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最終章 吾亦紅
未知なる神力
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(気持ちいい…)
目覚めとは本来こうなのだと志瑞也は数える。
三、二、一、
……。
あれ?
志瑞也はぱちっと瞼を開き、がばっと起き上がる。
(しまった! 置いてかれたっ)
急ぎ顔を洗い着替えようと荷物入れを探るが、どれも着れる状態ではない。荷物入れごと捨て、棚の引き出しを開ける。
「何だこれっ? 女物しかないじゃないかっ」
侍女を呼ぼうにも人手が足りないと知って、黄怜殿への配置は昨日断ってしまった。とにかく昼間に寝衣で外には出られない、怠け者と思われは大変だと、仕方なく女子の衣を着けてみる。
(ん、これはどうやって着るんだ? 下は何着るんだ? ああーっ、もういいやっ)
昨日は何も考えずくるくる脱いだため、どう着けていたかなど知る由もない。金の刺繍入りの桜模様の衣を着け、桃色の帯で結ぶが明らかに裾が長い、やはり着方があるのだ。歩こうとすると、裾を引き摺り踏んでしまう。結局は裾の端を捲り上げ、帯の中に詰め入れ固定するしかない。
金の羽織は衣桁に丁寧に架けられていた。蒼万らしいと、志瑞也は眺めて「ふふっ」微笑む。写真二枚と文、それと雀都の羽根を飾箱に入れ棚に閉まい、髪を結ぼうと手鏡を見た。
(な、何だこれっ?)
無数の鬱血痕に驚き、やってしまったと額を「ペチン」叩く。鏡を見ながら跡に触れると、蒼万を思い出し下半身が疼きそうになる。慌てて髪を解き衿元をきつく寄せ、髪飾りを鏡の横に置き、志瑞也はキャラメルを二つ懐に入れ黄怜殿を出た。
表の庭園でうろうろとモモ爺達を探すが見当たらない、本当に人手が足りないのだろう。尋ねようにも、従者もいなければ侍女にすら会わない。
「モモ爺一号ー! ニ号ー!」
志瑞也の探し回る声で、二匹はのっそりと歩いてきた。
「ここに居たのか、…この格好? 着る物がなかったんだよ、笑うなっ」
志瑞也は目覚めてから神獣と通じることができる。黄怜の他心通かもしれないと思ったが、その事を誰にも言うつもりはない。蒼万はその内気付くだろう。隠している訳ではないが、それが玄武家の教えだと思った。
「お前達の本当の名前は甲斐と甲弥だ、思い出せるか? そっか… 甲斐、お前の元の主は玄枝ばぁちゃんだ… 昨日亡くなった… わかるか? そっか…」
志瑞也は甲斐の頭をなでる。
「玄武洞で俺を守ってくれてありがとうな、あの石はお前達の分身か? えっ、奥歯っ?アハハハハ、見せてみろよ」
甲斐が口を大きく開け、志瑞也は頭を入れる。
「奥歯ってっ、こんなでかいのかっ? あ、そっか、妖怪の姿の奥歯かアハハハ」
「な、何をしてるの志瑞也?」
「あれ? お母さん?」
異様な光景に、玄華と千玄と玄七は、甲斐の口を覗き込むように体を横に曲げる。
志瑞也は甲斐の口から頭を出す。
「甲斐の奥歯を見ていたんだよアハハ お母さんと千玄さんに玄七さん、どうしたの?」
玄華はその内容を深く追及しないことにしたが、昨日よりも酷い姿に一瞬倒れそうになる。後から着替えの衣を届けなければと、千玄に目配せした。
「…甲斐と甲弥に会いに来たのよ」
「甲弥、お前の元の主で黄怜のお母さんだ… お母さん、二匹ともやっぱり思い出せないみたいなんだ、だけど甲斐は玄枝ばぁちゃんが亡くなったのは分かるって、悲しんでいるよ… 思い出せなくても、ちゃんと心で繋がっているんだな」
甲斐の頭をなでながら、志瑞也は儚げに笑う。
「志瑞也、あなた…」
「神獣だけだよ」
玄華は何も言わず微笑む。
「お母さんから、甲弥にこれあげて」
そう言って、玄華にキャラメルを一つ渡す。
玄華は不思議そうに見つめ鼻に近付ける。
「これは何? 蜂蜜の香がするわ」
「元の所のお菓子でキャラメルっていうんだ、二匹ともこれが大好きだから、お母さんからあげると甲弥も喜ぶよ」
