「うっ…」
志瑞也は蒼万の微笑みに言葉を詰まらせ、また流されてはまずいと部屋を飛びだす。
「ふっ」
蒼万は鼻で笑いながら顔を横に振る。今の志瑞也は泣いて笑って怒り、ほしいと求めれば反応を返してくる。あの目覚めない地獄のような日々に比べると、全てが愛しくて堪らなかった。追いかけようと微笑んで部屋の戸を開け、瞬時に真顔になる。
「…何だ」
朱翔が腕を組み眉間に皺を寄せて言う。
「玄華様達は志瑞也に話があるそうだ」
「お前達は?」
「お前に話がある」
柊虎は苦笑いして、磨虎は顔面蒼白で、玄弥は顔を真っ赤にしていた。
「どうした?」
「何か懐かしい感じがして…」
「そうか」
「蒼万は俺に何が起こったか、聞かないのか?」
「お前が戻ったのなら、それで良い」
そう言って、蒼万は志瑞也を引き寄せ耳元に唇を寄せる。
「蒼万くすぐったいよアハハハ」
志瑞也は蒼万らしい答えだと笑う。
「おいっお前達! ここは出入口だぞっ」
志瑞也はびくっとして振り返る。
「あ、ごめん朱翔っ」
朱翔は腕を組み二人を睨みつける。
「蒼万離せよっ」
「何故、お前は私のものだ」
「ひっ人前で言うなよっ」
「何故」
朱翔は白目を剥いて溜息を吐き、顔を横に振りながら客室に入って行く。
戦いの最中、志瑞也と蒼万の関係は周知となってしまった。それどころか、蒼万は人目を気にせず堂々と志瑞也の腰に手を回して離さない。葬式までの一ヵ月、皆とここで無事に過ごせるのか、志瑞也は不安でならなかった。
そして、一番の悩みの種は磨虎だ。黄怜の記憶だと、悪い人ではないのはわかる。だが、南宮で揉めた事もあり、志瑞也は会うのが気まずかった。「磨虎って…呼んでもいいのかな?」遠慮がちに言うと、磨虎は右側に垂れた前髪をかき上げて「構わないさ、お前今は男だよな?」意味の分からないことを言ってきた。「そっそうだけど、どうしたんだ?」と聞いても「体も中身も、男だよな?」上から下までを舐めるような視線に、何故か首とお尻がざわつき鳥肌が立つ。蒼万の言う通り、頭が弱いのかもしれない…。
玄弥は会うなり「し志瑞也ぁ!」がしっと肩を組む。「玄弥、今回色々ありがとうな、俺と黄怜のこと、知っていたんだろ?」玄弥は何も言わず頷く。これが玄武家だと、二人で肩を組んで笑い合った。
柊虎の優しさや温かさは、以前よりも身近に感じた。「柊虎、最後まで一緒にいてくれてありがとうな」柊虎は何も問うことなく「会いたかったぞ」変わらない笑で志瑞也の頭をなでた。皆とは幼い頃から知っているような、黄怜の友を思う感情が志瑞也の心に流れた。
皆は一人部屋だが、志瑞也と蒼万は黄怜の自室を使うことにした。今朝までの出来事が嘘のように、辺りはとても静かな夜だ。志瑞也は寝衣に着替え寝床に入る。蒼万とこうして一緒に寝るのは女宿以来だが、かなり前の事のように感じた。
「蒼万おやすみ」
蒼万の頬に口づけして、差しだされた二の腕に頭を置く。むず痒さで照れながらも、久々の腕の中に思わず笑みが溢れる。
「志瑞也」
「ん? んっ…」
突然の蒼万の口づけに一瞬戸惑うが、金色の瞳に捉われると拒めない。舌と舌が絡み合い、甘い唾液と匂いに身体の中が溶けそうになる。頭では皆居ると分かっていても、ぞくぞくと全身の毛が逆立ち蒼万を求めた。足が自然に開くと、蒼万が間に入り覆い被さる。
「ちゅっ…蒼万、好き…あっ、んっ…」
首筋を吸いつかれる度に目が眩み、何も考えられなくなる。蒼万が志瑞也の上衣の止め紐を外し肌に触れた。
