無能の瞳 その者は世界の共犯者〜魔力なしで無能と蔑まれ、他力本願の力に依存する。【憑依召喚】で体を乗っ取られて、もうすぐ俺が最強だ〜

一章

第11話：絶望の淵と闇を駆ける未来（1/2）

　レンの心は絶望ともどかしさで満たされていた。一夜にして、親しい顔ぶれが見知らぬ怪物に変わり果て、かつての温かな笑顔や絆が憑依召喚の魔導書により塵と消え去ってしまった。町は混乱の渦中にあり、村人たちの狂乱は収まる気配を見せなかった。彼らを止める手段はどこにも見つからない。

「俺一人では、誰も救えないのか……」

　レンは苦悩する。村人たちを元の姿に戻す方法はなく、狂気に駆られた彼らを抑えることも、魔導書を取り除くこともできなかった。勇者の登場に一縷の希望を託したが、彼もまた村人たちの怒りの矛先となり、圧倒されてしまった。

「豹変した村人たちが、勇者まで襲い始めた……」

　過去の恨みや不満が爆発し、力を手に入れた彼らは、勇者に対して制御不可能な暴力を向けた。数にも質にも勝る村人たちは、勇者を追い詰めた。かつての勇者の威厳は影を潜め、ただの一人の戦士として、凄まじい攻撃を避け続けるのがやっとだった。

　最終的に勇者は村人たちの手によって倒され、残った勇者は逃げ出した。レンと翔子は完全に絶望的な状況に置かれた。

　ルナが外の様子を伺いに出た後、急いでレンと翔子の隠れ場に戻ってきた。「レン、このままでは危険よ。何か手を打たないと……」

　レンと翔子は扉の隙間から周囲を慎重に観察したが、予想通り他の生存者の姿は見えなかった。勇者の不在が示す通り、彼ら以外の生き残りはいない。町の奥には力を持つ者や他の生存者がいるかもしれないが、彼らが歓迎される見込みは薄い。

　レンは扉の外の変わり果てた村人たちを前にして、翔子を守る決意を固めた。ルナから階位の差についての確認を受け、伯爵の存在を知ると、彼らに立ち向かう覚悟を決めた。

「ルナ、階位の差が明らかなら、攻撃は効かないのか？」レンが確認する。

「ええ、そうよ。でも伯爵が一人、残りは大総裁ね。効かないというよりは、最大火力が及ばないと思った方がいいわ。それに強力なスキルや巧みな技で攻撃を受けたら損傷はするわ」ルナが説明する。

「ならば、試みる価値はあるな」レンは断言した。

　翔子は心配そうにレンを見つめ、彼に留まるよう促した。「蓮司、もう少し考え直して」

「翔子、俺はお前を守りたいんだ」レンの言葉に、翔子は彼の覚悟を感じ取った。彼女はレンの顔を両手で包み、涙ぐんだ目で囁いた。「蓮司、でも、こんな危険を……」

「大丈夫、階位差を利用してみせる。ここにいても、遅かれ早かれ襲われる」レンは扉を開け、翔子を安全に守るために、ルナに彼女を眠らせるよう頼んだ。「ルナ、不在時は翔子の守護を頼む」

「わかったわ、レン。気をつけてね。」ルナは心からの願いを込めて言った。

　外に出たレンは、村人たちと対峙する。クロウも隣で待機しており、村人たちが一斉にレンに注目した。広場には五人の敵がおり、その中にはレンと同じ階位の伯爵が含まれていた。