志瑞也が甲斐に一つあげるのを見て、玄華も甲弥にキャラメルをあげると、美味しそうに咀嚼した。その姿に昔を思い出し、玄華は甲弥の頭をなでようと戸惑いながら手を伸ばす。
「お母さん大丈夫だよ、ほら」
志瑞也は玄華の手を取り、一緒に甲弥の頭をなでる。当然、甲弥は幼い頃からずっと一緒で、玄華にとっては最初の友であり話し相手だった。玄華は久々に甲弥の頭に触れ、目頭が熱くなる。
「甲弥…」
神獣と付く者は、深い絆で結ばれている。黄怜が神獣を欲しがっていた気持ちが、今の玄華を見れば良く分かる。切り離しても、片時も忘れたことはないはずだ。玄華になでられ喜ぶ甲弥にも、きっと同じ感情が残っているのだろう。志瑞也もまた、その絆を羨ましく思った。
玄七が尋ねる。
「志瑞也様、キャラメルは後いくつ残っておりますか?」
「持っているのは後二つで、蒼万殿に戻れば葵ちゃんに預けている分と…もう殆ど無いかも」
「志瑞也様、私は向こうで玄一に言われ、キャラメルの作り方を学んでおりました!」
玄七は胸の高さで拳を握る。
「本当? 玄七さんありがとう、流石ばぁちゃんだ!」
「材料を集めるのに時間を要しますので、出来上がりましたら、蒼万殿へお届けいたします」
「それはいいよ、俺が皆に会いにこっちに来るからさ」
それを聞いて、玄華と千玄はきゃっきゃっと飛び跳ねた。
「承知いたしました」
玄七も嬉しそうに微笑んだ。
志瑞也はしゃがみ込んで甲斐の尻尾を覗き込む。
「お母さん、尻尾の大蛇が出て来ないんだけど?」
玄華もしゃがみ込んで一緒に甲斐の尻尾を覗き込む。
「甲斐と甲弥程の神獣ともなると、日中は頭が起きて夜は尻尾が起きるのよ、霊力温存のために一方は眠るの。でも昨日の戦いで両方が同時に起きていたから、しばらく尻尾は起きないわ」
玄華は立ち上がって、甲弥の頭をなでながら言う。
「それにここは中央宮で、霊力の回復も遅いと思うから、もしかしたらまた妖怪の姿に戻るかもしれないわね…」
「そっか……ん? 霊力を消耗すればモモ爺達に戻るのか?」
寂しげに言う玄華をよそに志瑞也は閃く。
「モモ爺…?」
玄七がそっと玄華に耳打ちする。
「玄華様、向こうでの甲斐と甲弥の名前です」
「そっか! お母さんありがとう! 甲斐っ、俺を甲羅に乗せてくれっ いいだろっ、さっきキャラメルあげただろっ」
甲斐は不満げに鼻息を吹き、志瑞也を頭に乗せ甲羅へ下ろす。
「よし、お前達っ、皆を手伝いに行くぞ!」
「しっ志瑞也っ、その衣で行くの?」
「これしか部屋になかったんだっ、後から黄虎に借りに行くよ! あ、お母さんっ、黄虎はもう大丈夫だよ! じゃあお母さんに千玄さん、玄七さんまた後から! うわっとっ、甲斐急に歩くなよっアハハハ」
志瑞也を乗せて、甲斐と甲弥は黄龍殿へのっそりと向かう。
……。
慌ただしく去って行った後、千玄が言う。
「玄華様…志瑞也様は、とても元気が宜しいようでハッハハ」
「…玄七、玄一から話は聞いていたけど、志瑞也は向こうでも本当にあんな感じだったのね」
玄七が微笑みながら言う。
「はい、結構無鉄砲なところもあり、向こうの母未来様に、前向きな性格がそっくりだそうです」
「それなら、玄華様にも似てらっしゃいますね」
「えっ、私?」
玄華が驚いて振り向き、千玄は両眉を上げて頷く。
「正義感が強いところや甘い物がお好きなのは、黄一様や向こうの父望様に似てらっしゃるそうです」
「って事は、やっぱり黄怜と同じね」
三人は楽しそうに笑い合う。
「ただ少々、悪戯なところが…」
玄七が苦笑いしながら言うと、三人は玄枝と玄一が頭に浮かんで微笑む。
「でも他心通って、神獣と通じることできたかしら?」
「私も気になっておりました、玄七様はご存じですか?」
「私も聞いた事ありません…」
玄華は膨らました頬を小突き、千玄と玄七は腕を組み同じ方向に首を傾げる。玄枝がいない今、直ぐに聞ける者がいない。玄華は一ヵ月後の葬式の際、観玄に聞くことにした。
目覚めとは本来こうなのだと志瑞也は数える。
三、二、一、
……。
あれ?
