BL詰め合わせ

善奈美

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気の迷いに違いない!

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 昨日は会社帰りに軽く呑んだ。まあ、それはいつものことだ。問題は、隣に潜り込んでるガキだ。しかも、こいつを俺はコロコロしてる頃から知ってる。今は大学に通ってる筈だが。どうして、ここにいるんだ?!
 
「……っ!」
 
 身じろげばありえない場所にありえない痛み。確かに独身で身軽だが、男に掘られる理由がねぇだろうが?! しかも、今年三十二歳。隣のこいつは成人したばかりの二十歳。
 
「もしかして、心の中で悪態ついてたりする?」
 
 いきなりかかった声に神経が逆立った。視線を向ければ、まっすぐな視線とぶつかる。
 
「……お前は酔ってなかったよな?」
「当たり前でしょう。襲う気でここにきたんだし」
「襲う?!」
「無自覚。だいたいさ。あれだけ実家に帰ってきたときにアプローチしてんのに無視だし。もう、既成事実しかないよね」
 
 待てよ。アプローチなんてされてたのか。俺の認識としては、近所のガキに懐かれてるくらいの感覚だったんだが……。
 
「酔ってたし。うまく言いくるめて上がりこんで。介抱ついでにご褒美もらったんだよ。誰にも触れられてなかったし」
 
 そう言いながら、あらぬ所に指を突っ込んできやがった。若干の痛みを感じたが、ヌルッと抵抗なく受け入れてる場所。抵抗しようとしたが、変に体に痛みを感じて何もできない。
 
「それと、溜まってたの? 濃かったし」
 
 俺は淡白なんだ!
 
「二十歳まで我慢してたんだ。それに、賭けもしてたし」
「……賭け?」
「成人まであんたが独身だったら襲うって」
 
 ……いい顔して笑うな。俺は三十路超えたおじさんだぞ。
 
「ちょっとくたびれたけど、やっぱり、俺の好きな人には変わりないし」
「……こんなおじさんのどこが良いんだ?」
「全部? その歳で無防備すぎなんだよね」
「襲われる要素がないんだが?」
「それが無自覚だっていうの。俺、ここに来ていい? 親に一人暮らししたいって言ったらさ、反対されたんだ」
 
 確か、此奴の通う大学は近所だったな。かなり学力がないと通えない大学だった筈だ。もしかして……?!
 
「……確信犯か?」
「周りから攻めてみたんだよね。どっちの親にも確認済み。ここに住むならいいって言われたし」
 
 どっちもって、俺の親にも訊いたのか? 俺は三十二歳だ!
 
「それに、この体は頂いたし」
「俺の体は俺の体だ」
「俺なしじゃいられないようにしてあげるよ。昨日も気持ちよさそうに喘いでたし。思い出すだけで反応する」
 
 勘弁してくれ?! 俺には一切、記憶がない! 何がどうしてこうなった?! 誰か答えてくれ!
 
 
終わり。
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