「あっ熱い… 蒼万…あっ、は…っ」
志瑞也は蒼万の背中に手を回して引き寄せる。首筋や胸元に愛撫の痛みが走り、求められていることが嬉しくて堪らない。
「蒼万、キスして……」
唇を重ねながら蒼万が志瑞也を抱え起こし、太腿に乗せ上衣を剥いだ。志瑞也の胸の間には勾玉模様の鬱血痕があり、熱を籠らせ皮膚が赤く腫れていた。蒼万は眉をひそめ指でそっと触れる。「痛ッ…」志瑞也は鈍痛に肩を竦めた。蒼万がぐっと抱き寄せ耳元で囁くが、その声は少し震えていた。「約束する…」蒼万を抱きしめ頭をなでる。こんなにもこの男が可愛いと思える日が来ようとは、初めの出逢いを思い返すと、一生とは未知なるものだと志瑞也は微笑む。
蒼万の唇が熱く肌を滑り、再び脳天に刺激が訪れ甘い吐息が漏れだす。背中や腰に熱い手が触れると、志瑞也の腰は興奮から自然とくねってしまう。抱き寄せる腕は力強くとも、胸の傷にあてない優しさが、なんともこの男らしい。志瑞也は熱を帯びた瞳で見つめた。
「蒼万っ…あっ、どっどうしよう…」
「何が」
蒼万が首筋に顔を沈める。
「俺っ、あっ、は…っ、とっ止められない…」
「構わぬ」
強く吸いつかれ、蒼万の後頭部の髪に指を掻き入れた。
「は…っ、好きっ、あ…っ、蒼万そこ、気持ちいい…」
「ここか」
「蒼万の、熱い…っ、もっと触って、は…っ、きっ気持ちいい、あっ…」
「好きか」
「うん、大きくて好き…っ、あっ、蒼万っキスして…んっ…」
志瑞也は夢中で吸いつく。
「きゃああぁぁぁ──っ!」
「しっ志瑞也様?」
「そっ蒼万様?」
玄華と千玄と玄七が、驚愕の顔で立っていた。
(なっ何で居るんだっ?)
更に廊下から「ドタバタ」複数の足音が向かってくる。
バンッ!
「志瑞也っ どうし…た…」
柊虎は勢いよく戸を開けたが、目の前の光景に思わず見入ってしまう。寝床には半裸の志瑞也が蒼万の太腿に跨って座り、よりによって蒼万の片手は、志瑞也の下衣に忍ばせお尻に触れていた。心做しか、志瑞也の股間の布は、突っ張っているような…。
志瑞也は全員と一人ずつ目が合う。
「みっ、見るなあぁ──っ!」
玄華と千玄と玄七は慌てて外に出て、柊虎は急ぎ戸を閉めた。
志瑞也は涙目になり、上衣を着ながら言う。
「ぐすっ…俺… こんな恥ずかしい事ばっかりだっ」
蒼万が志瑞也の頬に触れる。
「何故着る」
志瑞也に口づけをしながら、また上衣を脱がしだす。
…は?
この猛獣は今起きた事を気にも留めず、続きをするつもりなのか。志瑞也はわなわなと、怒りを込み上げた。寝床から飛び起き、上衣を着直して怒鳴る!
「蒼万っ、俺は皆に見られて恥ずかしかったんだっ! その後普通に続きなんてできないっ 俺はここではしないっ!」
蒼万は目を細めて微笑む。
「わかった」
「うっ…」
志瑞也は蒼万の微笑みに言葉を詰まらせ、また流されてはまずいと部屋を飛びだす。
「ふっ」
蒼万は鼻で笑いながら顔を横に振る。今の志瑞也は泣いて笑って怒り、ほしいと求めれば反応を返してくる。あの目覚めない地獄のような日々に比べると、全てが愛しくて堪らなかった。追いかけようと微笑んで部屋の戸を開け、瞬時に真顔になる。
「…何だ」
朱翔が腕を組み眉間に皺を寄せて言う。
「玄華様達は志瑞也に話があるそうだ」
「お前達は?」
「お前に話がある」
柊虎は苦笑いして、磨虎は顔面蒼白で、玄弥は顔を真っ赤にしていた。
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