銀の鳥籠

善奈美

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銀の鳥籠Ⅰ ルイ&サクヤ編

086 本当の……。

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 熱い。そう思ったんだ。そうしたら、その熱を誰かが肩代わりしてくれてるのに気が付いた。いつも近くにあった存在。オレの頭の上でのうのうと昼寝してたり、ダダ漏れ魔力を喰べたりしてた。
 
 ベニ……。
 
 火の鳥の雛でクレナイの仔。そのベニの気配が近くにある。ふわりとオレの周りに纏わり付いて、頭じゃなく左肩にちょこんと乗った。
 
 頭に直接叩き込まれた内容。ルイが言っていたように、その内容は多岐にわたる。どうして、基本を煩く言っていたのか分かった。魔法の基本を完全に習得していなくても、なんとなく理解できる。でも、魔法関係の内容を叩き込まれたかと思ったら、いきなり違うモノが降ってくる。
 
 過去のルイのどうしていいのか分からない、焦れた思い。大人達に問い掛けたかっただろう。でも、答えが返ってこないことをルイは知っていた。普通、どうしてどうして、と問い掛ける歳に、誰も答えてくれない。白い四角い箱のような部屋で、唯一、外界と繋がっていた小さな窓。それが、ルイの全てだった。頭に絶えず入り込んでくる知識と言う名の凶器と狂気。幼い子供には酷としか言いようのないその記憶。
 
 ルイがやたらと冷静なのも、逆に訳のわからないトンチンカンな行動を取るのも、幼少期の経験のせいだ。あの人と同じようにならないようにするために。ただ、そのためだけに全てを奪ったんだ。ルイだけじゃない。両親からも。
 
「キュ」
「大丈夫だ」
 
 ありとあらゆる知識と言う波。でも、その奥底になにかがある。それは小さな傷痕。普通なら気にするようなものじゃない。でも、この傷痕は見逃してはいけない気がする。ベニがオレの肩から降りて、二人で傷痕を確認する。
 
「これ……」
 
 ぞわりと肌が粟立った。これが全ての元凶。ルイから全てを奪い、オレ、が生まれた理由。生まれなくてはならなかった。ある意味、すべてを狂わせた本当の大元。
 
「ベニ」
「キュウ」
「ルイの魔力は使えもしないのにたくさんの知識を無意味に集めてた。多分、これをなんとかしたかったんだ」
 
 事実、この傷痕の周りにある知識はルイには多分、扱えない。扱えないけど、知識と言う壁を築いていたんだ。少しでも影響を受けないように。その壁のような知識の層に、多分、禁呪文だ。使えるのはごく一部。それも、特殊なやつしか扱えない。
 
「キュウキュウ!」
「必要なのは水晶?」
「キュウ!」
「オレとルイが魔力を込めたことのある水晶のことか?」
「キュウキュウキュ」
 
 ただ捕まえるだけじゃ意味がない。そう、完全に捕まえるんだ。オレにはベニがいる。だから、今ならこの呪文を扱える。捕まえて、閉じ込めて、そして、二つに割るんだ。そう、そのために必要なもの。それはクレナイに頼むしかない。クレナイなら多分、分かる。
 
 あいつが本当の意味で手に入れたかったのはオレじゃない。ルイだ。ルイが本当の意味で欲しかったんだ。自分と同じだけの強い破壊の魔力。ただ、ルイは魔法省の管理下で育った。それはある意味、ルイを守ったんだ。あいつのようにならないようにするためだったけど、別の守りになったんだ。全てを奪われたけど、守らなければいけなかった本当のモノは守られた。
 
 そして、ルイは無意識にオレを絡め取った。魔力がルイにすら隠し切ったオレの本当の存在理由。誰も知らない。でも、オレの祖先は知っていたんだ。知っていたから、伝え続けることを子孫に課したんだ。
 
 世界はルイを守ることを選択した。あいつを消し去るその杭を密かに用意して。オレの役目はその杭を打つこと。ルイの魔力の努力を無駄にしちゃ駄目だ。だから、小さく息を吐き出し、オレは覚悟を決めた。ルイを守る、その覚悟を。
 
 
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