志瑞也はぱちっと瞼を開き、がばっと起き上がる。
(しまった! 置いてかれたっ)
急ぎ顔を洗い着替えようと荷物入れを探るが、どれも着れる状態ではない。荷物入れごと捨て、棚の引き出しを開ける。
「何だこれっ? 女物しかないじゃないかっ」
侍女を呼ぼうにも人手が足りないと知って、黄怜殿への配置は昨日断ってしまった。とにかく昼間に寝衣で外には出られない、怠け者と思われは大変だと、仕方なく女子の衣を着けてみる。
(ん、これはどうやって着るんだ? 下は何着るんだ? ああーっ、もういいやっ)
昨日は何も考えずくるくる脱いだため、どう着けていたかなど知る由もない。金の刺繍入りの桜模様の衣を着け、桃色の帯で結ぶが明らかに裾が長い、やはり着方があるのだ。歩こうとすると、裾を引き摺り踏んでしまう。結局は裾の端を捲り上げ、帯の中に詰め入れ固定するしかない。
金の羽織は衣桁に丁寧に架けられていた。蒼万らしいと、志瑞也は眺めて「ふふっ」微笑む。写真二枚と文、それと雀都の羽根を飾箱に入れ棚に閉まい、髪を結ぼうと手鏡を見た。
(な、何だこれっ?)
無数の鬱血痕に驚き、やってしまったと額を「ペチン」叩く。鏡を見ながら跡に触れると、蒼万を思い出し下半身が疼きそうになる。慌てて髪を解き衿元をきつく寄せ、髪飾りを鏡の横に置き、志瑞也はキャラメルを二つ懐に入れ黄怜殿を出た。
表の庭園でうろうろとモモ爺達を探すが見当たらない、本当に人手が足りないのだろう。尋ねようにも、従者もいなければ侍女にすら会わない。
「モモ爺一号ー! ニ号ー!」
志瑞也の探し回る声で、二匹はのっそりと歩いてきた。
「ここに居たのか、…この格好? 着る物がなかったんだよ、笑うなっ」
志瑞也は目覚めてから神獣と通じることができる。黄怜の他心通かもしれないと思ったが、その事を誰にも言うつもりはない。蒼万はその内気付くだろう。隠している訳ではないが、それが玄武家の教えだと思った。
「お前達の本当の名前は甲斐と甲弥だ、思い出せるか? そっか… 甲斐、お前の元の主は玄枝ばぁちゃんだ… 昨日亡くなった… わかるか? そっか…」
志瑞也は甲斐の頭をなでる。
「玄武洞で俺を守ってくれてありがとうな、あの石はお前達の分身か? えっ、奥歯っ?アハハハハ、見せてみろよ」
甲斐が口を大きく開け、志瑞也は頭を入れる。
「奥歯ってっ、こんなでかいのかっ? あ、そっか、妖怪の姿の奥歯かアハハハ」
「な、何をしてるの志瑞也?」
「あれ? お母さん?」
異様な光景に、玄華と千玄と玄七は、甲斐の口を覗き込むように体を横に曲げる。
志瑞也は甲斐の口から頭を出す。
「甲斐の奥歯を見ていたんだよアハハ お母さんと千玄さんに玄七さん、どうしたの?」
玄華はその内容を深く追及しないことにしたが、昨日よりも酷い姿に一瞬倒れそうになる。後から着替えの衣を届けなければと、千玄に目配せした。
「…甲斐と甲弥に会いに来たのよ」
「甲弥、お前の元の主で黄怜のお母さんだ… お母さん、二匹ともやっぱり思い出せないみたいなんだ、だけど甲斐は玄枝ばぁちゃんが亡くなったのは分かるって、悲しんでいるよ… 思い出せなくても、ちゃんと心で繋がっているんだな」
甲斐の頭をなでながら、志瑞也は儚げに笑う。
「志瑞也、あなた…」
「神獣だけだよ」
玄華は何も言わず微笑む。
「お母さんから、甲弥にこれあげて」
そう言って、玄華にキャラメルを一つ渡す。
玄華は不思議そうに見つめ鼻に近付ける。
「これは何? 蜂蜜の香がするわ」
「元の所のお菓子でキャラメルっていうんだ、二匹ともこれが大好きだから、お母さんからあげると甲弥も喜ぶよ」
志瑞也が甲斐に一つあげるのを見て、玄華も甲弥にキャラメルをあげると、美味しそうに咀嚼した。その姿に昔を思い出し、玄華は甲弥の頭をなでようと戸惑いながら手を伸ばす。
「お母さん大丈夫だよ、ほら」
