銀の鳥籠

善奈美

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銀の鳥籠Ⅰ ルイ&サクヤ編

166 命を育む揺り籠 ■

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『手を出せ』
 
 そう言われて、素直に右手を差し出した。ルイを見たら、同じようにしてた。ユグドラシルが近付いてきて、オレとルイの手に何かを乗せる。パッと見た目、クルミような丸い物。これが種かよ。それがスーッと手の中に入っていった。前だったら吃驚して叫んだりしたけどさ、慣れって恐ろしいのな。
 
『二人の血筋が卵を作ることを許される。もし、違えれば精霊の協力は得られなくなると覚悟しろ』
「分かってます」
『では、早速、作ってみようではないか』
 
 ユグドラシルが嬉々としてそう言ってきた。待てよ。今ので契約成立なのか?!
 
『はぁ、やっぱり』
 
 妖精女王が呆れたように溜め息吐いた。どういうことだよ?
 
『一度、試してみたかったんだ。私はこんなところに隔離されてしまったし』
『仕方なかろう? 誰もがマナを独占したいんだ』
 
 妖精王は肩を竦めてる。
 
『私だって精霊王の名を戴いてるんだ。魔法使いと契約し、楽しみたいじゃないか』
『普通の魔法使いなら、利用するだけよ!』
 
 オレ達無視してなに、楽しんでんだよ。
 
『魔狼達は成獣化したし。準備はできてるしね。さあ、杖を出して。血の中に溶け込んだ種が助けてくれる』
「種?」
 
 オレは首を傾げた。種って、オレ達の体に保管されただけじゃないのかよ?
 
『火の鳥は火を、魔狼は地を司る。深淵を司る水は破壊の魔力を。清浄化する癒しの魔力は風を』
 
 ユグドラシルの言葉に、オレが間違って解釈をしていることに気が付いた。ルイが水になるのかよ?! ルイも驚いたように目を見開いてる。ってことは、ルイもオレと同じように考えてたってことだよな?!
 
『なにを驚いている? 水は淀むことがあるが、風は流れている限り清浄であり続けようとする。少し考えれば分かるだろう』
 
 考えた結果、逆だと思ってたんだけど……。
 
『作る卵は三つ。一は風に護られ、一は強固な護りに助けられ、一は初めから生まれ出でる』
 
 それって……。
 
『知らないとでも思っているのか? ここは隔離されてはいるが、情報は集まってくる。さあ、稀なる魔法使い。最初の卵はこの、マナの地で。大樹ユグドラシルが全てを導いてくれる』
 
 ルイと顔を見合わせる。足元には成獣化したキンとギン。ルイの左肩にはクレナイ。俺の頭にはベニ。二人で息を吐き出して、互いに指を鳴らし杖を手にした。それを見たユグドラシル、妖精王と妖精女王が目を見開く。
 
『随分、便利になったものね』
 
 妖精女王の感心したような呟きは無視だ。ベニが一鳴きして元のサイズに戻るとオレの左肩に落ち着いた。呪文は分かってる。元々、ルイの中にあったものではなくて、二羽の聖獣が教えてくれたものだ。
 
 ルイと向かい合うように立つ。息を整え、頷き合った。息を合わせて詠唱を開始する。使うのは古代語。作り出す卵は三つ。足元に魔法陣が現れ、火の鳥と魔狼が淡い光に包まれる。辺りに集まりだしたのは精霊達。四元素というよりも、もっと根本的な精霊だ。そう、オレとルイが契約したのは根源の精霊王。全てを司るその精霊。なににも属さない、純粋な生命体。オレ達の周りに光の渦が生まれる。その渦は凝縮し、強い力の塊を作り出す。卵と言うに相応しい形。オレとルイの間に現れた気の凝った物。魔法使い達が卵と呼ぶ、命を育む揺り籠。
 
『上手くいったようだな』
 
 ユグドラシルが満足気に頷いた。手を差し出すとふんわりと降りてきた三つの塊。淡い白色のその卵は強い力を宿していた。
 
『我が種と共に役目を全うするのだな。運命の愛し子達』
「どういうことです?」
『さて、私の口からは答えかねるな』
『そうね。世界に護られし二つの魂、とでも言っておこうかしら』
 
 オレとルイは首を傾げる。ぼやけ始めた視界に、元の世界に戻ることを感じとった。
 
 
 
 
■おまけ■
 
『それで、あの子達を見守るつもり?』
『あの二人は私と契約した意味を分かってないからね?』
『命まで牛耳るとは、完全に悪者だな』
 
『手放すとでも? 精霊達には二人を護ってもらわないとね』
『そうでしょうね。あの子達は歳を取っても変わらなそうですものね』
『まあ、妖精達にも協力するようには言っておくが』
 
『あの二人の血筋は長命でしょうね? 望んでいるかは別の話でしょうけど』
『あんな、珍しい子達を簡単に死なせるとでも思うの? 大切にしないとね』
 
 
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