銀の鳥籠

善奈美

文字の大きさ
136 / 281
銀の鳥籠Ⅰ ルイ&サクヤ編

136 鍵の魔法使い

しおりを挟む
「サクヤが使った魔法は、目視と触れることができるようにするものだよね」
「そうだと思うけど」
「じゃあ、卵の中で個となるためには特定の精霊が必要だってことだよ」
「何が言いたいんだ?」
 
 教師が首を傾げる。
 
「卵を作る過程で、二つの遺伝子を受けて、一つの命を作り出す精霊が不可欠だってことです。大切な部分は失われていないから、その次の過程が問題なんですよ」
「交わった遺伝子を人として導く何かが欠けてるか、欠けずにうまく機能してるかってことだろう?」
 
 オレの言葉にルイは頷く。
 
「卵が解けたとき、魔力を帯びた精霊が残されていた場合、本来なら一つの命は生まれてることになる。じゃあ、どうして解けるのかっていうことだけど、そこは私達では分からないね」
「じゃあ、なんだ? 解けたときに魔力を帯びた精霊が残されなかった場合は、最初から受精はされていないということか?」
「そうだと思います。普通に男女の夫婦間でも、子供に恵まれない場合もありますから」
 
 わあ、なんか、難しい話になってんだけど。なんとなく分かるけどさ、基本的に頭が良くないからな。こんがらがってきた。
 
「魔法使いの歴史書にはある時を境に強い魔力を持つ魔法使いの血筋の出生率が下がったと記されてたな」
「それなら、私も分かってます。問題はその正確な時期ですよ」
「……約五百年前」
 
 いきなり降ってきた新たな声。オレ達は驚きその声の主に視線を向けた。そこにいたのはコウガとリッカ。
 
「五百年ほど前に、卵を作る一族が命を絶った……」
 
 リッカは相変わらず眠そうなんだけどさ、ハッキリとした口調で断言するように言った。命を絶ったって?!
 
「……多分、あの人絡み」
「どうして、知ってるの?」
 
 リッカは眠そうな視線をルイに向ける。
 
「だって、そこの鍵、俺だから……」
 
 抱き付かれてるコウガも、何よりオレ達四人も驚きに声が出ない。
 
「あそこはね。もう、悪鬼の巣窟。対処しようとしたときには遅くて、俺の一族が鍵かけるのだけで精一杯だったから」
「そんなところの鍵なの?」
 
 そりゃ、コウガも驚くよな。
 
「そう。命と連動されてるから、俺が命を失うと鍵が壊れる」
 
 魔法使いって、どうしてそう、複雑にすんのが好きなんだ!
 
「そんな情報、教えてもいいのか?」
「だってさ。言い出したのはルイとサクヤでしょう? この二人にかかったら、黙ってたって、別口から調べ上げて、その場所に行って、何かしらしちゃうでしょう」
 
 教師の問いに、リッカは当たり前とでも言うように、サラッと言い切る。まあ、別口って、カイトさんに無理難題押し付けて、調べてもらうと思うけど。
 
「抵抗しても無駄だし。それなら、正規の方法で鍵の役目を解いてから、やってもらいたいんだよね」
 
 痛くて辛いのは嫌だから、って言ってることは分かるけどさ。その前に悪鬼ってなんだ?
 
「なあ、悪鬼って?」
「命を絶った卵の魔法使い。自分の屋敷の中を徘徊して、入り込む魔法使いを片っ端に襲うんだよね。何も知らない一般人も同じ。多分、気が触れたんだと思うんだけど。体をなくしても魂だけで徘徊してて、とりあえず閉じ込めてあるだけ」
 
 口調は眠そうで軽いけどさ、内容が凄くねぇ? つまり、強い魔力の魔法使いでもどうすることもできずに、閉じ込めるに止まった場所ってことだろう? 次から次に、なんで、いろんなことが起こるんだよ。
 
「じゃあ、サクヤを連れて行ったら解決だね」
 
 ルイが手を打って、のほほんと言い切る。待て。どうしてオレが行くと解決なんだ?
 
「歩く空気清浄機だもんね」
 
 コウガが楽し気に呟いた。
 
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

ふたなり治験棟 企画12月31公開

ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。 男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!

完成した犬は新たな地獄が待つ飼育部屋へと連れ戻される

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

神官姫と最強最弱の王

深也糸
BL
アズカヴァル国の王、リヴェラ・ライト・アズカヴァルは十八歳になり、成人したことで妃を娶らなければならなかった。 隣国のリゼルハイドの姫、シファ・ヴィオラ・リゼルハイドはリヴェラと娶せられるためにアズカヴァルに逗留することになる。リヴェラに城の中を案内してもらい親睦を深めようとするが、早々に男だとバレてしまい……。 ※週一回 マイペース更新

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

処理中です...