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銀の鳥籠Ⅱ マシロ&アサギ編
002 先手を……。
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俺は淀みない足取りである部屋を目指した。広い魔法学校の中にある教師の部屋だ。高等部の特Aクラスの担任だけど、両親の関係で他の中等部の奴等よりは面識があると思う。俺の後ろをアサギが必死で付いてきた。
「本当に話すの?!」
「当たり前。少し、気になる事もある」
ただ単にアサギを俺から引き離す事を目的にしているなら問題ない。いや、問題はありまくりだけど。もし、あの場所関係での牽制なら大問題だ。
長い廊下を歩き、階段を三階分登り、更に廊下を歩いて、階段を四階分降りる。正に面倒な道程。更に廊下を歩いて見えて来た扉。
「今回はどうしてこんなに複雑なの」
アサギは完全に根を上げていた。つまり、誰にも来てもらいたくなかった。だからの遠さだ。時々、魔法使いの面倒さに辟易する。でも、俺の方が魔力が上だから、時間はかかっても絶対に目的地につける。
いきなり開いた扉に、不機嫌を顔に貼り付けた男が一人。高等部特Aクラスの担任で、実践系の魔法を教えてるアサイ先生だ。茶の髪と茶の瞳。象牙色の肌。何でも、両親に振り回された一人らしい。
「諦めないのはなんでだ?」
「用事があるからに決まってんでしょう」
「……俺は高等部の教師だ」
「それもしっかり分かってます」
淀みなく答える俺に、アサイ先生は肩を落とした。
「まあ、いい。入れ。お前もだ」
アサイ先生はしっかりアサギにも声を掛けてくれた。そうしないとこの部屋入れないからな。
「いつ来ても閑散としてる部屋」
この部屋、本当に物が少ない。備え付けの家具と、授業をする時に生徒が使う机と椅子。奥には教師が使う大きな机と椅子、黒板がある。物が殆どない。凄い部屋は物で溢れて、席に辿り着くまで大変な場合もあるから。この部屋のスッキリさには吃驚だ。
「そんな事を言いに来たのか?」
「そんな訳ないでしょうに。揶揄う為だけに、面倒な道程、歩く訳ないでしょう」
「……はあ、で?」
「まだ中等部だけど、アサギに求愛するんで」
淀みなく言った俺に、アサイ先生は不思議な顔はしなかった。何、当たり前の事を言ってんだ、って顔だ。
「それと、ちょっと問題が」
「問題?」
「アサギに良からぬ事を吹き込んだ奴が、あの場所に興味を持ってるんじゃないかって」
俺の言葉に、アサイ先生の眉間に皺が寄る。
「どうして、その結論に達した?」
「まず、俺の魔力に合う奴なんてそうそういない。にも関わらず、囲ってる俺からアサギを引き離そうとした。まあ、母さんとユエさんみたいに、隠れの魔力持ちならまた、話は変わるけど。そんな魔法使い、ホイホイいる訳ないし」
そして、生徒会役員の中で、俺の魔力に合うのはアサギだけだ。それは初等部、高等部合わせて。予備軍にもいないし、今、あの場所で育てられてる子達にもいない。
「あの場所は色んなものを引き込む性質があるし。万が一、変な輩が入り込んで変な能力を発現させでもしたら大変な事態だ」
一応、両親の血筋はあの場所はスルーで入れる。だから、俺も簡単に入り込める。逆にあの場所で育っても、血筋に刻まれていなければ特殊なパスを持つか、パスを持った者に引き入れてもらわないと駄目だ。祖父母もあの結界が張られた時にその場に居たから入れるけど、叔母のツバキは入れない。それだけ、厳重だ。厳重だけど、入れない訳ではない。
「あの場所は特殊な結界が張られてる。鍵の魔法使いが囲ってる場所だぞ」
「だって。多分、両親と俺なら血の中に鍵が無くても入り込めるよ。簡単にね」
「それはお前の一族だけだ」
「そうなんだけど。やろうと思えばどんな手を使ったって目的を遂げるよね。魔法使いなんだから」
アサイ先生は目を見開く。問題は、俺が中等部に入って、後数年で高等部に上がる。俺とアサギは誕生日が一緒だから、すぐ求愛して手篭めにする予定だ。だから、このタイミングでアサギに良からぬ事を吹き込んだんだ。