志瑞也は玄華の手を取り、一緒に甲弥の頭をなでる。当然、甲弥は幼い頃からずっと一緒で、玄華にとっては最初の友であり話し相手だった。玄華は久々に甲弥の頭に触れ、目頭が熱くなる。
「甲弥…」
神獣と付く者は、深い絆で結ばれている。黄怜が神獣を欲しがっていた気持ちが、今の玄華を見れば良く分かる。切り離しても、片時も忘れたことはないはずだ。玄華になでられ喜ぶ甲弥にも、きっと同じ感情が残っているのだろう。志瑞也もまた、その絆を羨ましく思った。
玄七が尋ねる。
「志瑞也様、キャラメルは後いくつ残っておりますか?」
「持っているのは後二つで、蒼万殿に戻れば葵ちゃんに預けている分と…もう殆ど無いかも」
「志瑞也様、私は向こうで玄一に言われ、キャラメルの作り方を学んでおりました!」
玄七は胸の高さで拳を握る。
「本当? 玄七さんありがとう、流石ばぁちゃんだ!」
「材料を集めるのに時間を要しますので、出来上がりましたら、蒼万殿へお届けいたします」
「それはいいよ、俺が皆に会いにこっちに来るからさ」
それを聞いて、玄華と千玄はきゃっきゃっと飛び跳ねた。
「承知いたしました」
玄七も嬉しそうに微笑んだ。
志瑞也はしゃがみ込んで甲斐の尻尾を覗き込む。
「お母さん、尻尾の大蛇が出て来ないんだけど?」
玄華もしゃがみ込んで一緒に甲斐の尻尾を覗き込む。
「甲斐と甲弥程の神獣ともなると、日中は頭が起きて夜は尻尾が起きるのよ、霊力温存のために一方は眠るの。でも昨日の戦いで両方が同時に起きていたから、しばらく尻尾は起きないわ」
玄華は立ち上がって、甲弥の頭をなでながら言う。
「それにここは中央宮で、霊力の回復も遅いと思うから、もしかしたらまた妖怪の姿に戻るかもしれないわね…」
「そっか……ん? 霊力を消耗すればモモ爺達に戻るのか?」
寂しげに言う玄華をよそに志瑞也は閃く。
「モモ爺…?」
玄七がそっと玄華に耳打ちする。
「玄華様、向こうでの甲斐と甲弥の名前です」
「そっか! お母さんありがとう! 甲斐っ、俺を甲羅に乗せてくれっ いいだろっ、さっきキャラメルあげただろっ」
甲斐は不満げに鼻息を吹き、志瑞也を頭に乗せ甲羅へ下ろす。
「よし、お前達っ、皆を手伝いに行くぞ!」
「しっ志瑞也っ、その衣で行くの?」
「これしか部屋になかったんだっ、後から黄虎に借りに行くよ! あ、お母さんっ、黄虎はもう大丈夫だよ! じゃあお母さんに千玄さん、玄七さんまた後から! うわっとっ、甲斐急に歩くなよっアハハハ」
志瑞也を乗せて、甲斐と甲弥は黄龍殿へのっそりと向かう。
……。
慌ただしく去って行った後、千玄が言う。
「玄華様…志瑞也様は、とても元気が宜しいようでハッハハ」
「…玄七、玄一から話は聞いていたけど、志瑞也は向こうでも本当にあんな感じだったのね」
玄七が微笑みながら言う。
「はい、結構無鉄砲なところもあり、向こうの母未来様に、前向きな性格がそっくりだそうです」
「それなら、玄華様にも似てらっしゃいますね」
「えっ、私?」
玄華が驚いて振り向き、千玄は両眉を上げて頷く。
「正義感が強いところや甘い物がお好きなのは、黄一様や向こうの父望様に似てらっしゃるそうです」
「って事は、やっぱり黄怜と同じね」
三人は楽しそうに笑い合う。
「ただ少々、悪戯なところが…」
玄七が苦笑いしながら言うと、三人は玄枝と玄一が頭に浮かんで微笑む。
「でも他心通って、神獣と通じることできたかしら?」
「私も気になっておりました、玄七様はご存じですか?」
「私も聞いた事ありません…」
玄華は膨らました頬を小突き、千玄と玄七は腕を組み同じ方向に首を傾げる。玄枝がいない今、直ぐに聞ける者がいない。玄華は一ヵ月後の葬式の際、観玄に聞くことにした。
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