「両親には?」
「これから知らせるよ。結界を強化してもらわないと」
今まで平和だったのに。嫌な予感がするし、絶対に何かが起こる。確信に近いのが嫌なんだけどね。
「本当に話すの?!」
「当たり前。少し、気になる事もある」
ただ単にアサギを俺から引き離す事を目的にしているなら問題ない。いや、問題はありまくりだけど。もし、あの場所関係での牽制なら大問題だ。
長い廊下を歩き、階段を三階分登り、更に廊下を歩いて、階段を四階分降りる。正に面倒な道程。更に廊下を歩いて見えて来た扉。
「今回はどうしてこんなに複雑なの」
アサギは完全に根を上げていた。つまり、誰にも来てもらいたくなかった。だからの遠さだ。時々、魔法使いの面倒さに辟易する。でも、俺の方が魔力が上だから、時間はかかっても絶対に目的地につける。
いきなり開いた扉に、不機嫌を顔に貼り付けた男が一人。高等部特Aクラスの担任で、実践系の魔法を教えてるアサイ先生だ。茶の髪と茶の瞳。象牙色の肌。何でも、両親に振り回された一人らしい。
「諦めないのはなんでだ?」
「用事があるからに決まってんでしょう」
「……俺は高等部の教師だ」
「それもしっかり分かってます」
淀みなく答える俺に、アサイ先生は肩を落とした。
「まあ、いい。入れ。お前もだ」
アサイ先生はしっかりアサギにも声を掛けてくれた。そうしないとこの部屋入れないからな。
「いつ来ても閑散としてる部屋」
この部屋、本当に物が少ない。備え付けの家具と、授業をする時に生徒が使う机と椅子。奥には教師が使う大きな机と椅子、黒板がある。物が殆どない。凄い部屋は物で溢れて、席に辿り着くまで大変な場合もあるから。この部屋のスッキリさには吃驚だ。
「そんな事を言いに来たのか?」
「そんな訳ないでしょうに。揶揄う為だけに、面倒な道程、歩く訳ないでしょう」
「……はあ、で?」
「まだ中等部だけど、アサギに求愛するんで」
淀みなく言った俺に、アサイ先生は不思議な顔はしなかった。何、当たり前の事を言ってんだ、って顔だ。
「それと、ちょっと問題が」
「問題?」
「アサギに良からぬ事を吹き込んだ奴が、あの場所に興味を持ってるんじゃないかって」
俺の言葉に、アサイ先生の眉間に皺が寄る。
「どうして、その結論に達した?」
「まず、俺の魔力に合う奴なんてそうそういない。にも関わらず、囲ってる俺からアサギを引き離そうとした。まあ、母さんとユエさんみたいに、隠れの魔力持ちならまた、話は変わるけど。そんな魔法使い、ホイホイいる訳ないし」
そして、生徒会役員の中で、俺の魔力に合うのはアサギだけだ。それは初等部、高等部合わせて。予備軍にもいないし、今、あの場所で育てられてる子達にもいない。
「あの場所は色んなものを引き込む性質があるし。万が一、変な輩が入り込んで変な能力を発現させでもしたら大変な事態だ」
一応、両親の血筋はあの場所はスルーで入れる。だから、俺も簡単に入り込める。逆にあの場所で育っても、血筋に刻まれていなければ特殊なパスを持つか、パスを持った者に引き入れてもらわないと駄目だ。祖父母もあの結界が張られた時にその場に居たから入れるけど、叔母のツバキは入れない。それだけ、厳重だ。厳重だけど、入れない訳ではない。
「あの場所は特殊な結界が張られてる。鍵の魔法使いが囲ってる場所だぞ」
「だって。多分、両親と俺なら血の中に鍵が無くても入り込めるよ。簡単にね」
「それはお前の一族だけだ」
「そうなんだけど。やろうと思えばどんな手を使ったって目的を遂げるよね。魔法使いなんだから」
アサイ先生は目を見開く。問題は、俺が中等部に入って、後数年で高等部に上がる。俺とアサギは誕生日が一緒だから、すぐ求愛して手篭めにする予定だ。だから、このタイミングでアサギに良からぬ事を吹き込んだんだ。
「両親には?」
「これから知らせるよ。結界を強化してもらわないと」
今まで平和だったのに。嫌な予感がするし、絶対に何かが起こる。確信に近いのが嫌なんだけどね。
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